エプスティーン元被告の共犯者、トランプ氏に「不適切」行為なかったと 司法省高官の面会で

暗い屋内で肩を組む男女の写真

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画像説明, ギレイン・マックスウェル受刑者(右)は、故ジェフリー・エプスティーン元被告(左)の少女虐待を手助けした罪などで、禁錮20年の刑に役している

未成年女性への性的虐待罪で有罪とされた米資産家ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)の共犯者で、禁錮20年の有罪判決を受けているギレイン・マックスウェル受刑者が、米司法省高官との面会の中で、ドナルド・トランプ大統領およびビル・クリントン元大統領による不適切な行為を目撃したことはないと述べていたことが、23日に明らかになった。

マックスウェル受刑者は今年7月、刑務所内で2回にわたりトッド・ブランチ司法副長官と面会した。8月23日に公開された記録によると、同受刑者は、多くの憶測の対象となっている「顧客リスト」は存在しないと、副長官に語ったという。

また、英王室のヨーク公アンドリュー王子が未成年の少女と性的関係を持ったとされる疑惑については、「とんでもなく、あり得ない話だ」と強く否定した。

ブランチ司法副長官と面会した直後、マックスウェル受刑者はフロリダ州の刑務所からテキサス州にある最も警備の軽い刑務所へ移送された。移送の理由については明らかにされていない。

マックスウェル受刑者は、トランプ大統領からの恩赦を求めているほか、連邦最高裁判所に有罪判決の破棄を求める申し立ても行っている。一方で、連邦当局に虚偽の証言をした疑いも持たれている。

ホワイトハウスは、マックスウェル受刑者の事件に関して「いかなる寛大な措置も取られていないし、そのための議論もされていない」と強調している。

トランプ政権は現在、大統領がかつて親しかったエプスティーン元被告に関する情報の開示を求める圧力に直面している。

トランプ氏は、2004年にエプスティーン元被告とのつきあいを打ち切ったと主張している。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今年7月、パム・ボンディ司法長官が5月にトランプ氏に事態を説明する中で、エプスティーン元被告に関連する司法省の文書の中にトランプ氏の名前も出てくると伝えたと報じた。

元被告の関連資料に名前が出てくること自体は、不正行為を犯したことの証拠にはならない。トランプ氏はこれまで、元被告の事件に絡み、不正行為に問われたことはない。

トランプ氏は昨年の大統領選で、この件に関する情報をさらに公開すると述べていた。しかし、政権発足から数カ月後には立場を一転させ、事件はすでに終結していると発言。政敵がトランプ政権の成果から世論の目をそらすためにこの事件を利用していると批判している。

一方、エプスティーン氏に関する捜査の透明性を求める声は、共和党内からも上がっている。

マックスウェル受刑者が語った内容

面会の記録は300ページに及ぶが、一部が大幅に黒塗りされていた。マックスウェル受刑者はこの中で、トランプ氏とエプスティーン元被告は「社交の場では親しかった」としながらも、親友だったとは思わないと述べている。

マックスウェル受刑者は、「私は実際、マッサージの場に大統領がいたのを一切見たことがない」と述べた。エプスティーン元被告の被害者たちは、元被告の施設で客をマッサージさせられていたと証言している。

受刑者はさらに、「大統領が誰かに対して不適切にふるまったことは、一度もない」と主張した。

また、「私が(トランプ氏と)一緒にいた時、彼はあらゆる面で紳士だった」ともマックスウェル受刑者は述べた。

また、トランプ氏がエプスティーン元被告に対して2003年に、50歳の誕生日を祝うメッセージを送ったとWSJが報じた件については、記憶にないと語った。

ブランチ司法副長官はマックスウェル受刑者に対して、このところ陰謀論の対象となっている「顧客リスト」についても質問していた。

受刑者はさらに、ビル・ゲイツ氏、イーロン・マスク氏、エフード・バラク元イスラエル首相、ロバート・F・ケネディ・ジュニア米保健福祉長官、俳優のケヴィン・スペイシー氏、モデルのナオミ・キャンベル氏、アンドリュー英王子など、著名人との関係について質問を受けた。

エプスティーン元被告の著名な交友関係は、元被告の犯罪に関与した人物を「ディープステート」が守っているとする、陰謀論の中心的なテーマとなってきた。

トランプ政権の関係者の中には、米連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル長官やダン・ボンジーノ副長官など、過去にこうした陰謀論をしきりに繰り返した人物もいるが、現在は撤回している。

マックスウェル受刑者は面会の中で、「リストなど存在しない」と述べている。

アンドリュー王子との関係も否定

古いプリント写真の中央に、アンドリュー王子とジュフリーさんが笑顔で並んで写っている。王子はジュフリーさんの腰に手を回している。その奥にはマックスウェル受刑者が笑顔で立っている

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画像説明, 2001年にロンドンでアンドリュー王子と写真に収まったジュフリーさん(中央)。マックスウェル受刑者(右)が持つこの家の浴室で、自分は暴行されたのだとジュフリーさんは話していた。また、自分は同受刑者に勧誘され、エプスティーン元被告の「仲間」に加えられたと主張していた

司法副長官による聞き取りで、受刑者はエプスティーン元被告と英王室のアンドリュー王子、そしてアンドリュー王子の元妻サラ・ファーガソン氏との関係についても詳しく話した。アンドリュー王子は、エプスティーン元被告との交友関係が問題視され、王室の公務から退いている

受刑者は、自分がアンドリュー王子にエプスティーン元被告を紹介したというのは、「まったく事実と異なる」と述べ、「まず最初に言っておきたい。私は彼をアンドリュー王子に紹介していない」と強調した。

アンドリュー王子は以前、マックスウェル受刑者が自分をエプスティーン元被告に紹介したのだと述べていた。しかし同受刑者は、2人の出会いにはファーガソン氏がかかわっていると思うと話した。

BBCはマックスウェル受刑者の主張についてファーガソン氏の代理人に問い合わせたが、コメントは得られなかった。

マックスウェル受刑者はまた、アンドリュー王子と一人の少女をめぐる疑惑についても話した。面会記録からは少女の名前は伏せられていたが、エプスティーン元被告の著名な告発者で、今年4月に自殺したヴァージニア・ジュフリー氏を指していることがはっきりうかがえる内容となっていた。

ジュフリー氏は生前、未成年の時にマックスウェル受刑者のロンドンの自宅で、金銭を渡され、同王子との性行為を強要されたと主張していた2001年に撮影されたとされる写真には、当時17歳だったジュフリー氏とアンドリュー王子、マクスウェル受刑者の3人が一緒に写っている。

しかしマックスウェル受刑者は司法副長官に対し、アンドリュー王子をめぐる疑惑について、自分のロンドン宅の面積などを理由に、「とんでもないほど、あり得ない話だ」と否定した。

また、アンドリュー王子とその女性、そしてマックスウェル受刑者が写っている「有名な写真」について聞かれると、偽物だと答えた。

アンドリュー王子は一貫してこの疑惑を否定していたが、2022年にジュフリー氏と金銭支払いを伴う和解に至っている。和解には責任の認定や謝罪は含まれていない。

司法副長官との面会記録の公開を受け、ジュフリー氏の遺族は、司法省がマックスウェル受刑者と面会したことに、「激しい憤りを感じている」との声明を発表。マックスウェル受刑者を「モンスター」と呼び、その証言は信頼できないと述べている。

声明は、「トッド・ブランチ司法副長官による奇妙な面会は、マックスウェルの裁判で証明された虚偽の証言について一切追及していない。彼女に歴史を書き換える場を与えた」と非難している。

また、「この司法の茶番は、彼女の有罪判決を勝ち取るために命や安全を犠牲にした多くの勇敢な被害者たち、そして私たちの妹の経験を完全に否定するものだ」と述べている。

「共犯関係」

マックスウェル受刑者は、1991年にエプスティーン元被告と親しくなった後、性的関係も持つようになったと述べている。

その関係が終わった後も、マックスウェル受刑者は元被告から報酬を受け取っていたとされ、2009年には年間最大25万ドルを受け取っていたという。マックスウェル受刑者は、2人関係は「共犯関係」だったとしている。そのうえで、2010年から元被告の死までは「ほぼ関係がなかった」と語っている。

エプスティーン元被告は2008年、未成年者に対する売春の勧誘で有罪判決を受け、性犯罪者として登録された。エプスティーン元被告は2019年、未成年の性的人身売買容疑で起訴された後、ニューヨークの拘置所内で死亡した

マックスウェル受刑者はブランチ司法副長官に対して、「(エプスティーン元被告が)自殺したとは思っていない」と述べる一方で、誰かに口封じのために殺されたと信じる理由も「何もない」と付け加えた。

エプスティーン元被告が殺されたという説は「ばかげている」と受刑者は語り、「もし誰かが彼を殺したかったなら、拘置所に入る前にいくらでも機会があったはずだ」と述べた。

さらに、「彼に脅されるとか何かそういう材料を持っていると心配だったとしても、彼を狙うのは簡単だったはず」だとも話した。