【解説】 ガザ人道財団が配布する「援助ボックス」、何が入っているのか

ガザでアメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」のロゴが入った「援助ボックス」を、男性が両手で抱えて運んでいる。男性は左袖に「NIKE AIR」と書かれた黒い長袖Tシャツを着ている。男性の右隣を、頭に赤と白のスカーフを巻いた女性1人が歩いている。背後では多数の男性が走っている

画像提供, Reuters

ケヴィン・グエン、アレックス・マリー、BBCヴェリファイ(検証チーム)

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ・ガザ地区では、200万人以上のパレスチナ人が飢餓の危機に直面し、栄養不良による死者は日々増加していると、国連は報告している。

ガザでイスラエルとアメリカが支援する「ガザ人道財団(GHF)」は、5月下旬から、ガザにおける物資配給活動を行っている。同団体はこれまでに計9100万食を配布したとしている。その大半は、「食料ボックス」のかたちで提供されている。

イスラエルは、BBC を含む外国報道機関のジャーナリストのガザへの立ち入りを禁止している。そのため、GHFが配布する援助ボックスの中身をBBCが直接確認することはできないが、BBCヴェリファイはGHFが提供した画像や情報を検証した。さらに、援助ボックスに含まれる栄養価について懸念を示す専門家に話を聞いた。

ボックスの中身は?

オンライン上ではすでに、ガザのパレスチナ人が援助ボックスの中を見せる動画が拡散されていたが、GHFは今週に入って初めて、ボックスの中身の画像を公開した。

ソーシャルメディアに投稿された2枚の画像に写っていたのは主に、パスタやひよこ豆、レンズ豆、小麦粉など、調理の際に水や燃料を必要とする乾物だった。また、食用油や塩、タヒニ(ゴマペースト)も含まれていた。

ガザ人道財団(GHF)が公開した、「援助ボックス」の中身の画像2枚。左側の画像には、小麦粉、食用油、塩、タヒニ、ひよこ豆、パスタ、ブルグル小麦、レンズ豆が並んでいる。右側の画像には、小麦、タヒニ、ひよこ豆、塩、えんどう豆、パスタが並んでいる

GHFは、こうしたボックスにはハルヴァのような、そのまま食べられる食品も含まれるとしている。ハルヴァはタヒニと砂糖を混ぜた人気のお菓子だ。

同団体は、ボックスの「基準的」な内容と、カロリーの内訳を示す一覧表をBBCに提供した。

これによると、標準的なボックスには計4万2500キロカロリー分の食料が含まれ、「1箱で5.5人を3.5日間養う」ことができるという。

GHFが配布する「援助ボックス」の標準的な食品のリスト。上から小麦粉、赤レンズ豆、植物油、そら豆、ひよこ豆、ヨウ素添加塩、パスタ、ハルヴァ、さや豆と並ぶ

代替品としてお茶やビスケット、チョコレートなどが含まれる場合もある。ジャガイモやタマネギも配布されているが、これらは栄養価のデータには含まれていないと、GHFは説明している。

「深刻な欠点」

国際援助開発を専門とするロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のの教授は、GHFからBBCへ提供された一覧を分析した結果、「援助ボックス」は生き延びるのに必要なカロリーを十分提供できる可能性はあるものの、「深刻な欠点」があることが分かったとしている。

「本質的には、この詰め合わせでおなかは満たされるものの、栄養面は空っぽだ」と、スチュアート・ゴードン教授は指摘した。「最大の欠点は、欠落しているもの(栄養素)だ。(中略)これはまさに、深刻な飢餓状態による『出血』を止めるために設計された、『応急処置』的な食料の詰め合わせだ」。

「このような食事を数週間続ければ、『隠れた飢餓』を招き、貧血や壊血病などの疾患リスクが高まる」と、ゴードン教授は述べた。

イスラエル政府が公開した、GHFの「援助ボックス」に含まれているとする食品の画像。紅茶や食用油、チョコレートなどが並んでいる

画像提供, X: cogatonline

画像説明, イスラエル政府も、GHFの「援助ボックス」に含まれているとする、別の食品の画像を公開した

ユニバーシティ・コレッジ・ロンドンの国際栄養学准教授アンドリュー・シール博士は、これらの食料ボックスはカルシウムや鉄、亜鉛、ビタミンC・D・B12・Kが不足していると指摘。幼児向けの食材も不足していると付け加えた。

「たとえ十分な量が提供されていたとしても、これらの食品を長期にわたり摂取すれば、様々な栄養が不足したり、深刻な健康問題を引き起こす可能性がある」

さらにシール博士は、GHFとは異なり、国連などの機関は通常、食料を大量に配布したうえで、影響を受けやすい人々に必要な栄養支援を行っていると説明した。世界食糧計画(WFP)は、幼い子供や妊婦への緊急支援物資の配布も目指しているとしている。

BBCヴェリファイはGHFに対し、「援助ボックス」の栄養価に関する助言についてや、専門家が提起した懸念に対処する予定があるかどうか質問したが、回答は得られなかった。

ガザの男性が、手に入れたGHFの「援助ボックス」の中身を確認している。GHFのロゴ付きの段ボール箱の中に、豆の袋などが入っている

画像提供, TikTok/@user427554577

画像説明, ガザ住民は手に入れた「援助ボックス」の中を見せる動画を投稿している

「援助ボックス」を入手できても、その中身は、調理の際に水や燃料を必要とする乾物ばかりだ。そしてガザは今、深刻な水・燃料不足に直面している。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)は今週、ガザでの水をめぐる危機的状況が急速に悪化していると警告した。また、住民が廃材などを使った、体に有害な調理法をせざるを得なくなっているとも指摘した。

WFPは5月、ガザにおける調理用ガスの公式供給が停止し、闇市では開戦前の最大40倍もの価格で売買されていると発表した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は今週、ガザでは必需品が深刻に不足しており、栄養不良の人が「急増している」と述べていた。

WFPによると、ガザでは約3人に1人が何日も食事をとれずにいる。

ガザでは「9万人の女性と子どもが緊急の治療を必要としている」と、WFPは25日に発表した。

(追加取材:マット・マーフィー)