ハマス、人質女性3人の映像を公開 1人はイスラエル首相を批判

クリスティ・クーニー(ロンドン)、ポール・アダムス(エルサレム)、BBCニュース

ハマスは人質の女性3人の映像を公開した
画像説明, ハマスは人質の女性3人の映像を公開した

パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスは30日、人質にしているイスラエル人の女性3人の映像を公開した。うち1人は同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相を厳しく批判し、人質の解放を要求している。首相は「残酷なプロパガンダだ」と非難した。

ハマスによるイスラエルへの攻撃では、少なくとも1400人のイスラエル人が殺害され、230人が人質に取られた。これまでに解放された人質は、4人のみにとどまっている。

一方、イスラエルはハマスの壊滅を掲げ、ガザ地区で大規模な軍事作戦を実施している。ハマスが運営する保健当局は、少なくとも8000人のパレスチナ人が殺害されたとしている。

ハマスの軍事部門、アル・カッサム旅団が公開した人質の映像では、女性3人のうち1人だけがカメラに向かって話している。ネタニヤフ首相を非難し、人質解放を実現するよう求めている。

映像がどのような状況で撮影されたのかは、不明。

戦争捕虜や人質は、国際人道法で保護されている。BBCは強要されて撮影された可能性のある映像は放送せず、サイトでも公開しない。

「残酷な心理的プロパガンダ」

映像の公開を受け、ネタニヤフ首相は声明を発表。「これはハマスとISIS(イスラム国)による残酷な心理的プロパガンダだ」と非難し、「拉致され行方不明になっている全員の帰還に、私たちは全力を尽くす」とした。

また、女性3人をエレナ・トルパノフさん、ダニエル・アロニさん、リモン・キルシュトさんと特定。「あなたたちを抱きしめる」とした。

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アロニさんは、5歳の娘ときょうだい夫婦、その3歳の双子の娘とともに、10月7日にハマスに拉致された。

アロニさんの父親は30日に記者会見し、娘の写真を見た時に「心臓が止まりそうになった」と話した。そして、人質交渉の仲介役となっているカタールの首長に対し、「みんなを連れ戻すため、あらゆる努力をしてほしい」と訴えかけた。

ハマスは攻撃から2週間後の10月20日、人質のジュディス・ラーナンさんと娘のナタリー・ラーナンさんを解放した。ハマスは「人道的理由」で解放したとした。母娘はアメリカとイスラエルの両方の市民権をもっている。

その3日後、ヌリット・クーパーさん(79)とヨケヴェド・リフシッツさん(85)の女性2人も解放した。ハマスは人道および健康上の理由から解放したと説明。イスラエルが受け入れを拒否したと主張した。2人はともにイスラエル人だが、エジプトへと引き渡された。どちらも夫がまだ人質となっている。

首相を苦しい立場に

これまで姿が確認された人質が、全員女性なのは偶然ではない。

今回の映像の公開が、イスラエルの全国民の感情を揺さぶり、ネタニヤフ首相の立場をさらに苦しくすることを狙っているのは疑いない。

ネタニヤフ首相はすでに、人質の家族らから、解放にもっと努力すべきだと大きな圧力を受けている。首相は2日前、人質の解放はハマスの壊滅に次ぐ2番目の優先事項だと述べた。

今回の映像では、アロニさんがネタニヤフ首相について、国民を守れなかったとして厳しく批判している。

たとえそれが無理やり言わされた言葉だったとしても、イスラエルで10日7日以来続く、国民的議論に影響する内容となっている。イスラエルではこの3週間余り、いったいなぜ政府と軍が今回の事態を許してしまったのか、苦悩に満ちた厳しい議論が続いている。

ネタニヤフ首相は30日、人質の家族の「苦悩」を感じていると述べた。同時に、地上作戦が人質解放の可能性を最大にするとし、こう続けた。

「ハマスは圧力を受けなければ、解放しないはずだ。絶対にやらない。これ(地上作戦)が圧力を生み出す」

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