トランプ前大統領、出頭・初出廷し無罪主張 罪状34件

罪状認否のため初出廷したトランプ前大統領(4日午後、ニューヨーク刑事裁判所)

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画像説明, 罪状認否のため初出廷したトランプ前大統領と弁護団(4日午後、ニューヨーク刑事裁判所)

アメリカ・ニューヨーク州の大陪審に起訴されたドナルド・トランプ前大統領(76)が4日午後1時24分(日本時間5日午前2時24分)、ニューヨークのマンハッタン地区検察に出頭した。そのまま逮捕され、初出廷し、34件の事業記録改ざん罪について無罪を主張した。ニューヨーク州の大陪審は3月末、2016年大統領選の直前に、過去の性交渉について元ポルノ女優に口止め料を支払ったとされる疑惑に絡んで、前大統領を起訴していた

トランプ前大統領は4日午後1時過ぎ、ニューヨーク市中心部のトランプ・タワーを出発した。ニューヨーク市警のパトカーが先導する車列で市内南部のマンハッタン刑事裁判所へ向かい、午後1時24分に裁判所建物内にある地区検察事務所に入った。

午後2時半前に罪状認否のため、法廷に入った。手錠はかけられていなかった。報道陣の質問には答えなかった。罪状認否で34件の事業記録の改ざん罪について無罪を主張した。

前大統領は約1時間後に退廷し、裁判所を後にした。保釈保証金を必要としない自己誓約に基づき釈放されたもよう。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ニューヨーク州では2020年の法改正で、軽罪や暴力性のない重罪について釈放に保釈保証金を不要とした。

前大統領は、退廷時にも記者団の問いかけに答えなかった。フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴに戻り、夜に演説する予定となっている。

次の対面審理は12月4日に設定された。

ニューヨーク州の法律に従えば、ディスカバリー(証拠開示、それぞれの側が自身の主張を示すもの)の提出期限は検察側が5月9日、弁護側は6月8日になる。

トランプ氏側の申し立て期限は8月8日。同氏の弁護士ジョー・タコピナ氏は、この訴訟の全面的な取り下げを求める申し立てをするつもりだとしている。

検察側は9月19日までに申し立てに応じることになる。

罪状認否後に記者会見し、起訴内容を説明するブラッグ検事(4日、ニューヨーク)

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画像説明, 罪状認否後に記者会見し、起訴内容を説明するブラッグ検事(4日、ニューヨーク)

マンハッタン地区検察のアルヴィン・ブラッグ検事は罪状認否後に記者会見し、前大統領が元ポルノ女優や「プレイボーイ」誌モデルとの性交渉や不倫関係を隠して選挙で自分を有利にするため、2016年大統領選の直前に当時の弁護士に口止め料を払わせたと指摘。その中でも、元ポルノ女優への支払いについて前大統領が事業記録で虚偽発言を34件(小切手や請求書、総勘定元帳の虚偽記載)繰り返していたとして、それが起訴理由だと説明した。弁護士への払い戻しを前大統領が「弁護士費用として」と記載したことは、「全く事実と異なる」と検事は述べた。

前任者の検事が立件を見送った罪状で今回起訴したことについては、新しい証拠が得られたためと説明した。

マンハッタン地区検察はこの日の罪状認否の後、訴状およびおよび事実記載書を発表した。それによるとブラッグ検事は「ドナルド・J・トランプがニューヨークにおける事業記録を繰り返し、不正に改ざんした」と追及。「欺く意図および別の犯罪を行う意図をもって、犯罪を助け犯罪の依頼を隠す目的で、企業の事業記録に虚偽の記載をした」としている。

その改ざん行為は「2016年大統領選挙の最中に、自分に不利な情報を有権者から隠した犯罪を隠蔽(いんぺい)するため」のもので、前大統領が「自分にとって否定的な情報を特定し買い上げることで、その公表を封じ、選挙において被告人を有利にし、2016年大統領選挙に影響を与えるため」周囲と共に「画策した」と、検察は主張している。

さらに、「繰り返される金銭と、うそをたどると、ニューヨークの基本的で根本的な商業法を侵害する、パターンが明らかになった」として、「我々はニューヨークの事業が犯罪行動を隠すために事業記録を粉飾することを認めるわけにはいかない」と述べている。

ニューヨーク州で事業記録の改ざんは通常は軽罪の扱いだが、別の犯罪の隠蔽(いんぺい)を目的としたことから重罪の扱いにしたと検察は説明している。個々の罪状はニューヨーク州の重罪で最も量刑が少ないもので、1件につき最高4年の禁錮刑が伴う。

罪状認否のため法廷に向かうトランプ前大統領(4日午後、ニューヨーク刑事裁判所)

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裁判を担当するホアン・マーシャン判事は、前大統領に裁判について口外を禁止する箝口令(かんこうれい)を命じなかったものの、審理を妨害するような言動があった場合は退廷を命じて審理を続ける可能性があると説明した。トランプ前大統領は出廷に先立ち、ソーシャルメディアなどでブラッグ検事やマーシャン判事を繰り返し攻撃していた。

閉廷後に弁護団は記者団に対して、「政治的な起訴で、こんなことがアメリカで起きるとは残念だ」、「これがトランプ氏に対するものでなければ、そもそも立件などされていない根拠薄弱な起訴だ」と批判し、「争うつもりだ」と述べた。

同じ共和党ながらトランプ氏をかねて強く批判してきたミット・ロムニー上院議員(ユタ州)は、起訴内容について批判する声明を発表した

2012年大統領選の共和党候補でもあったロムニー氏は、「トランプ大統領はその人柄と行動から、大統領の職に不適格だと私は考えている。それでもなお、ニューヨークの検察官は政治的な目的にかなうよう、刑事上の重罪の要件を拡大解釈したと思う。検察官が無理をしすぎたことで、政敵を犯罪者にしようとする危険な前例を作ってしまうし、この国の司法制度に対する国民の信用を傷つける」と批判した。

口止め料疑惑とは

元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(本名ステファニー・グレゴリー・クリフォード)は、2006年にトランプ氏と性的関係をもち、2016年米大統領選の直前に13万ドル(現在の為替レートで約1700万円)を口止め料としてトランプ氏の弁護士から支払われたと、2018年に複数の米メディアに明らかにした

トランプ氏は2018年5月、自分の顧問弁護士がダニエルズ氏に払った口止め料を返済したと認める発言をしている。ダニエルズ氏との性的関係は否定している。

口止め料の支払いを担当したとされるマイケル・コーエン弁護士は2018年12月、選挙資金法違反を含む複数の罪状を認めて有罪となり、禁錮3年の実刑判決を受けた(すでに刑期終了)。

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「逮捕されるなんて」

前大統領は出頭から間もなく、通常の刑事被告人と同様に指紋を採取され、黙秘権などについて告げられる「ミランダ警告」を受けたものとみられる。大統領経験者のため、シークレットサービスが警護を続けた。

出頭に先立ちトランプ氏は4日朝、「逮捕前の最後のメール」だと支持者のメーリングリストに送信。自ら運営するソーシャルメディアでは、共和党支持者の少ないマンハッタンで裁判が行われるのは「不公平」だとしたほか、裁判を担当するマーシャン判事を批判し、「いかさま裁判」だと大文字で非難した。移動中には「逮捕されるなんて、現実のこととは思えない。アメリカでこんなことが起きるなんて信じられない。MAGA!」と投稿していた。

マンハッタン地区検察事務所前に到着したトランプ氏(4日午後、ニューヨーク)

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ニューヨーク市警のパトカー(写真左の白い車両)の先導を受けて、マンハッタン南部へ向かうトランプ氏の車列

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トランプ氏は3日、自宅のあるフロリダ州からマンハッタンのトランプ・タワーに到着した。トランプ氏はニューヨーク市クイーンズ地区出身で、父親とともにニューヨークを拠点に不動産帝国を築いた。

昨年12月、「トランプ・オーガナイゼーション」の子会社2社が脱税などの罪で起訴された事件で、ニューヨーク州裁判所の陪審は全ての罪で有罪とする評決を下した。立件したのはブラッグ検事とそのチーム。審理を担当した裁判官は、今回のトランプ氏に対する裁判と同様、マーシャン判事だった。「トランプ・オーガナイゼーション」に対する裁判でトランプ氏自身は起訴されなかったものの、同社で長年財務トップを務めたアレン・ワイセルバーグ被告は有罪となり、禁錮5カ月の刑で現在服役中。

トランプ氏は2024年大統領選への出馬を表明している。起訴されたことは、これに影響しない。仮に今後、有罪となって服役したとしても、大統領選への立候補を禁止する規定は合衆国憲法にない。

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トランプ氏は、他のいくつかの事件でも捜査対象となっている。2021年1月の連邦議会襲撃事件での役割、2020年大統領選でジョージア州での敗北を覆そうとした取り組み、退任後の機密文書の取り扱いなどが含まれる。1990年代の強姦事件についても提訴されている。