ガザ住民の食料危機さらに深刻化 新たに9人が栄養不良で死亡とハマス運営の現地当局

女性たちが苦しそうな表情で金属製の容器を手前に出している。周りには缶やプラスチック容器を持った子供たちもいる

画像提供, Reuters

画像説明, 慈善団体の食料配給拠点に集まった人たち(20日、ガザ地区ヌセイラト)

パレスチナ・ガザ地区での飢餓の懸念が一層強まっている。イスラム組織ハマスが運営するガザの保健省は、25日には新たに9人が栄養不良で死亡したと発表した。戦争開始以降、栄養不良が原因で死亡した人は122人に達したという。イスラエルはガザへの物資搬入を管理しているが、支援物資の搬入に制限はないと主張し、栄養不良の責任はハマスにあるとしている。

国連世界食糧計画(WFP)は同日、ガザ地区の住民の3人に1人近くが数日間にわたり食事を取れていないと、あらためて警告した。WFPは20日にも、「栄養不良が急増しており、9万人の女性と子どもが緊急に治療を必要としている」と報告。25日にも、あらためてこの警告を繰り返した。

WFPは、現地で小麦の価格が急騰しているため、ほとんどの住民にとって食べ物を得る唯一の手段は食料援助しかないのだとも説明している。

イスラエルの治安当局者は25日、今後数日以内に空からの投下によるガザへの支援を許可する可能性があると述べた。この方法について、支援団体は以前から「非効率的」だと警告している。地元メディアは、アラブ首長国連邦とヨルダンが空中投下を実施すると報じたが、ヨルダン高官は軍がまだイスラエルの許可を得ていないと述べた。

国連はこの動きを「イスラエル政府の無策を覆い隠すための目くらまし」だと批判している。こうした中、ガザの人道状況に対する国際的な懸念が高まっている。

25日にはドイツ、フランス、イギリスが共同声明を発表し、イスラエルに対し「支援物資の流入制限を即時に解除するよう」求めた。声明では、「我々がガザで目撃している人道上の大惨事」と戦争そのものを直ちに終わらせるよう求め、イスラエルは「国際人道法上の義務を順守しなくてはならない」と強調した。「民間人にとって不可欠な人道支援の提供を拒むことは、容認できない」とも述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「国際社会のあまりに大勢が示す無関心と無行動の程度」が理解を超えていると批判。「思いやりに欠け、真実に欠け、人間性に欠けている」と述べた。

事務総長は国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの世界大会で演説し、5月27日以降に食料を求めて殺害されたパレスチナ人が1000人を超えたと述べた。ガザでは5月27日以降、アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」が、国連主導の支援体制に代わる形で物資を配布している。

動画説明, 「飢えそのもので人々が死んでいる」 ガザの状況に人権団体やメディアが深い懸念

5月から6月にかけてGHFで契約警備員として働いていた元米陸軍将校のアンソニー・アギラー氏は25日、BBCに対し「間違いなく戦争犯罪を目撃した」と証言した。同氏は、イスラエル国防軍(IDF)とアメリカの請負業者が、食料配布所で住民に対して実弾、砲撃、迫撃砲、戦車砲を使用していたと述べた。

退役軍人のアギラー氏は、「IDFとアメリカの請負業者がしているほど残酷に、民間人に無差別かつ不必要な暴力が行使されるのを、私はガザに行くまで見たことがなかった。自分の軍人としての経験を通じて、あのような事態は見たことがなかった」と語った。

これに対しGHFは、「1カ月前に不正行為で解雇された元請負業者が、うっぷん晴らし」に発言しているだけで、「完全に虚偽だ」と反論した。

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一方、停戦と人質解放に向けた交渉は、アメリカとイスラエルがカタールから交渉団を引き上げたため、先行きの不透明性が増している。

ドナルド・トランプ米大統領は、ハマスが「本気で合意を望んでいない」、「(ハマスは)死にたがっているのだと思う」と述べた。

ハマスはこの発言に驚きを示した。ハマス幹部はBBC記者に、仲介者を通じて、交渉は決裂しておらず、イスラエル代表団は来週ドーハに戻る見通しだと伝えられたと述べた。

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を攻撃し、約1200人を殺害し、251人が人質にとった。これを受けてイスラエルは、ガザで戦争を開始。ハマスが運営する保健省によると、それ以降、ガザでは5万9000人以上が殺害されている。

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イスラエルは3月初旬に支援物資の搬入を全面的に封鎖し、2週間後に軍事作戦を再開。それまで2カ月間続いていた停戦は、これによって崩壊した。イスラエルは、残る人質の解放をハマスに迫るための圧力だと説明している。

その後、飢饉(ききん)の警告が相次ぐ中で、5月下旬から封鎖は一部緩和されたものの、食料、医薬品、燃料の不足は悪化している。

ガザの住民の大半は複数回の避難を強いられ、住宅の9割以上が損壊または破壊されたと推定されている。

こうした事態が続く中でフランスは24日、9月にパレスチナ国家を正式に承認すると発表し、イスラエルとその主要同盟国アメリカの反発を招いた。

25日には、イギリス下院議員の3割以上がキア・スターマー首相に対し、イギリスも同様にパレスチナ国家を承認するよう求める書簡に署名した。ただし、スターマー首相は「それは究極的に『二国家解決』に至る、もっと大きい枠組み」の一部でなくてはならないと述べ、即時の国家承認には慎重な姿勢を示した。「二国家解決」とは、パレスチナ国家とイスラエル国家の共存を意味する。