中国のロックダウン戦略 西安市にみる厄介なコスト

テッサ・ウォン、BBCニュース

Xi'an residents lining up to get Covid tested

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画像説明, 中国・西安市の市民が自宅を出られるのは、新型ウイルスの検査を受ける時だけだ

自宅から出ることを禁じられた住民たちが助けを求めている、あるいは治療を受けに病院に行った人が、門前払いを受けている――。中国・西安市から最近伝わってくる話は、これまで何度も耳にしたものと同じだ。

西安市では過去2週間、全住民1300万人がロックダウンの対象となっている。これまでに1800人を超える新型コロナウイルス感染者が確認されており、感染の流行を抑えるために厳しい対策が取られている。

現地当局は、来月開かれる冬季オリンピックの権威に傷をつけないよう、感染の抑え込みに必死だ。そして、何百万人もが国内を移動する春節を、感染急拡大につながる「スーパースプレッダー・イベント」にしないよう、断固たる決意を固めている。

しかし、西安市の状況からは、強硬なロックダウンと大規模検査の組み合わせという中国の標準的な戦略が、いかに厄介で酷な負担を住民にかけているのかも、明らかになっている。

食料を買うための外出すら禁止する厳しい規制が実施されて以来、不安を覚えた市民たちがソーシャルメディアで、食料の備えが減っていると訴えている。携帯電話と食料を交換して欲しいともちかける人も現れている。

政府職員が支援物資を配っているが、配給はまばらだ。厳格な隔離措置が実施されているため、運転手や配達人が不足していると報じられている。

Xi'an workers distributing food

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画像説明, 西安市で野菜を配って回る労働者

真夜中に自宅から出るよう命じられ、バスで隔離施設に移動させられた人もいる。必要な医療が受けられない人たちがいるとの訴えも浮上している。

市内の高新医院では、厳しい新型ウイルス対策のために治療を拒まれ、心臓まひに見舞われた男性が死亡し、妊娠8カ月の女性が流産したとされている。

この事態を受けて当局は、市内の病院に診察拒否を禁じた。高新医院の院長には停職を命じた。

こうした話をオンラインで読んだ多くの人々は、震えあがってぼうぜんとしている。パンデミック初期に武漢市の市民が味わった大変な苦難との共通点を感じながら、嫌な既視感に襲われる人もいる。

複雑な現実

中国各地で厳格なロックダウンがたびたび実施されるようになって2年がたった。不適切な対応と計画性のなさが今も続いていることを疑問視し、当局は何を学んだのかと批判する声も出ている。

「武漢から何を学んだのかについて、真剣な議論はまったくなかった。中国モデルは成功した、西側民主国家の対策は効果が低い――と、そういう比較した語る文脈しかなかった」。米外交問題評議会のグローバル・ヘルス担当シニアフェロー、ヤンゾン・ファン教授はBBCにそう話した。

中国当局が唯一学習したのは、感染が拡大したら徹底的な「感染者ゼロ」戦略で臨むという、その姿勢だけだろうと同教授は付け加えた。

動画説明, 世界最初のロックダウンから1年 武漢の今をBBCが取材(2021年1月)

中国の政策はトップダウンで決定される。そのため地方当局は、大きな目標を示されると、「強引で画一的な方法で遂行せざるを得ない場合が多い」。西安市で取られている極めて厳しい措置は、まさにその例だ。

そしてこれが、「たとえ感染者の数は少なくても(中略)過剰反応したり、厳しくしすぎる事態」につながっている。

西安市の状況は、中国共産党が前面に打ち出す一枚岩の強さや効率の良さのイメージとは異なり、実際の現場では時折かなりの混乱がみられることも示している。

中国の地方政府は分権化されているため、多くの当局者は「感染者ゼロという非常に高い目標を設定しているものの、中央政府からの支援はごくわずかだ」と、中国政治が専門の香港科技大学のドナルド・ロウ教授は話す。そのため流行の発生時に対応する能力はあまりないという。

Delivery rider on the streets of Xi'an

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画像説明, 配達のバイク運転手や自動車ドライバーが不足していると報じられている

つまり、「地方当局は単独で地域のロックダウンも実施できないのに、その一方で、短時間で100万人以上の住民への食料配給を手配しなくてはならない」と、オーストリア・ウィーン大学のクリスチャン・ゲーベル教授(中国研究)はオンラインの分析で記した

「うまく行けば中央の手柄となり、うまく行かなければ地方当局の責任にされ、お払い箱となる」

実際すでに西安市では党幹部2人が解職され、数十人が処罰されている。

抜け出せる?

だがそれよりも、感染者ゼロ政策の効果が出にくくなっていることの方が、大きな問題だ。

専門家は、新型ウイルスが進化してさらに感染力の高い変異株が出現するにつれ、現在と同レベルの感染抑制を続けようとすれば、一段と厳しい対策を取ることになると警告している。

感染者ゼロ政策はなお広い支持を得ているが、住民の我慢は限界に近づく一方だろう。

例えば西安市では、ソーシャルメディアのハッシュタグを使って住民の気分を盛り上げようとする、国営メディアのプロパガンダに反発が起きている。

中国のソーシャルメディアの微博(ウェイボ)には、西安市民らの新型ウイルスと闘いに関するハッシュタグを下品な言葉で批判するコメントが投稿された。このコメントはすぐに検閲によって削除された。

中国はこれまでのところ、感染者ゼロ政策を緩和する様子は見せていない。世界的パンデミックが終息するのを、甘んじて待っていると思われる。しかし、オミクロン株のような新たな変異株が現れており、近いうち流行が終わることはないだろうと多くの人が考えている。

果たして中国は、ゆくゆくは持続不可能になるかもしれない政策から、素早く抜け出すことができるのだろうか?

米外交問題評議会のファン教授は、政治的に高度に繊細な2つのイベントの間に、その機会があると考えている。来月開催のオリンピックと、今年秋の第20回共産党大会の間だ。その期間に、中国が新型ウイルスとの共生に向けた対策を取ることは可能だとみている。

考えられる1つの方法は、より効果的なワクチンと治療法を見つけ、新型ウイルスを今ほど恐れないよう中国の人々を教育することだ。

もう1つの方法は、いくつかの都市を選び、もっと穏やかな対策を試すことだ。ただ、それすら政治的に困難だろうと、香港科技大学のロウ教授は話す。

「どの都市を選ぶのか? 新型ウイルスは敵だと市民に言ってきたのだから、裏切りと取られるだろう」と教授は言う。そして、主要都市以外では医療システムが貧弱なことや、国産ワクチンの効果に対して、多くはまだ不安を感じていると述べた。

そうした間も、中国の人々は現行措置の影響をまともに受け続けることになる。

中国のメッセージアプリの微信(ウィーチャット)に投稿したエッセイで、西安市のジャーナリスト江雪氏は、市民らがロックダウンで直面している困難を詳しく記し、変革が必要だと切々と訴えた。

このエッセイはその後、削除されたが、江氏はこう書いていた。

「何もかも終わった後に私たちが、何があったのかじっくり振り返らず、血と涙でしぼりとった教訓を吸収せず、さっさと成果ばかりに注目して人を表彰したり歌を歌ったりするなら、大勢の苦しみは無駄だったということになる」