【解説】 上海のコロナ対策 ソフト路線をなぜ転換したのか
ワンユアン・ソン、BBCニュース

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約2500万人が暮らす中国・上海で、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染者急増を受けて実施されている厳しいロックダウンが2週目に入っている。
上海がこのような厳しい制限措置を実施したのは初めてだ。先月までは、中国の他都市に比べて緩やかな対策を取っていた。
上海で何が起きているのか
市民らは自宅にとどまるよう指示されている。多くの人は食料や水を注文して買っており、野菜、肉、卵は政府の支給が届くのを待っている。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、食料が不足し医療品の供給も不十分だとして、住民らが怒りの声を上げている様子が映っている。
上海が全市的にロックダウンを実施するのは今回が初めてだ。先月までは、感染者の増加に対し、局地的なロックダウンで対応してきた。
典型的には、市全体ではなく、数百人が暮らすような住宅群を封鎖してきた。この方法は、しばらくは効果的と思われた。
昨年3月に感染者が1800人近くに上った時でさえ、上海は全面ロックダウンには乗り出さなかった。
それに比べ、1300万人近くが暮らす西安は昨年12月、感染者が100人に満たない時点で全市を封鎖した。
河南省汝州市は、感染者がわずか3人確認されたタイミングで、市民110万人超に対して自宅から出ることを禁止した。


上海では今年3月後半、感染者が急増し始めた。同月27日には1日の感染者数が2500人を超えた。
市当局は段階的なロックダウンを発表。まず東部で、その数日後に西部で実施するとした。


しかし、感染者は増え続け、市当局は市の半分を通常のままにする計画を断念。4月5日に全市的なロックダウンを開始した。
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のマーティン・ヒバード教授は、上海の以前の対策について、感染力がはるかに強いオミクロン変異株に即したものではなかったと評した。
「症状が出ない感染者が多いこともあり、住宅群の局地的ロックダウンは、社会的交流を十分に制限できないだろう」
なぜ上海だけ違ったのか
上海の対策が国内の他都市と違った主な理由は、中国経済にとって上海が重要だからだ。
上海は中国の国内総生産(GDP)の3%超を生み出している。2018年以降は、中国の全貿易の1割を占めている。
現地メディアの財新によると、上海の空港はパンデミック初期に、需要が高まった防護具や医薬品の半分近くの受け入れ拠点となってきた。
上海浦東国際空港の国際貨物は2020年、340万トンに上った。北京、広州、深圳の空港を合わせたより100万トン多い。
香港中文大学の研究によると、北京や上海のような巨大都市が2週間ロックダウンされると、中国の月間GDPが2%失われる可能性があるという。
中国の昨年の月間GDPは、平均9兆5000億元(約187兆円)だった。つまり、ロックダウンが続く限り、1週間ごとに約1900億元ずつ失われていくことになる。
現在の対策で十分なのか
前出のヒバード教授は、上海で取られている厳しい措置は、オミクロンのように感染力が高い変異株の流行対策としては不十分かもしれないとみている。
同教授は、新型ウイルスの影響を軽減するには、すべての人々、「特に高リスクの人々へのワクチン接種」の奨励を最優先すべきだと話す。
中国はこれまで、新型ウイルスのワクチンを110億回以上接種しており、全人口の86%超が接種済みとなっている。
だが、年齢別で最もハイリスクの80歳以上の人々は、他の年齢層より接種済みの割合がかなり低いままになっている。


中国国家衛生健康委員会は現在、高齢者へのワクチン接種を、地方当局の優先課題にすべきだとしている。また、mRNAを利用した2種類のCOVID-19ワクチンの臨床試験も承認した。
中国はこれまで、国産ワクチンに大きく頼ってきた。ただ、オミクロン変異株には不十分だと判明している。
同委員会は、「現在のワクチンはオミクロン対策としてまだ有効だ」としているが、これに中国製ワクチンが含まれるのかは明確にしていない。
いつ緩和されるのか
上海では現在、市内を3つにグループ分けし、制限の一部を和らげている。「ロックダウン区域」、「コントロール区域」、「予防区域」の3種だ。
新たな感染者が1週間確認されなかった地域は「コントロール」になる。新規感染者ゼロが2週間続けば、「予防」に警戒度が下げられる。
感染者が少ない、あるいはゼロになった区域の人々は、住宅群内での移動が許可されるなど、より自由になる。
追加取材:ティム・ボウラー、グラフィック:ロブ・イングランド、ジャナ・トシンスキー








