ハマスがさらに人質2人を解放 ガザ地区には支援トラック第3弾
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは23日夜、人質に取っていた女性2人を解放した。ハマスが解放した人質はこれで4人となった。
イスラエルの首相官邸は声明で、ヌリット・クーパーさん(79)とヨケヴェド・リフシッツさん(85)が「テロ組織ハマスの手から解放された」と発表した。
イスラエルの医療当局は、女性2人が救急車で移動する様子の動画を公表した。
2人は南部ラファ検問所からガザを出た後、イスラエルのテルアヴィヴへと移動した。
イスラエルの声明によると、2人は10月7日のハマスの襲撃で、キブツ(農業共同体)ニル・オズで拉致された。クーパーさんの夫のアミラムさん(85)とリフシッツさんの夫オデッドさん(83)も共に人質となったが、解放されていないという。
クーパーさんとリフシッツさんはイスラエル国防軍(IDF)に引き渡された後、イスラエルの医療施設に移され、家族と再会するという。
声明では、エジプト政府と赤十字がこの解放で重要な役割を果たしたとして感謝を表明している。
ハマスは7日のイスラエル侵攻で、約1400人を殺害すると共に、数百人を人質にした。これまでに222人が人質になったことが確認されている。20日には、イスラエル系アメリカ人のジュディス・ラーナンさん(59)と娘のナタリー・ラーナンさん(17)が解放された。

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ハマスの軍事部門として知られるアル・カッサム旅団は23日午後10時ごろ、メッセージアプリ「テレグラム」で人質2人の解放を発表。イスラエルのメディアが、クーパーさんとリフシッツさんだと特定した。
ハマスは「人道と健康の観点から」解放を決定したとしている。
その後イスラエル政府関係者が、BBCがアメリカで提携するCBSに人質解放の事実を認めた。
国際赤十字も午後10時20分に、2人の解放を発表した。ソーシャルメディアでの投稿で国際赤十字は、「中立的な仲介者としての立場がこの仕事を可能にした。今後の解放についても取り組んでいく」とした。
リフシッツさんの娘でロンドン在住のシャローンさんは、「母が無事であることで、言葉では言い表せないほと安心した。でも今は父と、ガザで人質となっているすべての、罪のない約200人の解放を確保することに集中しようと思う」と述べた。
人質解放めぐり情報飛び交う
23日夜には、カタールの仲介によって外国人や二重国籍の人質が50人ほど解放されるとのうわさが飛び交った。交渉関係者はこうした情報を否定し、「民間人全員の解放に向けた交渉が続いているが、突破口はない」と述べた。
ハマスは、停戦やガザ地区への支援拡大と引き換えに人質を解放すると示唆している。一方のイスラエルは一切の停戦を拒否し、軍事作戦を強化している。

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ハマスは21日の時点で、クーパーさんとリフシッツさんの解放を打診したがイスラエルに拒否されたと主張していた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この主張を「ハマスのプロパガンダのうそ」だと否定していた。
ハマスは23日にも再び「敵は21日から2人の引き取りを拒否していた。そのため我々は人道と健康の観点から2人を解放した」と主張した。
BBCのポール・アダムズ外交担当編集委員は、ハマスの人質についての発表を額面通りに受け取ってはならないと指摘。その上で、ハマスが人質の運命をめぐる情報戦に勝とうとしているのは明らかで、イスラエル政府が人質解放に全力を尽くしていないと示唆することで、イスラエル国民の心に疑念を植え付けようとしているのだろうと解説した。
支援物資の第3弾トラック20台がガザに

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国連は23日、支援物資を載せたトラック20台が新たに、エジプトとの境界にあるラファ検問所からガザに入ったと発表した。このうち半数には医薬品や食料、水が積まれているという。
ただし、この支援物資には燃料は含まれていない。ガザ地区に最も多く燃料を供給している国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の燃料備蓄について、国連は「あと2日で枯渇する」と説明。
「燃料がなくなれば、水の脱塩処理ができなくなる」と指摘している。
ステファン・ドゥジャリク事務総長報道官は、「燃料を(ガザ地区に)持ち込むための障壁をすべて取り除けていない」と述べ、「紛争が進行している地域」に支援として燃料を輸送する交渉は複雑だと語った。
イスラエルによる封鎖と空爆が続くガザ地区へは、先週末に合わせて34台の支援トラックが入っている。
ガザ地区の避難民は140万人と推定されている。 UNRWAが運営する避難所には、収容能力の2.5倍以上の人々が流れ込んでいるという。
水不足が深刻化

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ガザ地区では特に、水不足が深刻化している。22日にガザ入りした支援トラックのうち2台には、国連児童基金(ユニセフ)が供給した4万4000本のボトル入りの水が含まれていたが、これは人口の1%に当たる2万2000人が1日に必要とする分に過ぎない。
国連は、燃料不足によって地区内の脱塩施設や取水ポンプが稼働していないことも、水不足に拍車をかけていると指摘している。燃料は、病院で使う電力のためにも強く求められている。
こうした中、EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、エジプトからガザに入る人道援助のトラックは十分ではなく、特に燃料が必要だと述べた。
「ガザで起きていることは人道的大惨事だ。人道的援助を提供することが絶対に必要だ」と、ボレル氏は語った。
その上で、イスラエルの自衛権は「国際人道法の範囲内に限定される」との見方を示し、「民間人の水や電気を断つことはできない。包囲された住民は、人道法上、水と電気を奪われることがあってはならない」と述べた。
イスラエル軍がガザ地区に地上から侵入

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IDFは22日から23日にかけ、ガザ地区に大規模な攻撃を仕掛けた。22日には地上からガザ地区に侵入した。パレスチナ当局は、一連の攻撃で400人以上が殺されたと発表している。
IDFのダニエル・ハガリ報道官は、「機甲部隊と歩兵部隊による」襲撃は、「戦争の次の段階に備えているテロリスト部隊を殺す」ことが目的だったと説明。また、行方不明の人質に関する情報を得るためでもあったと述べた。
IDFは、この攻撃に際してハマス側からミサイル攻撃を受けたと発表。IDFの兵士1人が殺され、3人がけがをしたとしている。
ハマスの軍事部門は、IDFのガザ地区への襲撃は、南部ハンユニスの東側で起きたと発表。イスラエル兵がイスラエルとガザ地区を分離しているフェンスを「数メートルほど」越えたと述べた。
IDFはさらに、ガザ地区全域でトンネルや司令本部などハマスの320カ所を標的とした攻撃を行ったと述べた。これらの標的は、地上作戦の準備を「危険にさらす」可能性があったとしている。
ハマスが運営するガザ地区の保健当局は、22日からの一連の攻撃で、436人が殺されたと発表した。これにより、10月7日に以降のガザ地区での死者は5000人を超えたとしている。当局によると、死者の内訳は子供が2055人、女性が1119人、高齢者が217人。また、1万5000人以上が負傷したという。
ハマスがイスラエル南部にドローン攻撃
イスラエル南部では23日、ドローンによるものとみられる攻撃があり、警報が発せられた。
ハマスはメッセージアプリ「テレグラム」で、ドローン2機を使ってイスラエル軍の拠点を攻撃したとする声明を発表。
イスラエル軍は、ガザ地区との境界に近いニル・オズとアイン・ハベソルに警報を発したと述べた。
また、ドローン2機については「ガザ地区からイスラエルの領土に侵入したことを特定し」、「阻止した」とした。
ドローン攻撃を阻止した方法や、撃墜したのかは明らかではない。
「今は停戦の時ではない」=米高官

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米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は23日、記者会見で、「今は停戦の時ではない」との見解を示した。
「イスラエルには自衛権がある。また、ハマスの指導者を追跡するという仕事もある」と、カービー氏は述べた。
一方、米国務省のマシュー・ミラー報道官は別の記者会見で、「この質問に関しては、ガザに人道支援を提供することに集中する」と述べ、アメリカの特使が人道支援と民間人の安全の確立に尽力しているとした。
こうしたなか、ジョー・バイデン米政権がイスラエルに対し、人質解放の交渉のために地上作戦を遅らせるよう働きかけているという報道が出ている。
ハマスは200人以上を人質にしており、その中にはアメリカ人も多数いる。アントニー・ブリンケン米国務長官は先に、「あらゆる手段、パートナーシップ、関係を駆使して」、人質を帰還させるための「絶え間ない努力」を続けていると述べていた。
BBCのバーバラ・プレット・アッシャー米国務省担当特派員は、イスラエルが地上からガザ地区に侵攻すれば、より広範囲の戦争につながるとの懸念が広がっていると指摘。
報道についてイスラエルは否定しているものの、アメリカがイスラエルに地上作戦を遅らせるよう要請しないまでも、助言していることは明らかだとした。









