日英など28カ国がイスラエルを非難、援助求めるガザ住民に対する「非人道的な殺害」で

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デイヴィッド・グリッテン記者(BBCニュース)
イギリスや日本を含む28カ国は21日、パレスチナ・ガザ地区での戦争の即時停止を求めた。民間人の苦しみが「新たな深刻さに達している」と述べている。
共同声明では、イスラエルによる援助物資の供給体制を危険だとし、「援助の小出しと、食料や水を求める民間人の非人道的な殺害」を非難している。
イスラム組織ハマスが運営するガザ地区の保健省は、この週末の間に、食料を待っていたパレスチナ人がイスラエル軍の攻撃で100人以上殺され、さらに19人が栄養不良で死亡したと発表した。
イスラエルの外務省は、これらの国々の声明を「現実からかけ離れており、ハマスに誤ったメッセージを送るものだ」として一蹴した。
また、ハマスが停戦や人質解放の新しい合意に応じるのではなく、虚偽の情報を拡散し、物資の配布を妨害していると非難した。
過去21カ月にわたるイスラエルとハマスの戦争で、イスラエルの戦術を非難する国際的な声明は数多く出されてきた。しかし、今回の声明はその率直さが注目されている。
声明にはイギリスをはじめ、オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、スイスなど28カ国の外相が署名した。
声明は、「ガザでの戦争は今すぐ終わらなくてはならない」との宣言から始まっている。
続いて、「ガザにおける民間人の苦しみは、かつてないほど深刻だ。イスラエル政府による支援物資の供給体制は危険で、不安定化を招き、ガザの人々から人間としての尊厳を奪っている」と警告している。
「我々は、援助の小出しと、最も基本的な水や食料を求める子どもを含む民間人に対する、非人道的な殺害を非難する。支援を求める中で800人以上のパレスチナ人が殺害されたのは、恐るべきことだ」
イギリスは追加支援を発表
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は声明発表後に英下院で、ガザでは「恐怖が繰り返されている」と述べ、「絶望し、飢えた子どもたち」が空爆で命を落としていると語った。
また、ガザへの人道支援として、英政府が年内に追加で4000万ポンド(約80億円)を拠出すると発表した上で、自分は「イスラエルの安全保障とその国家としての存続を断固として支持する」と述べた。しかし同時に、イスラエル政府の行動は「国際社会におけるイスラエルの評価に計り知れない損害を与えており、イスラエルの長期的な安全保障を損なっている」とも指摘した。

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今年5月にイスラエルが11週間にわたるガザの完全封鎖を一部緩和して以降、食料を待つパレスチナ人が殺害される事例がほぼ毎日のように報告されている。
イスラエルとアメリカは、国連が監督する既存の支援体制を迂回(うかい)する形で、新たに設立された「ガザ人道財団(GHF)」による援助体制を支援している。
イスラエルはGHFの体制について、イスラエル軍の管理区域内に設置された拠点からアメリカの民間警備会社が食料を配布する仕組みが、ハマスによる物資の略奪を防いでいると主張している。
しかし、国連やその協力機関は、この体制は安全性に欠けており、中立性、公平性、独立性という人道原則に反するとして、協力を拒否している。
国連人権高等弁務官事務所は15日、GHFの物資配布拠点が稼働を開始した8週間前以降に、その周辺で674人が殺害されたと発表した。また、国連やその他の支援団体の車列が通行するルート上でも、さらに201人の死亡が確認されたとしている。
ガザの保健省によると、19日には南部ハンユニスとラファにあるGHFの2カ所の拠点付近で、さらに39人が殺害された。イスラエル軍は、拠点が開く前に「あやしい人物」が接近するのを防ぐため、警告射撃を行ったと説明している。
また20日には、ガザ北部の検問所付近で国連の支援トラックの車列に群衆が殺到し、67人が死亡したと保健省が発表した。イスラエル軍は、群衆に対して「差し迫った脅威を排除するため」に警告射撃を行ったとしているが、死者数については異議を唱えている。
この事態を受けて、国連世界食糧計画(WFP)は、ガザの飢餓危機が「かつてないほど深刻な段階に達している」と警告した。
WFPは、「人道支援の不足により人々が命を落としている。栄養不良が急増しており、9万人の女性と子どもが緊急の治療を必要としている」と述べた。
ガザの保健省は21日、19日以降に栄養不良が原因で19人が死亡したと発表し、今後「大量死」が発生する可能性があると警告した。

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デイル・アル・バラフのアル・アクサ病院で広報担当を務めるハリル・アル・ダクラン医師はBBCに対し、「病院では患者や職員に食事を提供できなくなっており、多くの職員が極度の空腹のために業務を継続できない状態にある」と語った。
また、「粉ミルクが市場から完全に消えたため、病院では飢餓に苦しむ子どもたちにミルク1本さえ提供できない」と述べた。
複数の住民も、食料不足のたのため市場が閉鎖されていると報告している。
2児の父の理髪師モハンマド・イマード・アル・ディン氏はBBCの取材に対し、「子どもたちは夜通し空腹で泣いている。ここ3日間で食べたのはレンズ豆の小さな皿だけだ。パンはない。小麦粉1キログラムが1週間前には80ドル(約1万1800円)だった」と話した。
「人道都市」への移住計画も非難
28カ国による声明では、イスラエルがガザの全住民210万人を南部ラファのいわゆる「人道都市」へ移動させるという提案について、「恒久的な強制移住は国際人道法に違反する」として、受け入れられないと明言している。
また、イスラエルとハマス、そして国際社会に対し、「即時かつ無条件で恒久的な停戦を通じて、この悲惨な紛争を終結させるよう」求めている。
さらに声明では、「即時停戦と、安全保障および和平への政治的道筋を支援するために、さらなる行動を取る用意がある」と警告している。
この文言は、多くの国がすでに承認しているパレスチナ国家の承認を意味するものと受け止められている。一方でイギリスやフランスなどパレスチナ国家をまだ承認していない国々も、この声明に賛同している。
イスラエル外務省のオレン・マルモルシュタイン報道官はこうした批判を退け、「すべての声明と主張は、人質解放と停戦の合意が成立しない唯一の責任者であるハマスに向けられるべきだ。ハマスこそがこの戦争を始め、長引かせている」と述べた。
また、「ハマスは停戦に応じる代わりに、イスラエルに関する虚偽情報を拡散する活動に注力している。同時に、援助物資を受け取ろうとする民間人に対して意図的に摩擦と被害を引き起こしている」と付け加えた。
イスラエル軍は今月初め、物資を求める民間人が被害を受けた事例があったことを認め、「住民とイスラエル軍との間の摩擦を可能な限り最小限に抑えるよう努めている」と述べた。
ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)も21日、「イスラエルは国際法に則って行動しており、国際機関と連携してガザへの人道支援の搬入を促進する努力を主導している」と発表した。
GHFのチャピン・フェイ報道官は、国連機関にGHFの活動への参加を呼びかけるとともに、支援活動を「停止」し、物資をガザ全域に届けられていない責任があると非難した。
フェイ報道官は記者団に対し、検問所で援助物資が「腐っている」のを目撃したと述べ、その原因は国連機関が物資を運ばないからだと主張した。
イスラエル外務省は20日、国連の引き取りを待つ援助物資がトラック700台分、検問所にあると発表した。
国連は、戦闘の継続や、イスラエルによる人道支援活動への制限、燃料不足などにより、物資の引き取りと配布が困難になっていると説明している。
イスラエル軍は、2023年10月7日にハマス主導の攻撃で約1200人が殺害され、251人が人質に取られたことを受けて、ガザでの軍事作戦を開始した。
ガザの保健省によると、それ以降に少なくとも5万9029人が死亡している。











