元FBI長官のコーミー氏、偽証罪で起訴 トランプ氏が敵視

ダークスーツ姿の男性が、建物の廊下を歩いている。周囲を報道陣が取り囲み、スマートフォンを掲げて映像や音声を記録しようとしている

画像提供, Getty Images

米ヴァージニア州の連邦大陪審は25日、元連邦捜査局(FBI)長官のジェイムズ・コーミー氏を、議会証言に関連する2件の罪で起訴した。同氏はドナルド・トランプ大統領から長年にわたり批判されてきた。

コーミー氏は、2020年9月の議会証言において、機密情報をメディアに流出させることを許可したかを問われた際に、虚偽の証言を行ったとして起訴された。

起訴を受けて、コーミー氏は動画声明で無実を主張し、「連邦司法制度に大きな信頼を寄せている」と述べた。

トランプ大統領は先に、自分の政敵に対する調査をもっと積極的に進めるよう、パム・ボンディ司法長官に求めたばかり。

コーミー氏の捜査は、リンジー・ハリガン・ヴァージニア州東部地区連邦検事が主導している。ハリガン検事は、以前トランプ氏の個人弁護士を務めており、22日に新たにこの任務についたことが明らかになっている。

BBCがアメリカで提携するCBSが報じたところによると、コーミー氏の罪状認否手続きは、10月9日に、ヴァージニア州アレクサンドリアで予定されている。

ボンディ司法長官は声明の中で、「今回の起訴は、権力を乱用し、アメリカ国民を欺いた者に対して責任を問うという司法省の姿勢を反映している」と述べた。

コーミー氏は、虚偽の証言1件と司法妨害1件の罪で起訴された。

虚偽の証言とされているのは、上院司法委員会で、FBIの捜査内容について「FBI内の第三者に、報道において匿名の情報源になることを許可」したことはないと述べた点。この捜査は、ロシアによる米大統領選介入疑惑をめぐるものだとみられている。

司法妨害については、コーミー氏が「上院司法委員会における調査権限の適正な行使を妨げる目的で、虚偽かつ誤解を招く陳述を行い、調査を妨害しようとした」とされている。

司法省は今回、3件の罪状を連邦大陪審にかけたが、大陪審はそのうち2件についてのみ、裁判にかけるに足る証拠があると判断した。3件目の罪状は、別の虚偽証言に関するものだった。

大陪審は、検察官によって設置される一般市民の集団で、起訴に十分な証拠が存在するかを判断する。法的には、犯罪が行われたと信じるに足る「相当な理由」が存在するかを判断する、ということになる。

コーミー氏は、刑事事件で起訴された初の元FBI長官となった。同氏は、宣誓下で虚偽の証言をしたことはないと主張している。

有罪とされた場合、最大で5年の禁錮刑が科される可能性がある。

コーミー氏側のパトリック・フィッツジェラルド弁護士は短い声明を発表し、コーミー氏が起訴内容を否認していると述べた上で、「法廷で潔白を証明することを楽しみにしている」とした。

コーミー氏は動画声明の中で、「私と家族は、ドナルド・トランプに立ち向かうことには代償が伴うと、何年も前から理解している」と述べた。

また、「私たちはひざまずいて生きることはしない。皆さんもそうすべきではない」、「私は無実だ。だから、裁判をしよう」と語った。

動画説明, 「大陪審」から「罪状認否」まで……アメリカの法律用語を解説

今回の起訴は、今月30日に5年の時効を迎えるのを目前に行われた。

この事件は最近、新たな検察官に引き継がれた。元々この事件を担当していたエリック・サイバート連邦検事は、トランプ政権によって解任され、後任としてハリガン氏が任命された。

起訴状によると、コーミー氏は「FBIの捜査について、匿名の情報源として報道にかかわる」ことを許可しておきながら、上院司法委員会で「故意に」虚偽の証言をしたとされる。

これにより、コーミー氏は2020年9月30日ごろ、同委員会の「適正かつ適切な調査権の行使に影響を与え、妨害しようと腐心した」とされる。

同委員会の公聴会では、コーミー氏は2017年の自らの証言について、間違いないと述べた。その証言は、トランプ氏と、同氏の2016年大統領選の対立候補だったヒラリー・クリントン氏のいずれに関しても、FBIの捜査情報を開示したり、開示を認めたりしたことはなかったとするものだった。

トランプ氏との会話を詳細に記したコーミー氏の一連のメモは、2017年にメディアに公開された。

その中でコーミー氏は、当時のマイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のロシアとの接触に関する捜査について、トランプ氏が取りやめるよう示唆したと書いていた。

ホワイトハウスと司法省の防壁が「崩壊」

この事件は、トランプ大統領の2期目における、最も著名な人物に対する起訴とされる。

トランプ大統領は最近、コーミー氏だけでなく、民主党のアダム・シフ上院議員、ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官など、自身の公然たる批判者に対する訴追が遅れていることに不満を示していた。

トランプ氏は先週、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「もうこれ以上遅らせることはできない。我々の評判と信頼性が死にかけている。彼らは私を2度弾劾し、(なんと5回も!)起訴した。すべて根拠はない。正義は今すぐ実行されなければならない!」と投稿した。

起訴が発表された後、トランプ氏はコーミー氏を、「この国がこれまでにさらされた中で最悪の人間の一人」と呼び、「彼は長年にわたり我が国にとって非常に悪い存在だった。そして今、我が国に対する犯罪の責任を問われ始めている。アメリカを再び偉大にしよう!」と述べた。

起訴が公表される数時間前、コーミー氏について記者団に問われたトランプ氏は、同氏を「悪い人物」と呼びながらも、訴追について事前に知らされていなかったと述べた。

元連邦検察官で、現在は米ロヨラ・メリーマウント大学に所属するローリー・レヴェンソン教授(法学)は、この事件の訴追は非常に困難なものになるとの見方を示している。

レヴェンソン教授はBBCニュースに対し、「この種の事件では、被告の証言と他者の証言が対立することが多く、双方の信用性を検証する必要がある」と語った。

さらに、「仮にジェイムズ・コーミー氏が何かを誤ったとしても、それが議会に対して故意に、あるいは意図的に虚偽の証言をしたことを意味するわけではない。それを証明することが、この事件の核心になる」と述べた。

レヴェンソン氏はまた、今回の訴追と、それに対するトランプ氏の公然たる圧力は、ホワイトハウスと司法省の間に存在していた従来の防壁が「この事件によって崩壊した」ことを示唆していると指摘した。

民主党の複数の議員も、今回の起訴を非難している。ハキーム・ジェフリーズ下院民主党院内総務は「法の支配に対する恥ずべき攻撃だ」と述べ、「この悪質な腐敗に加担した者には責任を問う」と強調した。

コーミー氏とは

コーミー氏は2013年から2017年までFBI長官を務めた。

在任期間中には、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏の電子メール問題に関する調査を、2016年の大統領選直前に主導した。同選挙ではクリントン氏がトランプ氏に敗れた。

今年に入ってからのコーミー氏に対する捜査は、今回が初めてではない。

写真には、砂の上に貝殻で書かれた「8647」という数字が写っていたが、これを共和党側は、「86」は「排除する」や「殺す」などの意味を持つスラングで、「47」は第47代大統領であるトランプ氏を指すと主張した。

モーリーン氏は、性的人身取引の罪で起訴されてニューヨークの拘置所内で死亡した富豪ジェフリー・エプスティーン元被告や、その共犯として有罪になったギレイン・マックスウェル受刑者、ヒップホップ界の大物ショーン「ディディ」コムズ被告による売春事件などについて、捜査を担当していた。

モーリーン氏は9月、自身の解任を不服として、トランプ政権を提訴している。

このほか、司法省はトランプ氏を怒らせたとされる事件に関与した複数の弁護士を解任している。また、特別検察官によるトランプ氏の捜査に関与した職員も対象となっている。

追加取材:スミ・ソマスカンダ