故エプスティーン元被告の事件など担当の検察官、米司法省が解雇 元FBI長官の娘

屋外で撮影され、ワインレッドのジャケットを着たコーミー検事が無表情で正面を向いている

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画像説明, モーリーン・コーミー検事は2015年から米ニューヨーク州南部地区連邦地検で働いていた

米司法省は16日、ニューヨーク州南部地区連邦地検のモーリーン・コーミー検事を解雇した。理由は明らかになっていない。検事は、性的人身取引の罪で起訴されてニューヨークの拘置所内で死亡した富豪ジェフリー・エプスティーン元被告や、その共犯として有罪になったギレイン・マクスウェル受刑者、ヒップホップ界の大物ショーン「ディディ」コムズ被告による売春事件などについて、捜査を担当していた。

コーミー氏は解雇の翌日、元同僚たちへのメッセージで、「恐怖は暴君の道具、独立した思考を抑圧するために振りかざされる」と伝えた。同氏は、2017年にドナルド・トランプ大統領によって解任されたジェイムズ・コーミー元米連邦捜査局(FBI)長官の娘。

司法省はこれまでにも、トランプ大統領の怒りを買った事件の捜査に関わった検察官を複数解雇している。対象の事件には、特別検察官によるトランプ氏への捜査も含まれる。

コーミー氏は元同僚たちに対して、「キャリア検察官が理由もなく解雇されることがあり得るなら、残された人たちの判断に、恐怖が入り込むかもしれない。そんなことにはならないようにしてほしい」と書いた。米政治サイト「ポリティコ」が最初に報じた。

コーミー氏はさらに、「恐怖の代わりに、今のこの瞬間を、この場所の心臓に燃える炎の燃料にしてほしい」と同僚たちに訴えた。「その炎とは、権力の乱用に対する正義の憤り、被害者のために正義を追求する決意、そして何よりも真実に献身する炎だ」と続けた。

コーミー氏の解雇理由は明らかになっていないが、トランプ政権はこのところ、エプスティーン元被告に関する資料の公表をめぐり、公表を求めるトランプ氏の支持層から激しく批判されていた。

パム・ボンディ司法長官は今年2月に、エプスティーン元被告の顧客リスト公表の意向を示していたが、今月7日には顧客リストは存在しないとして、これ以上の情報公開はしない姿勢を示した。

これに対してトランプ氏の支持層が激しく反発したため、トランプ氏はエプスティーン資料にこだわり続ける者たちの支持など不要だとまで言っていたが、17日には、エプスティーン元被告に関する大陪審証言など追加資料の提出を司法省に指示したとソーシャルメディアに書いた。

元FBI長官の娘に大統領は不満と

 2017年6月に上院情報委員会の公聴会で証言する際、右手を挙げて宣誓したコーミー元FBI長官

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画像説明, コーミー元FBI長官

今回のコーミー検事解雇に先立ち、同検事のチームが起訴したショーン・コムズ被告の裁判で今月2日、陪審は組織的犯罪および性的人身売買の最も重い罪について、無罪評決を下した。被告は売春目的の人身移送罪では有罪になり、保釈も認められなかった。

米ABCニュースによると、トランプ氏はコーミー元FBI長官の家族が政権内にいることに、内々で不快感を示していたという。

コーミー元長官は今年5月、インスタグラムに投稿(後に削除)した貝殻の写真がトランプ氏への暴力を扇動する意図があると連邦当局に見なされ、シークレットサービスの事情聴取を受けた。

今月初めには、司法省がコーミー元長官への捜査を開始したと報じられた。司法省は、2016年の大統領選におけるロシアの介入疑惑について、コーミー氏が議会で行った証言の内容を調べているとされる。2019年まで約2年間、ロバート・ムラー特別検察官(当時)が率いたロシア介入疑惑捜では、トランプ氏がロシア政府と犯罪的に共謀したという証拠は見つからなかった。

BBCは司法省にコメントを求めている。

司法省は、トランプ大統領が1月に政権に復帰して以来、職員の解雇を進めている。ボンディ長官はこのほど、2020年大統領選の結果を覆そうとしたトランプ氏の取り組みと、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで発見された機密文書の不適切な扱いについて、ジャック・スミス特別検察官(1月に辞任)が指揮した捜査に関与していた職員を、少なくとも20人解雇した。トランプ支持者が連邦議会を襲撃した事件で起訴された被告を担当していた複数の検察官も解雇されている。