【解説】 スーナク氏はどんな人なのか イギリスの次期首相

Rishi Sunak

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画像説明, イギリスのリシ・スーナク次期首相

イギリスの与党・保守党の新たな党首に24日、リシ・スーナク元財務相(42)が決まった。辞任を表明しているリズ・トラス首相の後任となる。スーナク氏はどんな人物なのか。

スーナク氏は1980年、英サウサンプトンに生まれた。父親は総合医、母親は薬局経営者だった。

両親はともにインド系で、東アフリカからイギリスに移り住んだ。スーナク氏は、南アジア系イギリス人初の首相となる。宗教はヒンドゥー教を信じている。

子どものころは、名門私立学校ウィンチェスター・コレッジに通い、夏休みにはサウサンプトンのカレー店でウェイターとして働いた。その後、オックスフォード大学に進み、政界志望の学生が多く学ぶ「哲学、政治、経済(PPE)」の学部コースを専攻した。

米スタンフォード大学で経営学修士(MBA)取得に向けて学んでいたとき、のちに妻となるアクシャタ・ムルティ氏と出会った。同氏は、インドの大富豪でITサービス大手インフォシスの共同創業者のナラヤナ・ムルティ氏の娘。夫妻には現在、娘が2人いる。

スーナク氏は娘たちについて、前回の党首選でたびたび言及した。BBCのテレビ討論会では、気候変動について語った際、「わが家では2人の若い娘たちがこの問題の専門家で、2人から助言」を受けたと話した。

Rishi and family

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画像説明, スーナク氏と妻、娘たち

政界入りから7年

スーナク氏は2015年の総選挙で、ノース・ヨークシャー州リッチモンド選出の下院議員として初当選を果たした。以来、議席を守り続けている。

テリーザ・メイ政権で下級大臣となり、続くボリス・ジョンソン政権で財務省の首席政務次官に就任。2020年2月には39歳で財務相に抜てきされた。

財務相になってすぐに新型コロナウイルスの大流行が始まり、ロックダウンが実施される中で、雇用維持などの経済支援策を打ち出した。国民の間で人気が急上昇した一方、首相官邸などでパーティーが開かれていた問題ではロックダウンのルールに違反したとされ罰金を科された

当初はジョンソン氏への支持を鮮明にしていたスーナク氏だったが、今年7月になり、経済へのアプローチがジョンソン氏と「根本的に違いすぎる」として、財務相を辞任した。政権が倫理面で深刻な問題を抱えていることも辞任の理由だとし、ジョンソン氏の退陣を促す結果となった。

今回の党首選と同様、ジョンソン氏の辞任に伴う夏の党首選でも、保守党下院議員の支持を最も多く集めたが、一般の保守党員も含めた決選投票では、経済活性化に向けた大規模減税を掲げたトラス氏に敗れた。スーナク氏はこの時、減税の前には財政状態の改善が必要だとし、インフレが抑制されるまでは減税しない方針を強調していた。

財務相在任時には、アメリカのグリーンカード(永住権)を一時保持し、アメリカに永住できる状態だったことが明らかになった。

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政界有数の資産家

スーナク氏は資産家としても注目を集めてきた。

同氏は政界入りする前の2001~2004年、米金融大手ゴールドマン・サックスでアナリストとして勤務。その後、ヘッジファンド2社で共同経営者を務めるなどし、財を成した。ロンドンとヨークシャーに自宅を持っている。

英下院議員の中でも有数の資産家だとみられているが、規模は公表されていない。英紙サンデー・タイムズは、夫妻の資産は約7億3000万ポンド(約1230億円)に上ると推測している。

2020年には、妻ムルティ氏が海外での巨額の収入に対してイギリスで所得税を納めていなかったことが問題視された。それ自体は合法で、スーナク氏は「私をやり込めるために妻を中傷するのは悪質だ」と反発した。ただ、ムルティ氏は今年4月、スーナク氏への政治的圧力を軽減するため、イギリスで納税すると発表した。

野党・労働党は、スーナク氏がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して利益を得た疑いについて追及してきた。英紙インディペンデントは、英領バージン諸島とケイマン諸島のタックスヘイブン信託の2020年の受益者リストに、同氏の名前が出ていると報じた。同氏の広報担当は、この報道を「認識していない」とした。

アイデンティティーは大切

Rishi Sunak preparing for this week's Summer Statement

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画像説明, 財務相時代のスーナク氏

スーナク氏は多くのイギリス人と同様、イギリス以外にルーツを持ち、イギリスに生まれた。このアイデンティティーは自分にとって大切なものだと、スーナク氏は繰り返してきた。

2019年にはBBCに対して、「両親はこの国に移民してきた。この国で生まれた同世代の大勢が、この国以外で生まれ、人生を切り開くためにこの国へ来た両親を持つ」と話し、「文化や習慣的な生い立ちという意味で言うと、自分はヒンドゥー教徒なので週末にはお寺に行くけれど、土曜日には(サウサンプトン・フットボール・クラブの)試合を見に行っていた。両方やるんだ、両方」と説明していた。

同じインタビューで、自分は子供のころそれほど人種差別を受けずに済んだのは幸運だったとしながら、今も忘れられない出来事もあったと話した。

「弟や妹たちと出かけていて、たぶんかなり小さかったんだと思うし、自分は10代半ばで、ファストフードの店にみんなでいて、僕は弟や妹の世話をしていた。近くに座っていた人たちに、あんな経験は初めてだったが、ともかく不愉快なことを言われた。『P』で始まる言葉とか」(編集注:イギリスでは南アジア系への侮蔑語として「パキスタン」からくる「パキ」という人種差別表現が一部で使われるものの、使用は批判される)

「ぐさっときた。今でも覚えている。記憶に刻まれてしまった。侮辱というのは、いろいろな形で受けることがある」とスーナク氏は述べつつ、「今のイギリスであんなことは考えられない」とも話していた。

本当になりたかったのは

スーナク氏は、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をめぐる国民投票では離脱を支持。そうすることで同国は「より自由に、より公正に、より繁栄した状態に」なると信じていると、英紙ヨークシャー・ポストに話していた。

また、移民受け入れのルールを変えることも、離脱に賛成票を投じた重要な理由だと説明。「適切な移民制度が私たちの国に利益をもたらすと信じている。しかし、国境の管理は必要だ」と述べていた。

港や空港の近くに税金を払わずに貨物の輸出入ができる「自由港」を作り、貿易を促進させるのは、スーナク氏が長年温めてきたアイデアの1つ。

メイ政権の閣外相だったスーナク氏は、メイ首相(当時)が欧州連合(EU)と交渉した離脱協定が2019年に入り3回、英下院の採決で否決された際、3回とも協定に賛成票を入れていた。

動画説明, 「私たちにはいま安定と団結が必要だ」 スーナク氏が次期英首相に
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保守党の新党首に決まった24日には、イギリスは「まぎれもなく経済的に甚大な課題に直面している」と指摘。「私たちはいま安定と団結が必要だ」、「この党とこの国をひとつにまとめることを、自分の最優先課題にする」と述べた。

スーナク氏は2016年、大人になったらなりたかったのは映画「スター・ウォーズ」のジェダイの騎士だったと、小学生たちに話した。スター・ウォーズで最も好きな作品は「帝国の逆襲」だという。

Sajid Javid and Rishi Sunak

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画像説明, リシ・スーナク氏は友人のサジド・ジャヴィド元保健相とともに、「スター・ウォーズ」ファンで知られる

(英語記事 A quick guide to Rishi Sunak