ガザで集団飢餓が拡大、住民が「どんどん衰弱」と人道団体が警告

ガザ地区のテントの中に女性が立ち、極度にやせ細った子供を抱いている。子供の背骨が浮き出ている

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画像説明, ガザ地区のテントの中で、極度にやせ細った子供を抱く女性

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続き、支援物資が不足しているパレスチナ・ガザ地区で集団飢餓が拡大していると、100を超える国際的な援助団体や人権団体が23日警告した。団体側は各国政府に対し、対応策を講じるよう求めている。

国境なき医師団(MSF)やセーブ・ザ・チルドレン、オックスファムなどが署名した共同声明は、ガザにいる団体スタッフや支援対象者が「衰弱している」と訴えている。

ガザへの物資の搬入を管理するイスラエルは、団体の声明内容は事実ではないと主張。「ハマスのプロパガンダに加担している」と非難した。

今回の警告は、ハマスが運営するガザ保健省が、過去24時間で10人のパレスチナ人が栄養不良によって死亡したと発表する中で出された。

ガザ保健省は22日時点で、過去48時間で子供12人を含む33人のパレスチナ人が栄養不良によって死亡したと発表していた。21日以降に栄養不良で死亡した人は合わせて43人となった。

国連によると、食料不足により極度の衰弱状態に陥った人々が病院に搬送されており、路上で倒れるケースも確認されているという。

同僚らが「目の前で衰弱」

「イスラエル政府によるガザ包囲で住民が飢える中、援助団体スタッフも自分たちの家族に食事を届けようと、銃撃されるリスクを冒しながら、食料配給の列に同じように並んでいる」と、団体の共同声明は訴えている。

「物資は完全に枯渇し、支援団体は自分たちの同僚やパートナーが目の前で衰弱していく様子を目撃している」

イスラエルは3月初めにガザへの人道支援物資の搬入を全面的に停止。その2週間後にはガザへの軍事作戦を再開した。イスラエルはこうした対応について、ハマスに人質を解放するよう圧力をかけるためだと主張した。

世界中の専門家が、ガザで飢饉(ききん)が起きる可能性があると警告する中、ガザへの物資搬入は5月に部分的に再開された。しかし、食料・医薬品・燃料不足は悪化している。

「医師は、特に子供や高齢者の間で、急性栄養失調になる人の割合が記録的な水準になっていると報告している。急性水下痢などの病気が広がり、市場には何もなく、ゴミが山積みになり、大人が飢えと脱水で路上に倒れている」と団体の共同声明は警告している。

また、心理社会的支援を行う支援員の話として、「子供たちへの壊滅的な影響」を指摘。「子供たちは親に、少なくとも天国には食べ物があるから、天国に行きたいと言っている」とした。

ガザ市内のアル・シファ病院のベッドに横たわるモサブ・アルデブスさん(14)。栄養失調のため頬がこけ、腕がやせ細っている。青色の服を着て、頭に白い包帯を巻いている

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画像説明, 国連によると、ガザでは約10万人の女性と子供が重度の急性栄養失調に苦しんでいる。画像はガザ市内のアル・シファ病院のベッドに横たわるモサブ・アルデブスさん(14)

国連、「人為的な」飢餓と

世界保健機関(WHO)は、ガザ人口の4分の1が飢饉に近い状況にあることが、評価結果で示されているとしている。また、10万人近い女性と子供が重度の急性栄養失調に陥り、早急な治療を必要としているとしている。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は23日、「集団飢餓とは、人口の大部分が飢えている状態を指す。ガザでは人口の大部分が飢えている」と述べた。

「これを集団飢餓と呼ばずして何と呼ぶのか。しかも人為的なものだ」

「(ガザ)封鎖が原因であることは、極めて明白だ」と、テドロス氏は続けた。

南部ハンユニス市にあるナセル病院の小児科の責任者アフマド・アルファラ医師はBBCに対し、3日間、食料がまったく手に入っていないと語った。

アルファラ医師によると、病院にはさまざまな段階の飢餓状態にある子供たちが運ばれてくるという。

栄養失調の子供が、病院で治療中に死亡したこともあるという。他にも、栄養が体に吸収されない健康問題を抱える子供もいると、同医師は述べた。

「こうした危機的状況に達することを我々は恐れていたが、今まさにその時を迎えてしまった」

基本的な物資が不足している影響で、ガザの市場では販売価格が急騰し、大半の家庭は何も買えない状況となっている。

「とんでもない状況だ。価格が高騰している」と、住民の1人は話した。「小麦粉を買うだけでも毎日300シェケル(約90ドル)が必要だ」。

人道団体は、食料を得ようとした際にイスラエル軍によって殺害されたパレスチナ人の数が、5月27日以降で1050人を超えているとする国連の報告にも言及している。この前日の5月26日に、イスラエルとアメリカが支援する「ガザ人道財団(GHF)」による物資配給が開始された。GHFは、ガザにおける国連主導の物資配給ネットワークにとって代わることを活動目的としているが、国連などはGHFの制度を非難している。

国連人権高等弁務官事務所によると、GHFの4カ所の配給拠点周辺でこれまでに766人が殺害された。これらの拠点はイスラエル軍の管理区域内にあり、アメリカの民間警備会社が活用されている。国連やそのほかの援助団体の物資輸送車両の近くでは、288人が殺害されたという。

イスラエル軍は、GHFの拠点近くに展開する部隊は警告射撃しか行っておらず、民間人に意図的に発砲してはいないと主張している。GHFも、国連がガザ保健省による「虚偽で誤解を招く数字」を用いていると反論している。

動画説明, 小麦粉を手に入れ歓喜するガザの家族、動画が拡散 深刻な食料不足で「集団飢餓」拡大と援助団体

人道団体は、ガザのほぼすべての住民が家を追われ、現在は、イスラエルによる避難命令の対象地域や軍事区域に該当しない地域、つまりガザ全体の12%未満の土地に押し込められていると指摘。これにより、支援活動が不可能な状態になっているとした。

また、ガザで配給される支援物資の量は、1日平均トラック28台分に過ぎないと、人道団体は指摘した。

「ガザのすぐ外や、倉庫の中、そしてガザ内にも、食料や清潔な水、医薬品、シェルター用品、燃料といった物資が何トンも保管されている。しかし、人道団体はそれらへのアクセスを阻まれ、配給できずにいる」

国連は、イスラエルが占領勢力として、人道援助を必要とするすべての住民にそれらが確実に届くようにする、国際法上の義務を負っているとしている。

一方でイスラエルは、国際法にのっとって行動しており、ハマスに物資が渡らないようにしながら援助物資の搬入を促進していると主張している。

イスラエルは最近では、ガザのパレスチナ人への物資供給量が大幅に減少していることを認めつつ、その原因は国連機関にあると非難している。

ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は21日、過去2カ月間でトラック約4500台分の物資がガザに搬入されたとソーシャルメディアに投稿した。物資には、2500トンのベビーフードや子供向けの高カロリーな特別食が含まれるという。

COGATはまた、ケレム・シャローム、ジキムの両検問所のガザ側にある、トラック950台分の物資の一部だとするもののドローン映像も公開。これらの物資を、国連やそのほかの国際機関が引き取るのを待っているのだとした。

「物資の引き取りの遅れこそが、ガザ地区への人道援助の安定的な流れを妨げる主な障害となっている」と、COGATは主張した。

パレスチナ人の少女らが、慈善団体による食料供給を待っている。少女は両手で頭を抱えるようにして、両目を閉じている。食料を入れて運ぶための桶のような入れ物を、帽子のように頭にかぶっている

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画像説明, ガザ住民は、ほぼ完全に人道援助に頼って命をつないでいる。画像はガザ市で慈善団体による食料供給を待つパレスチナ人の少女(22日)

国連は、ガザの運転手と一緒に検問所のガザ側で物資を受け取り、軍事区域を通って輸送するために必要な許可を、イスラエルから得るのに苦慮していると、繰り返し訴えている。

戦闘は続き、道路が損傷し、燃料不足は深刻化している。こうした状況が、物資をめぐる問題をさらに悪化させている。時には武装集団による略奪行為が、支援活動を妨げている。

国連は、ここ数週間における主要な問題は、物資配給拠点周辺での民間人の殺害だとしている。物資を受け取ろうとするパレスチナ人が殺害されないようにするという確約を、イスラエル軍から得ようとしているが、うまくいっていないと、国連は説明している。

国連のステファン・デュジャリック報道官は22日のブリーフィングで、次のように語った。「ガザの検問所近くの閉鎖された施設から、国連チームが物資を引き取ることをイスラエルが許可していても、物資を載せたトラックに近づいた民間人が銃撃を受ける事案があまりにも多く発生している。部隊は発砲しない、あるいは現場で展開しないことを保証すると(イスラエルは)繰り返し主張している。それにもかかわらず、こうした事案が起きている」。

「この容認できない状況は、人道活動の促進とは正反対のものだ。誰1人として、食料を得るために命を危険にさらすようなことは、決してあってはならない」

人道団体は、いまこそ各国政府が「断固たる行動」を取るべき時だとしている。

各国政府は「即時かつ恒久的な停戦を要求し、すべての官僚的・行政的制限を撤廃し、すべての陸路検問所を開放し、ガザ全域にいるすべての人へのアクセスを確保し、軍が管理する物資配給モデルを拒否し、原則に基づいた国連主導の人道支援を回復し、原則に基づいた公平な人道団体への資金提供を継続すべき」だと、声明は訴えている。

さらに、「各国は、武器や弾薬の移送を停止するなど、(ガザ)封鎖を終わらせるための具体的な措置を講じなければならない」としている。

イスラエル外務省は、団体の共同声明の内容をきっぱり否定。「ハマス側の主張を利用している」と非難した。

「これらの団体は、ハマスのプロパガンダに加担し、(ハマスが主張する)数字を利用し、(ハマスの)主張を正当化している」

そして、「あのテロ組織に対抗するのではなく、それを自らのものとして受け入れている」と続けた。

同省はさらに、イスラエルとハマスがカタールで間接的に交渉している新たな停戦および人質解放への合意の「可能性を損なっている」とも主張した。

イスラエル軍は、2023年10月7日にハマス主導の攻撃でイスラエル人約1200人が殺害され、251人が人質に取られたことを受けて、ガザでの軍事作戦を開始した。

ガザ保健省によると、それ以降にガザで少なくとも5万9219人が殺害されている。