ベラルーシで拘束のジャーナリスト、映像が浮上 父親は拷問を懸念

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ベラルーシが国際線の旅客機を自国に緊急着陸させ、搭乗していた反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセヴィッチ氏(26)を拘束した問題で、同氏の映像が24日、浮上した。同氏の父親は、同氏が拷問を受ける恐れがあるとBBCに話した。また、同氏の交際相手も拘束されていたことがわかった。
プロタセヴィッチ氏は23日、ギリシャからリトアニアに向かう、欧州の航空会社ライアンエアー4987便に乗っていた。同便は、爆弾が仕掛けられている恐れがあるとするベラルーシ当局の指示で、同日午後1時過ぎに同国の首都ミンスクの空港に緊急着陸した。
プロタセヴィッチ氏は空港で、交際相手のソフィア・サペガ氏(23)と共にベラルーシの警察に拘束された。同便は再び他の乗客約120人を乗せて飛び立ち、同日夜、目的地のリトアニアの首都ヴィリニュスに到着した。
欧米各国は、同氏の拘束を目的に同便を「ハイジャック」したとして、ベラルーシを非難している。

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ハマスから脅迫受けたと説明
一方、ベラルーシは、パレスチナのイスラム組織ハマスから爆弾に関する脅迫を受けたため、同便を緊急誘導したと説明した。
運輸当局の幹部は記者団に対し、ハマスから届いたとする文書を読み上げた。文書には「私たちの要求に応じなければ、爆弾がヴィリニュス上空で爆発する」と書いてあったとした。
これに対し、ハマスは関与を否定した。ハマスはこれまで、イスラエルやパレスチナ自治区の外で行動を起こしたことはない。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ベラルーシの主張を「まったく信用できない」とした。
映像が浮上
24日には、プロタセヴィッチ氏を脅して撮影したとみられる映像が浮上した。その中で同氏は、体調は良好だと述べ、ベラルーシ当局から訴追された犯罪について自白したとみられる発言をした。
だが、ベラルーシ野党勢力の主要指導者らは、プロタセヴィッチ氏は圧力をかけられて不法行為を認めたと主張した。
同氏の父ディミトリ・プロタセヴィッチ氏は24日、息子がどのような扱いを受けているのか「とても心配だ」とBBCに話した。
「私たちは、彼が何とか対処することを願っている。考えたくもないが、彼が殴られたり拷問されたりしている可能性がある。そのことをとても心配している」
「私たちは本当にショックを受け、動転している(中略)21世紀にヨーロッパの真ん中で、こんなことが起きてはならない」
「欧州連合(EU)など国際社会が(ベラルーシ)当局にかつてないほどの圧力をかけることを願っている。圧力がうまく働き、当局が大きな間違いを犯したと気づくことを願っている」
交際相手の母親
ベラルーシはヨーロッパで唯一、死刑を維持している。今回の旅客機に同乗していた乗客は、プロタセヴィッチ氏が自分は死刑になると言っていたと話した。
一方、交際相手のサペガ氏の母親は、娘がミンスクの刑務所に移送されたとBBCに話した。また、メッセージアプリのワッツアップに最後に残した言葉が「お母さん」だったと述べた。
ベラルーシ当局は、サペガ氏に対する容疑を明らかにしていない。
ライアンエアー4987便に乗っていた乗客のうち、プロタセヴィッチ氏とサペガ氏以外にも3人が目的地に到着しなかった。同航空会社のマイケル・オリアリー最高経営責任者は、ベラルーシの情報組織関係者がミンスクで降りたとの見方を示した。ただ、これが事実だとは証明されていない。

EUは追加制裁
プロタセヴィッチ氏の映像が公表されてまもなく、EUはベラルーシへの制裁追加に合意したと明らかにした。また、航空各社に対してベラルーシの空域を飛行しないように求めるとともに、同国の航空会社の航空機がEUの領空を飛行することを禁じた。
EUはベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(66)や高官らに対し、野党勢力への弾圧を理由に、今回の問題が起きる前から渡航禁止や資産凍結の制裁を科していた。
ルカシェンコ氏は1994年から大統領を務めている。昨年の大統領選以降は、政府に批判的な意見に圧力をかけている。多くの反体制派の人々が拘束されており、大統領選で対立候補となったスベトラーナ・チハノフスカヤ氏のように国外に逃れている人もいる。
プロタセヴィッチ氏はベラルーシのメディア「ネフタ」の編集長を務めた。同メディアはアプリ「テレグラム」を使って、ツイッターやユーチューブで視聴できる番組を運営している。

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プロタセヴィッチ氏は2019年にベラルーシを出て、リトアニアで生活している。昨年の大統領選についてはリトアニアから報じた。その後にベラルーシで、テロリズム行為と、暴動を扇動したとして起訴された。
「ネフタ」は、ルカシェンコ氏が不正によって当選を果たしたと広く認識されている昨年の大統領選で、野党勢力にとって重要な役割を果たした。選挙後に政府が報道規制を実施する中、その重要性はいっそう増している。
プロタセヴィッチ氏は現在、「テレグラム」の別の番組「ベラモヴァ」で働いている。ブロガーのイーゴリ・ロシク氏が昨年6月にベラルーシ当局に拘束された後、同氏に代わって「ベラモヴァ」に記事を執筆してきた。
乗客が恐怖語る
ライアンエアー4987便に乗っていた客たちは、機内の様子を語った。
パイロットからは緊急着陸についてアナウンスがあった。ただ、詳細の説明はなかったという。
同便は戦闘機1機によって、ミンスクの空港へと誘導された。
その直前までは、機内は平穏で、変わったことは何もなかったように思えたと乗客らは話した。しかし状況は一変したという。

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乗客の女性はABCニュースに、「機内の全員がパニック状態になった。墜落すると思ったからだ」と話した。
「急激な降下だった。高度の変化はとても急だった。ひどく乱暴だった。飛行機でこんな感じを覚えたことはない。みんなショック状態だった」
リトアニア人男性の乗客は、パイロットがミンスクへの緊急着陸のアナウンスをした直後、プロタセヴィッチ氏は立ち上がり、頭上の手荷物入れの扉を開けたとロイター通信に話した。
「彼は手荷物を取り、中の物を分けようとしていた。コンピューターをガールフレンドに渡した」
「彼は間違いを犯したと思う。多くの人がいたのだから、ガールフレンドではなく私や他の乗客に渡すことができた。ガールフレンドも拘束されたと思う」
この男性はまた、ミンスクの空港では治安部隊が犬を使って、プロタセヴィッチ氏の荷物を探すのを見たと話した。
「死刑が待っている」
別の乗客は、同氏を拘束する際、当局者らは暴力を振るっていたと述べた。また、同氏について「とても怖がっていた。彼と目が合ったが、すごく悲しそうだった」と話した。
リトアニアのメディア「デルフィ」は、プロタセヴィッチ氏は比較的落ち着いていたが、旅客機から出る時には震えていたとする乗客の話を伝えた。この乗客は同氏と話をしたという。
「何が起きているのかと彼に尋ねた(中略)彼は『死刑が待っている』と話した」
他の乗客らによると、プロタセヴィッチ氏は当局者に対してすぐに名乗り出て、当局者は同氏のパスポートを没収したように見えたという。









