ベラルーシでの強制着陸、「パイロットに選択肢なかった」 ライアンエアーCEOが説明

Belarusian security officials with with a sniffer dog checking the luggage of passengers in front of the diverted Ryanair flight at Minsk airport. Photo: 23 May 2021

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画像説明, ギリシャからリトアニアに向かっていたライアンエアー4987便は、ベラルーシで強制着陸させられた

アイルランドの格安航空ライアンエアーは15日、同社旅客機が5月にベラルーシで強制着陸させられ、反政府ジャーナリストのロマン・プロタセヴィッチ氏(26)の拘束につながった件について、運航を続ければ爆弾が爆発するとパイロットが当局から警告を受け、選択肢がなかったことを明らかにした。

ライアンエアーのマイケル・オレアリー最高経営責任者(CEO)は15日、このパイロットは同社に確認を取ろうとしたものの、ベラルーシ当局から同社に連絡がつかないと偽の説明を聞かされていたと語った。

また、この件は国際的な航空ルールを「意図的に破ったものだ」と述べた。

ベラルーシ当局は5月23日、機内に爆弾が仕掛けられているという情報を得たとして、ギリシャからリトアニアに向かっていたライアンエアー4987便が領空内に入った後にミグ戦闘機を発進させ、ミンスク空港に強制着陸させた。機内の捜索では爆弾は見つからなかったが、プロタセヴィッチ氏と交際相手のロシア人のソフィア・サペガ氏(23)はその場で逮捕された。

ベラルーシ側は、着陸を強制したことを否定。14日には同国側の見解を説明する記者会見を開き、プロタセヴィッチ氏を同席させた。

リトアニアへ向かっていた旅客機をベラルーシが自国内で強制着陸させたことに、欧米諸国は激怒。ベラルーシの旅客機の乗り入れを禁止し、航空各社にベラルーシ上空の飛行を避けるよう呼びかけた。

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オレアリーCEOはこの日、イギリス議会の委員会に出席し、4987便の出来事について詳細に証言した。

同氏によると、ミンスクの航空管制局は4987便のパイロットに対し、「リトアニア領空に入ったりヴィリニュス空港に着陸しようとしたりすれば(中略)機内の爆弾が爆発するという確かな脅迫を受け取っている」と述べた。

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画像説明, ギリシャのアテネ(Athens)からリトアニアのヴィリニュス(Vilnius)に向けて飛行中だった旅客機は、ベラルーシ上空で行き先を変更し(Plane diverted)ミンスクの空港(Minsk airport)に着陸した(出典:フライトレーダー24)
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パイロットは「繰り返し」ライアンエアーの運行管理センターと連絡したいと述べたものの、「ミンスク側は、ライアンエアーのポーランド支社が電話に出ないと言い訳をした」という。

オレアリー氏はまた、この周辺で運航する飛行機が航路を変える場合は通常、ポーランドかバルト三国のいずれかに着陸するが、4987便のパイロットはミンスクしか選択肢を与えられなかったと語った。

パイロットが危険の度合いを聞いたところ、最高レベルだと回答が来たため、「パイロットには他の選択肢がなかった」という。

「同機はミンスク航空管制局を使った偽の情報で着陸させられた。また、乗客2人が意思に反して飛行機から降ろされ、拘束されたことは明白なようだ」

A woman holds a portrait of opposition journalist Roman Protasevich and his girlfriend Sofia Sapega during a protest of solidarity with Roman Protasevic at the Belarusian embassy in Riga, Latvia, 25 May 2021.

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画像説明, ロマン・プロタセヴィッチ氏とソフィア・サペガ氏の解放を求めるデモ参加者が描いた2人の似顔絵

また強制着陸後、4987便の乗員は自主的にミンスクに着陸したとカメラの前で証言するよう圧力を掛けられたが、拒否したと述べた。

同機が再び離陸した際には、5人の乗客がいなくなっていた。プロタセヴィッチ氏とサペガ氏以外の「未特定の」3人について、オレアリー氏は「KGB(国家保安委員会)のような」情報員だったと理解していると述べた。

この3人はベラルーシのテレビの取材に応じ、もともとベラルーシに向かう予定だったのでリトアニアには行かなかったと話している。このうち1人はギリシャ国籍だった。

ベラルーシ運輸省が発表した未検証の録音記録では、管制職員がパイロットに「ヴィリニュス上空で爆発する爆弾が機内に仕掛けられている」と伝えている。

動画説明, ベラルーシで拘束されたジャーナリスト 同僚を職場で取材

ベラルーシ空軍トップのイーゴリ・ゴルブ少将は14日の記者会見で、「ライアンエアー機の飛行を制止していないし、国境から強制的に航路を変更させたこともなく、着陸を強制したこともない」と語った。

この記者会見にはプロタセヴィッチ氏も参加していた。会見冒頭まで現場にいたBBC記者は、プロタセヴィッチ氏が明らかに本人の意思に反して出席させられていたと伝えている。

プロタセヴィッチ氏は今月3日にベラルーシの国営テレビに出演し、涙ながらにアレクサンドル・ルカシェンコ大統領を称賛し、自分はかつて政権を倒そうとしていたと認めた。映像では、プロタェヴィッチ氏の手首には圧迫の痕跡が見えた。人権団体や野党活動家たちは、同氏が拷問を受けたに違いないと批判している。

プロタセヴィッチ氏は昨年まで、反政府メディア「ネフタ」のテレグラム・チャンネルの編集長を務めていた。母国ベラルーシを出てリトアニア在住で、ベラルーシではテロリストに指定されている。逮捕前にプロタセヴィッチ氏は、逮捕されれば死刑になるかもしれないと危機感を示していた。

ベラルーシでは昨年8月の大統領選後、在任27年のルカシェンコ氏が不正選挙で6選したと反発する市民の抗議デモが相次いだ。プロタセヴィッチ氏がかかわる「ネフタ」のチャンネルは、抗議の中心的役割を果たしていた。ルカシェンコ氏は抗議を徹底的に取り締まり、9月には就任式を強行した。野党幹部や反政府活動家の多くは、亡命を余儀なくされている。