上海のロックダウン 「ゼロ・コロナ」政策が中国経済を揺さぶる

モニカ・ミラー、ライオネル・リム、BBCニュース、シンガポール

A man stands behind barriers during lockdown as a measure against the Covid-19 coronavirus in Shanghai.

画像提供, Getty Images

超大型工場を持つテスラから巨大リゾートを展開するディズニーまで、多くの多国籍企業が中国進出の足がかりを上海に築いている。しかし、ふだんは活気あふれるこの金融センターが、新型コロナウイルスの感染者急増で停止状態に陥っている。

人口2600万人超の上海で、当局はわずかに前触れをしたあと、ロックダウンの措置を次々と実施した。規制は先週、2つの地域に分けて始まったが、現在は実質的に全住民に対して外出を禁じている。

今回の隔離措置は、中国・武漢で新型ウイルスの発生が最初に確認された2019年末以降で最大のものだ。

それに伴うロックダウンは、世界第2の経済大国である中国にとって、とりわけ代償の大きなものとなる可能性がある。

上海は金融の中心地であることに加え、半導体や電子機器、自動車製造の拠点にもなっている。同市の港湾は世界で最も交通量が多い。

英誌エコノミストの調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」の徐天辰(シュウ・ティアンチェン)氏は、サプライチェーンの短期的な混乱は、中国経済全体に影響を及ぼすと述べた。

「上海と中国の他地域は相互に関係しているため、影響は波及する。特に長江デルタの製造拠点に影響が及ぶだろう」と、同氏は話した。

地元の話に限っても、グッチやルイ・ヴィトンなどの高級店が並ぶことで知られる上海ではすでに、消費支出が低迷している。

徐氏によると、小売り、ホテル、レストランでビジネス機会が失われれば、上海では年間の国内総生産(GDP)が3.7%縮小する可能性があるという。

GDPは経済が健全かどうかを示す主要指標だ。

中国の成長目標

中国政府は今年のGDPの成長目標を5.5%に設定している。しかし、達成には苦労するだろうとみるアナリストもいる。

先週末、中国の製造業とサービス業が3月に減速していたことがデータで示された。

中国北東部の工業地帯のテクノロジー拠点である深センと吉林も先月、ロックダウンを実施。当局は大規模なウイルス検査を展開し、感染力の強いオミクロン株の感染拡大を抑えようとした。

ナットウェスト・マーケッツの中国エコノミスト、劉培謙(リュウ・ペイキアン)氏は、「購買担当者景気指数(PMI)データは、製造業とサービス業はともに大きな打撃を受けたことを示している。ただ、それには上海のロックダウンの影響は含まれていない。そのためGDPデータの第1~2四半期には、質の面からさらに下降圧力がかかると思う」と話した。

PMIデータは、主要産業の幹部らを対象に、新規受注、生産、雇用などさまざまな要素への期待度を調査し、市場の状況をまとめたもの。

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新型ウイルスの感染者数が増加している状況で、さらなるロックダウンが実施されれば、特に中小企業の経営者にとって、これまで以上に問題が生じる可能性がある。

「感染流行を受けたロックダウンの長期化や、ロックダウンによる不安定な時期の延長で、雇用を維持できるかがますます焦点になっている」と、劉氏は話した。

「サービス業は、深センの3週間のロックダウンや上海の1週間のロックダウンによる短期的な圧力に直面しているだけでなく、現在の新型ウイルス管理政策がもたらす先行きの不確実性から生じる、もっと大きな圧力に直面していると思う」

クローズド・ループ

上海の一部企業がロックダウン中の閉鎖を決めた一方で、金融サービスや自動車製造などの業種では、いわゆる「クローズド・ループ」システムを導入している企業もあると、劉氏は話した。

これは、従業員がオフィスや工場で仕事をするだけでなく、生活もすることを意味する。

「冬季オリンピックで起きたことを考えてみてほしい。あれもクローズド・ループ型の管理だった。バブルの中で物事が正常に機能することを確認し、人々を外部や中国の他地域から隔離するものだった」

しかし前出の徐氏は、この戦略を長期的に維持することはできないと指摘する。

「ロックダウンが長引き、サプライチェーンの輸送に支障が出ると、企業が物資を調達できなくなる懸念がある」

「道路での輸送に影響が出ている。上海が現在の流行を素早く終わらせられないことが、明白なリスクとなっている」

中国は固執するのか

世界の多くの国が国境を開放し、規制を緩和するなか、中国はなおも新型ウイルスに対する厳格なアプローチから脱却しそうにない。

「この政策は(中国の)正しさの政治的根拠となっている。中国の感染者や死者の少なさは、国内メディアでよく他国と比較される。その結果、中国国民の大多数は、経済的コストが増えているにもかかわらず、依然としてゼロ・コロナ政策を支持している」と、徐氏は話した。

一方、劉氏は、中国政府が野心的な成長目標の達成のために経済を支援すると宣言していることから、明るい兆しの可能性はあると考えている。

「政府は財政と金融の両面で、一連の緩和政策を示している」

「それが当面の国内成長の勢いを安定させ、中国のサプライチェーンを円滑にすることと、短期的にはサプライチェーンの世界的な中断を最小限に抑えることを望んでいる」