アンドリュー英王子、性的暴行訴訟で原告と和解 和解金と「多額の寄付」で合意

Prince Andrew, Virginia Roberts and Ghislaine Maxwell in 2001

画像提供, Virginia Roberts

画像説明, アンドリュー王子(左)とジュフリー氏(中)が一緒に写った写真(2001年撮影)。右後方にはマックスウェル被告の姿がある

英王室のヨーク公アンドリュー王子(61)が、2001年に当時17歳のヴァージニア・ジュフリー氏(38)に性的暴行をしたとして、同氏からアメリカで訴えられている民事訴訟をめぐり、双方の弁護士は15日、両者が「大枠で和解」したと発表した。

ジュフリー氏は昨年8月、アンドリュー王子から2001年にニューヨークやロンドンなどで3回にわたり性的暴行を受け、「多大な精神的、心理的な苦痛と損害」に悩まされ続けているとして、アンドリュー王子を提訴した

アンドリュー王子は一貫してこの疑惑を否定してきた。アンドリュー王子はエリザベス女王の三男で、王位継承権で9位。

ニューヨーク州南部地区連邦地裁のルイス・A ・カプラン判事宛ての書簡で両者の弁護士は、アンドリュー王子とジュフリー氏が「大枠で和解した」と説明。「ジュフリー氏が和解金を受け取ることで、訴えを取り下げる」と述べた。

また、アンドリュー王子はジュフリー氏が設立した被害者権利の慈善団体に「多額の寄付」を行うとしている。

アンドリュー王子は、性的人身売買の罪で訴追された米富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)と親交があった。ジュフリー氏は、エプスティーン元被告らを介して、アンドリュー王子と会ったとしていた。

エプスティーン元被告の被害者数人の弁護人を務めているリサ・ブルーム氏はツイッターで、ジュフリー氏の「勝利」だと和解を称賛した。

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和解の共同声明の全文

ヴァージニア・ジュフリーとアンドリュー王子は、裁判所外での和解に合意した。

ジュフリー氏が和解金(額は非公表)を受け取ることで、訴えの取り下げを申請する。

また、アンドリュー王子はジュフリー氏が設立した被害者権利の慈善団体に多額の寄付を行う予定となっている。

アンドリュー王子はジュフリー氏の人格を中傷しようとしたことはなく、ジュフリー氏が確かな虐待の被害者として、そして公の場での不当な攻撃によって、被害に苦しんだことを認める

ジェフリー・エプスティーンが長年にわたり、数えきれない若い少女を性的に人身売買していたことは事実だ。

アンドリュー王子はエプスティーンとの交友関係を後悔するとともに、ジュフリー氏や他の被害者が、自分自身や他の人々のために立ち上がったその勇気を称賛する。

アンドリュー王子は、エプスティーンとの交友関係への後悔を示すため、性的人身売買という悪との闘いを支援し、被害者にも支援を行うと約束する。

Virginia Roberts Giuffre

画像提供, Reuters

画像説明, ヴァージニア・ジュフリー氏

ジュフリー氏の訴え

ジュフリー氏(旧姓ロバーツ氏)は、16歳の時からエプスティーン元被告の性的人身売買の被害者になったと訴えてきた。

ジュフリー氏は、アンドリュー王子を含む権力者の男性に「貸し出された」こともあると説明。アンドリュー王子については、17歳の時に、エプスティーン元被告の恋人のギレイン・マックスウェル被告(60)が所有するロンドンの邸宅や、エプスティーン元被告がニューヨークや米ヴァージン諸島に持っていた邸宅などで、性的に暴行されたと主張していた。

エプスティーン元被告は2019年、性的人身売買の罪で訴追され、裁判を待つ間に拘置施設で自殺した。一方のマックスウェル被告は昨年12月、少女たちを元被告に仲介した罪などで、ニューヨークの裁判所で有罪評決を受けた

Prince Andrew

画像提供, Getty Images

画像説明, アンドリュー王子

アンドリュー王子は、2019年にBBC番組ニューズナイトに出演した際、ジュフリー氏と会った記憶はないと述べた。また、同氏がアメリカとイギリスで王子とセックスをしたと訴えていることについて、そうしたことは「起きていない」と話した。

一方で、海軍を引退して事業を始めた当時には、エプスティーン元被告との関係から「非常に良い成果もあった」と話していた。王子はこの番組出演後まもなく、公務から離れた

アンドリュー王子はジュフリー氏による民事訴訟の却下を求めていたが、今年1月に裁判所が継続を決めると、王室はアンドリュー王子の軍役職が女王に返還されたと発表。王子は「民間人として」裁判に臨むとされた。

また王室筋によると、アンドリュー王子は公的な場での敬称「His Royal Highness(殿下)」の使用もやめるとされた。

動画説明, アンドリュー英王子の肩書や役職返上、どんな意味があるのか

和解金はどこから?

アンドリュー王子の弁護団は先に、年内に開かれる予定だった民事訴訟の審理で、陪審による裁判を求めると話していた。

王子の代理人は、共同声明以外に述べることはないとしている。イギリス王室バッキンガム宮殿も、この和解についてコメントを控えている。

和解金の額は明らかにされていないが、一部では数百万ポンド(数億円)に上ると報じられている。

一方で、アンドリュー王子が和解金をどのように調達するのか、疑問が浮上している。王子は王立海軍の年金と、エリザベス女王の所領であるランカスター公爵領からの収入を受け取っている。

英法律事務所リーズ・ソリシターズのケイト・マクナブ弁護士は、「和解金がどこから支払われるのか、その財布が公的なものか私的なものか、知りたいという要望は出てくるだろう」と話した。

反君主制団体「リパブリック」のグレアム・スミス氏は、納税者には和解金の出所を知る権利があると指摘している。

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<分析>和解でも元には戻れず――ジョニー・ダイモンド王室担当編集委員

訴訟の継続が決まったその瞬間から、控えめに言っても、アンドリュー王子にとって事態は厄介な方向にしか進まなくなっていた。それでも今回の和解は、裁判で勝利する以外の道筋としては、かなり良いものだったと言える。

アンドリュー王子は、3月初めにも宣誓供述書を提出する予定だったが、それを回避した。罪も認めていない。今後は民事訴訟も、批判や証拠が示されることもない。

有罪とは認められていないので、無罪が確定した。つまり、あらゆる法的脅威から解放されたということだ。

しかしここ数年で、アンドリュー王子はかなりの打撃を受けている。小児性加害と未成年の人身売買で有罪となった人物との交友関係は、今後も常に王子の評価に響くだろう。民事訴訟を招いたという事実そのものも、それが正当だったかどうかにかかわらず、悪い影響を与えるだろう。

イギリス王室は今回の和解について、何の動きも見せていない。

メディアはその代わり、アンドリュー王子が軍の役職と慈善団体の後援者の役職を失ったとした、今年1月の発表に注目するよう言われた。

このことが、関係筋がここ数年示唆してきたことを裏付けている。アンドリュー王子は、元の王族としての生活には戻れないということだ。

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<解説>ドミニク・カシアーニ内政・法務担当編集委員

今回の和解は突然降ってきたもののように思えるかもしれない。しかし、アンドリュー王子がこの訴訟で陪審員裁判まで闘うと考えていた弁護士は、ほぼいなかった。

驚くべきは、共同声明の文言だ。和解は間違いを認めることではないが、アンドリュー王子はこの文章内で、これまで繰り返してきた、何も悪いことはしていないという主張を繰り返さなかった。

当初、アンドリュー王子は自分の弁護団に、「根拠のない訴訟で(中略)王子から金銭を巻き上げようとしている」とジュフリー氏を批判させていた。

ジュフリー氏は、エプスティーン元被告をめぐる疑惑で多額の金銭を得たと批判され、王子に対しても「逼迫(ひっぱく)した状況」の中で「軽率に」訴訟を起こしたと言われていた。

だが、こうした主張は一切なくなり、繰り返されていない。共同声明で王子は、ジュフリー氏は虐待の被害者であり、その人格は疑問視されるべきではないと、32語を費やして認めている。

法廷でのドラマは始まる前に終わってしまったが、アンドリュー王子のこの言葉が何を意味するのかは、大衆が決めることになる。

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