ベラルーシ大統領、旅客機緊急着陸は「国の安全のため」 欧米に反発

画像提供, EPA
ベラルーシが同国領空を飛行中の国際線旅客機を自国に緊急着陸させ、 乗っていた反体制派ジャーナリストらを拘束した問題で、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は26日に議会で演説し、ベラルーシに批判的な欧米諸国が同国を「抑圧」し、「ハイブリッド戦争」を仕掛けていると述べた。ルカシェンコ氏がこの件について公で発言したのは初めて。
ギリシャからリトアニアに向かっていたライアンエアー4987便は23日、ベラルーシの首都ミンスクの空港に緊急着陸させられた。空港では、乗客でジャーナリストのロマン・プロタセヴィッチ氏(26)と、交際相手のロシア人、ソフィア・サペガ氏(23)が、ベラルーシの警察に拘束された。
旅客機の緊急着陸をめぐっては、欧州連合(EU)が24日、ベラルーシ上空の飛行禁止と、同国に対するさらなる経済制裁を科す方針で合意した。
ルカシェンコ氏は議会で、常識が放棄され、欧米諸国が「多くのレッドライン(越えてはならない一線)」を越えたと述べた。
また、国民を守るためだったとして旅客機の強制着陸の正当性を主張した。
<関連記事>
拘束されたプロタセヴィッチ氏は、昨年8月のベラルーシ大統領選と、その後の抗議デモに対する当局の弾圧に関する報道をめぐって、犯罪行為に及んだとされている。同氏は自らがテロリストのリストに加えられており、死刑に処せられる恐れがあると述べていた。
ベラルーシはヨーロッパで唯一、死刑を維持している。
プロタセヴィッチ氏とサペガ氏は現在、刑事責任を問われている。
当局が公開した映像の中で、2人は当局から訴追された罪状を認めるような発言をしている。しかし、圧力がかかった状態でそうした話をした可能性が高い。
ルカシェンコ氏の主張
欧州各国の指導者は、ベラルーシが旅客機をハイジャックしたと非難しているが、ルカシェンコ氏は合法的に飛行機の航路変更を命じたと主張している。
ベラルーシはパレスチナのイスラム組織ハマスから爆弾に関する脅迫を受けたため、旅客機を緊急誘導したとしている。しかし、ハマス側は関与を否定している。また、ルカシェンコ氏は情報の発信元はスイスだったと述べたが、スイス当局はこの件について一切関知していないとしている。
ルカシェンコ氏は爆弾の脅威は実際にあったと強調。原子力発電所近くで飛行機の航路を変更させたとした。
「私は市民を守らなければならなかった。国の安全を考えていた」とルカシェンコ氏は述べた。また、旅客機を強制的に着陸させるために戦闘機が派遣されたとの報道は「真っ赤なうそ」だとした。

ルカシェンコ氏は国際社会が同国に干渉していると非難。「これはもはや情報戦争ではなく、現代のハイブリッド戦争だ」としたうえで、「これが本当の戦争にならないよう、我々はあらゆる手だてを尽くさなければならない」と述べた。
また、ベラルーシに対するいかなる制裁にも厳しく対応すると宣言。欧米諸国はベラルーシの同盟国であるロシアへのアクセスを得るために、ベラルーシを「実験場」として利用していると主張した。
「新たな弱みを見つけようとしている。これは我々だけに向けられたものではない。東(ロシア)へ前進する前に、我々を訓練場のように使っている」
ロシアは今回の一件について、ベラルーシを擁護している。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は記者団に対し、「ロシア政府が、ベラルーシの指導者の発言を信用しない理由はない」と述べた。
「空の海賊行為」
EU各国の指導者はすでに対ベラルーシ制裁を強化しており、EU加盟27カ国とイギリスはベラルーシの航空会社に対し、自国の領空を飛行することを禁止している。
一方、ベラルーシ上空の飛行を停止している航空会社は次の通り。
- エールフランス
- KLMオランダ航空
- フィンエアー
- シンガポール航空
- エア・バルティック
- スカンジナビア航空
航空会社は航行ルートにかかっている国に対し領空通過料を支払うため、こうした航空会社の措置はベラルーシの歳入に直接的な影響を及ぼすこととなる。

画像提供, Reuters
こうした中、ベラルーシは首都ミンスクからバルセロナに向かっていたベラルーシの旅客機が、フランス領空の通過を拒否され引き返したことを受け、フランス当局が「空の海賊行為」を行ったと非難した。
フランスは、エストニアやアイルランド、ノルウェー、イギリス、アメリカと共に、国連安全保障理事会の共同声明に署名し、ベラルーシによる「国際民間航空の安全と欧州の安全に対する露骨な攻撃」を厳しく批判している。
「この出来事は、ベラルーシ当局がすべての反対派の声を封じ込めようとする新たな露骨な試みであると、我々は全面的に非難する」
フランスなどは国連の国際民間航空機関(ICAO)による緊急調査を求めている。これには安保理事会の承認が必要だが、拒否権を持つ常任理事国にはベラルーシの同盟国のロシアも含まれる。
アメリカは「恣意(しい)的な法執行と拘束のリスク」があるとして、ベラルーシに対する渡航警戒レベルを4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げた。









