ガザの全住民が飢饉の「重大なリスク」に直面、国連が支援する報告書が指摘

ガザ北部ジャバリア難民キャンプで、食料支援を受けようと集まるパレスチナ人避難民

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イスラエルが人道援助物資の搬入を阻止し続ける中、パレスチナ・ガザ地区で暮らす約210万人のパレスチナ人が、飢饉(ききん)の「重大なリスク」に見舞われており、「極度の食料不安」に直面していると、国連が支援する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の最新報告書が指摘した。

IPCは12日付の報告書で、ガザの状況は昨年10月以降「大きく悪化」しているものの、現在のところ飢饉は発生していないと結論付けている。IPCは、国連や援助機関、各国政府によるイニシアチブで、国際社会が飢饉の発生を判断する主要なメカニズム。

1月19日に発効したイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意は、約2カ月間続いた。報告書は、これがガザでの「一時的な時間的猶予につながった」としつつ、停戦合意が事実上崩壊した3月初旬からイスラエルが援助物資の搬入を阻止していることと、敵対行為の再燃によって、いったん改善された状況が「逆戻り」したと指摘している。

また、現在、24万4000人がもっと深刻な、あるいは「壊滅的な」レベルの食料不足に陥っているとし、飢饉となるリスクが「ますます高まるのを」を防ぐための緊急行動を求めている。

イスラエルは3月中旬にガザでの軍事作戦を再開。過去70日間にわたり、ガザへの食料、医薬品、その他の人道支援物資の搬入を全面的に遮断している。ガザに残る人質を解放するようハマスに圧力をかけるためだとしている。

イスラエルによるガザ封鎖に対して、国際社会からは非難が相次いでいる。国連は、ガザの検問所に物資を準備しており、イスラエルが許可すればすぐに搬入できる状態だとしている。援助機関は、ガザ封鎖は飢餓政策に等しく、戦争犯罪に該当する可能性があると指摘している。

5人に1人が飢餓に直面

IPCの報告書によると、ガザでは5人に1人に相当する約50万人が飢餓に直面している。また、2026年4月までの今後11カ月間で、5歳未満の子供7万1000人近くが急性栄養不良になると予想されるという。

また、「多くの世帯が物乞いをしたり、集めたごみを売って食べ物を買うなど、食料を確保するために極端な手段を取らざるを得なくなっている」と、報告書は付け加えた。

報告書は、現在の状況と2024年10月時点の分析を比較したところ、「紛争によって引き起こされた世界で最も深刻な食料・栄養危機の一つで、計り知れない人の苦しみを特徴とした状況が、大きく悪化した」としている。

分析によると、ガザ人口の93%にあたる195万人が、深刻な食料不安の中で生活している。そのうち24万4000人は「壊滅的な」レベルの食料不足に陥っている。

1月半ばから3月半ばまでの停戦中に、約2万5000台のトラックが支援物資をガザに搬入した。

イスラエル当局は、このため物資不足はなく、ガザでは飢餓の危機は起きていないと主張している。

人道支援物資の搬入再開は

ガザをめぐっては12日、ハマスが人質として拘束していたイスラエル系アメリカ人のイダン・アレクサンダー氏(21)を解放した。同組織は、アレクサンダー氏の解放は新たな停戦合意に向けた取り組みの一環だとしている。また、人道支援物資の搬入に向けた合意促進の目的もあるとしていた。

一方でイスラエル首相官邸は、なんらかの停戦のためのコミットメントではなく、アレクサンダー氏の解放のための「安全な回廊」の設置に応じただけだとしている。

こうした中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は13日、サウジアラビアに到着し、中東歴訪を開始した。イスラエル政府は、トランプ氏の中東訪問終了までに合意が成立しない場合、ハマスに対する軍事作戦を拡大する方針を明らかにした。

この計画にはガザ全域の無期限占拠、パレスチナ人の南部への強制移動、民間警備会社による支援物資の配布管理が含まれている。

国連やその人道支援パートナーは、支援物資が「兵器化」される懸念があるとして、協力を拒否する姿勢を示している。一方、アメリカ政府は先に、人道支援を民間企業に委託する仕組みを準備中だと認めた

IPCは報告書の中で、イスラエルとアメリカが進める援助物資の配布計画は「非常に不十分」なものだと推測されるとし、ガザ住民の大部分は、「提案された物資の配布場所へアクセスするうえで大きな問題に直面する」ことが予想されると指摘した。

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質としてガザに連れ去った。ガザでは今も58人の人質が拘束されている。うち24人は生存しているとみられる。

ハマス運営のガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万2862人が殺された。