【ルポ】 「50日以内に停戦合意を」、トランプ氏がプーチン氏に通告 ウクライナ国民はあまり期待せず

画像提供, UA:PBC via Getty Images
シャーロット・ギャラガー、BBCニュース記者(キーウ)
ロシアによる侵攻で、ウクライナ国民は精神的にも肉体的にも疲弊している。夜間には空襲警報や爆発音、攻撃用ドローンが発する甲高い音が鳴り響き、眠ることができない。「長い夜だった」という言葉を、キーウではよく耳にする。
こうした中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は14日、ロシアをこう脅した。50日以内にウクライナとの戦争終結の合意が成立しなければ「厳しい制裁を課す(中略)約100%の関税だ」と。これは、ウクライナではあまり好意的には受け止められていない。
ウクライナ有数の政治家でキーウ市長のヴィタリー・クリチコ氏は、「このような時間的猶予をなぜ与えるのか」と、ドイツのテレビ局に述べた。ロシアの攻撃は「さらに激しさを増しており」、50日間でさらに多くの人が殺されるかもしれないというのに、と。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ氏が「最高級の兵器」を北大西洋条約機構(NATO)加盟国を通じてウクライナに送ると発表した後に、トランプ氏と話をしたとソーシャルメディア「X」に投稿トランプ氏に対し、「ウクライナを支援し、殺りくを止めて永続的かつ公正な平和を確立するために協力し続ける意思がある」ことに感謝すると書いた。
トランプ氏は、ロシアの貿易相手国を対象に100%の「2次関税」を課す考えも表明しており、実際に導入されれば、ロシア産原油を輸入する国々も打撃を受けることになる。
しかし、ウクライナの国会議員キラ・ルディク氏は、トランプ氏の発表は「ほろ苦い」ものだったと言う。プーチン氏に、致命的な爆撃を継続し、前線での攻撃を維持する猶予を与えたと議員は述べた。
「これは我々にとってとても厳しい、とても個人的な問題だ。この50日間を生き延びられない人がいるかどうかも、私たちは分からないので」と、ルディク氏はBBCに語った。
国連の人権監視団によると、ウクライナでは先月、ロシアの攻撃で230人以上の民間人が殺害され、多数が負傷した。これは、ロシアによる全面侵攻が始まってからの過去3年間で最多の犠牲者数だ。ロシアが、過去最多のドローンとミサイルによる攻撃を仕掛けた結果だった。
ウクライナに供与される武器には、都市防衛に役立つアメリカの地対空ミサイルシステム「パトリオット」が含まれる。
「ロシアにこの戦争を止めるつもりがあると、それを証明する事実は一つもない。ウクライナは無条件の停戦に応じる用意があり、あらゆる手続きを踏んできたというのに」と、ルディク議員は付け加えた。
クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は15日、トランプ氏の発表は「常に重大」なものだとし、このような決定をウクライナ政府は「和平のシグナルではなく、戦争継続のシグナルと受け止めている」と警告した。
トランプ氏が何か言っても「何も変わらない」
一方でキーウ市内の人たちはどうかというと、トランプ氏の約束を信用する声はほとんど聞こえてこない。
キーウ市民のユリアさんとアリサさんは、トランプ氏とクレムリンの関係が心配だと話す。
「これが、ウクライナにとって真の助けになるとは思わない。(中略)何もかも(トランプ氏)自身のエゴのためだ」と、ユリアさんはBBCに話した。(トランプ氏の大統領任期の)この4年間は、ウクライナにとって非常に厳しいものになると思う」。
「トランプ氏が何かを言っても言わなくても、何も変わらない。この半年で起きたあらゆることが、それを証明している」と、アリサさんは付け加えた。
キーウ市民のニナさんはこの二人に比べると、追加の武器供与によって「戦争終結が早まる」かもしれないと楽観的な見方を示した。
14日に発表された計画では、欧州諸国が、保有しているアメリカ製のパトリオットをウクライナに送る。費用は欧州諸国が負担する計画になっている。
ロシアが北朝鮮や中国といった同盟国から支援を受けていなければ、戦争はもっと早く終わっていたかもしれないとも、ニナさんは話した。
父親がウクライナ軍に所属しているというアルテムさんは、「最善を願っている」と語った。
「みんないろいろ言っているが、どうなるか様子を見てみよう。すべてが私たちの望み通りになることを願っている。私たちは平和になってほしい。ウクライナでの戦争が終わり、兵士がみんな生きて帰ってきてほしい」
キーウ市内の聖ミハイル修道院を囲む壁には、戦死した兵士の写真が並ぶ。中には戦前に撮影された写真もあり、家族やペットと一緒にポーズを取る男性や女性が写っている。
トランプ氏がロシアに対する追加関税をちらつかせている間も、ウクライナでは戦争が続く。そして、これらの写真は、決して故郷に戻ることのない兵士たちがいることをあらためて訴えかけている。











