イスラエル首相、ガザでの戦争は「第2段階」に 「長く厳しい」戦いになると

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は28日、テルアヴィヴで記者会見し、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦争が「第2段階」に入ったと述べた。イスラエル国防軍(IDF)の地上部隊は「きわめて明確な目的」をもってガザ地区に入っているとしたうえで、「長く厳しい戦争になる」とも話した。他方、ハマスは同日、パレスチナ人受刑者の解放とイスラエル人の人質の交換を提案した。
ネタニヤフ首相はこの日、ハマスに拉致され人質となっている229人の遺族代表と会談した後、記者会見に臨んだ。ハマスの奇襲攻撃を受けて発足した戦時内閣のヨアヴ・ガラント国防相、中道右派野党のベニー・ガンツ前国防相も会見に出席した。
ネタニヤフ氏は、ガザ地区で展開中の地上作戦は、ハマスを「解体」し、人質を帰還させるためのものだと話した。首相は、ガザ地区を「邪悪の本拠地」とも呼んだ。
イスラエル軍の兵と指揮官が「現在ガザ地区内にいる」ことを認め、「そこら中に配備されている」とも述べた。
今月7日のハマスによる奇襲を機に始まった今回の戦争について、ネタニヤフ氏はイスラエルにとって「2回目の独立戦争」だと位置づけ、「我々は戦い、降伏しない。撤退しない。地上でも地下でも」と強調した。
西側やアラブ諸国から支援を受けていることにも触れたうえで、「これは長く厳しい戦いになる」が、「我々は勝つ。勝利する」と首相は述べた。
ハマスがガザ地区で設けている保健省によると、イスラエルの空爆でこれまでに同地区で8000人以上が死亡した。
世界保健機関(WHO)は27日、空爆で死亡した人の4割が子供だと明らかにした。
10月7日の奇襲でハマスはイスラエル領内で1400人以上を殺害した。そのほとんどが、女性や子供を含む民間人だった。ハマスはさらに、229人を拉致し、ガザ地区で人質にしている。
ハマス、人質の交換を提案
記者会見でネタニヤフ氏は、イスラエル内で収監しているパレスチナ人受刑者と、ハマスに拉致されたイスラエル人人質の交換について、戦時内閣が協議していることにも言及したが、詳細の公表は有益ではないとして明らかにしなかった。
ハマスは同日、イスラエルが収監するパレスチナ人受刑者全員と引き換えに人質を全員を解放すると、交換条件を提示した。
ガザ地区におけるハマスの指導者とされるヤヒヤ・シンワル氏はハマスのウエブサイトに提案を掲載。イスラエルの刑務所で囚人にされているパレスチナ人全員の釈放と引き換えに、自分たちが「捕えている全員を解放する用意がある」と述べた。
今月の7日の奇襲攻撃以来、シンワル氏が発言するのは初めて。

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対ハマス戦は「三段階」
首相が言及したガザ地区での戦争の「段階」については、ガラント国防相が20日、議会の外交・国防委員会に対して、対ハマス戦には「3つの段階がある」と説明していた。
それによると、「戦いの第1段階は、ハマスを敗北させ破壊するのを目的に、ハマスのインフラを破壊する」ためのもの。第2段階では「抵抗勢力が集まる場所を排除」するため部隊が戦闘を継続するのだと、国防相は説明していた。
さらに第3段階について国防相は、「ガザ地区での人命・生活に対するイスラエルの責任を取り除き、イスラエル市民にとって新しい安全保障の現実を確立する」ことだと議会委に話していた。
「戦争犯罪を責めるな」=イスラエル首相
ネタニヤフ首相のこの会見に先立ち、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は同日、イスラエルが戦争犯罪を続けていると非難。これにネタニヤフ首相は、反論した。
エルドアン首相はイスタンブールで開かれた大規模なパレスチナ支持集会に出席し、数十万人を前に、「ガザで続く虐殺の主な犯人は西側だ」としたうえで、「イスラエルは22日間、公然と戦争犯罪を犯し続けているが、西側の首脳はイスラエルに停戦を求めるどころか、(戦争犯罪に)反応することもできずにいる」と発言。イスラエルが「戦争犯罪人」のようにふるまい、パレスチナ人を「排除」しようとしているとも非難した。
エルドアン氏は、「もちろんどの国のも自衛権はある。しかし今回の場合、正義はどこにある? 正義などない。ただガザ地区で残酷な虐殺が起きているだけだ」とも述べた。
これについてネタニヤフ氏は会見で、エルドアン氏を名指しこそしないものの、「我々が戦争犯罪を犯しているなど言うな。我々の兵士が戦争犯罪を犯していると非難できると思うなら、それは偽善だ。我々の軍は世界で最も道徳的な軍隊だ」と反論した。
ネタニヤフ首相は、イスラエル軍は民間人保護のため注意を払っているものの、ハマスが「自分たちの同胞を人間の盾として使い」人道に対する罪を犯しているのだと非難した。
エルドアン首相の発言に反発し、イスラエルは駐トルコの外交官を呼び戻している。

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1日半の通信遮断
イスラエルによって27日から遮断されていたガザ地区の通信は、29日午前に徐々に復旧し始めた。パレスチナの通信サービス事業者、パルテルはソーシャルメディアで、「現在の侵攻によって10月27日金曜日に途絶した通信サービス(有線、モバイル、インターネット)は少しずつ復旧している」と明らかにした。
イスラエル南部で取材するBBCのアリス・カディー記者によると、27日夜に送信した通信アプリのワッツアップのメッセージに、29日になってようやく「既読」マークが着くようになった。インターネット監視団体ネットブロックスは、通信復旧を示すデータをソーシャルメディアに投稿した。
イスラエル軍は27日にガザ地区の通信を遮断した後、同日夜から28日にかけて主にガザ地区北部に戦闘機約100機を展開し、激しい空爆を繰り広げた。この間、通信遮断のため、同じガザ地区内にいても離れた場所にいる家族や友人の安否が確認できないほか、ガザの外から地区内の様子が把握しづらい状況が続いた。
<解説> ハマス打倒と人質帰還、矛盾しないとネタニヤフ氏――ポール・アダムスBBC外交担当編集委員(エルサレム)
人質の解放を確保するため、ガザ地区攻撃を停止する用意があるとイスラエル首相が提案するなどと期待した人は、がっかりしたはずだ。
ネタニヤフ首相は現在の戦いを、限りなく広い文脈に位置付けて語った。つまり、3000年前から続くユダヤ人の生存をかけた戦いの一環なのだと。
イスラエルは勝利しなくてはならない――。首相はこう断言した。ハマス打倒が一番の目的だと。人質の解放はそれに続く目標だった。
人質の家族代表と会談した直後の会見だった。家族の不安はきわめて深刻だ。27日から激しさを増したイスラエル軍の作戦行動は、大切な人たちの死を意味したりしないか、家族は非常に心配している。
人質の家族と会って話して、本当に胸が痛んだと首相は述べた。しかし、ハマス打倒と人質の帰還実現は、目標として決して「矛盾しない」とも話した。
会見に同席したガラント国防相の発言が、イスラエル政府の作戦をわかりやすく示す内容だった。
「(ハマスを)たたけばたたくほど、向こうは何らかの合意を受け入れようとするだろう。それはわかっている。そうすれば、愛する大切な人質たちを、帰国させられるようになる」と、国防相は述べた。












