ロシアによるマリウポリの劇場攻撃は「明確な戦争犯罪」=アムネスティ

画像提供, Reuters
人権団体アムネスティ・インターナショナルは6月30日、ウクライナ南東部の都市マリウポリで3月にあった、ロシア軍による劇場の空爆について、「明確な戦争犯罪」だとする報告書を公表した。劇場には当時、数百人の民間人が避難しており、少なくとも12人が死亡したとしている。
アムネスティは報告書の中で、ロシア軍は建物が民間施設だと知りながら「意図的に狙った可能性が非常に高い」とした。また、500キロ爆弾2個を接近した場所に撃ち込み、同時に爆発させた可能性が「非常に高い」とした。
アムネスティはさらに、攻撃は「偽旗」作戦の一環として建物内で行われたとするロシア国防省の主張を含め、他の説明に関しては、説得力のある証拠は見つからなかったとした。
アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務局長は、「この攻撃はロシア軍による明確な戦争犯罪だと、私たちは結論づけた」と述べた。
「この無情な攻撃で、多くの人が死傷した。ロシア軍が意図的にウクライナの民間人を標的にしたことで、死者が出たとみられる」
劇場は、ソヴィエト連邦時代の巨大な建物で、市中心部の公園にあった。ロシア軍に包囲され、電気、水道、通信手段を失ったマリウポリの他の地域から逃れてきた住民たちの避難場所になっていた。また、「人道回廊」を利用して市外に出るための情報を求める人々の集合地点にもなっていた。

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アムネスティによると、攻撃があった3月16日午前10時ごろに劇場内にいた人数は、正確には特定できないものの、数百人程度いた。目撃者や生存者らは当時の人数について、300~400人から1000人までさまざまに述べた。大半は女性、子ども、高齢者だったとした。
アムネスティは、少なくとも12人が死亡したと推定。「もっと多くの死者」が報告されていないとした。ただ、これまで考えられていたより、実際の死者は「はるかに少ない」とみられると指摘した。
マリウポリ市議会は攻撃からまもなく、死者は300人に達すると推定していた。劇場にいた人たちの記録と、生存者からの直接の聞き取りに基づいて出した人数だった。
報告書によると、建物の被害状況は「2つの、しかし1つだとも思われた大型の爆弾が、空から同時に落とされ、互いに接近して爆発した状況に一致する」ものだった。「建物の中で2つの兵器が同時(またはほぼ同時)に爆発すれば、目撃者には1つの爆発のように見えたり聞こえたりする」という。
アムネスティが話を聞いた目撃者の1人、グリゴリー・ゴロヴニョフさんは、攻撃時は劇場から約200メートルの場所にいたという。彼は、「飛行機の音が聞こえた」、「(飛行機は)絶えず飛び回っていたので、真剣に注意を向けなかった」と話したという。
また、「その時、建物の屋根が爆発するのを見た。(中略)屋根は20メートル吹き飛ばされ壊れた」、「たくさんの煙とがれきを見た。(中略)劇場は避難所になっていたので、目を疑った」と述べたという。

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画像からは、攻撃の少なくとも2日前から、劇場前の地面2カ所に、ロシア語で「子どもたち」を意味する文字が大きく書かれていたことがわかる。アムネスティは、劇場は「正当な軍事目標ではなかった」とし、付近にも「正当な軍事目標は1つもなかった」と述べた。
アムネスティの調査は、52人の生存者と目撃者への聞き取り、写真、ビデオ、衛星画像に基づいている。その結果は、攻撃の直後にBBCが報じた内容と合致している。
目撃者たちによると、劇場は民間人の避難所としてよく知られていた。攻撃当日の朝には、ロシア軍機がこの地域を飛ぶのを聞いたり、見たりしたという。また、劇場の建物は民間人しか使用しておらず、ウクライナ軍の基地ではなかったという。
ロシア側は劇場への攻撃を否定。国防省は声明で、ウクライナ軍のアゾフ連隊が攻撃を実行したと主張している。同連隊は、極右勢力とつながりのある民兵として発足した経緯がある。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今回の戦争について、ウクライナを「脱ナチス化」するためのものだと、根拠のない主張をしている。アゾフ連隊は、そうした主張を擁護する人たちの格好の非難の的となっている。
ロシアによる数週間に及ぶ執拗な攻撃で、マリウポリではすべての地区が荒廃した。同市議会は、この戦争で少なくとも2万人が死亡したと推定している。ただ、この数字は独立した確認が不可能だ。
マリウポリは5月初旬、ウクライナ人戦闘員数百人が投降し、陥落した。





