【解説】 アメリカの関税脅威、ロシアは動揺よりも安心している BBCロシア編集長

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の写真

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画像説明, ロシアのプーチン大統領に対し、トランプ米大統領は、50日以内にウクライナ戦争の終結に合意しなければ、さらなる制裁を科すと脅している

スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長

アメリカのドナルド・トランプ大統領は14日、ホワイトハウスの大統領執務室で、ウクライナへの新たな武器供与を発表した。この支援は、北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国の資金によって賄われるという。トランプ大統領はまた、ロシアの戦費に影響を与える可能性のある新たな関税措置についても言及した。

では、ロシアの株式市場はこの発表を受けてどう動いたか。なんと2.7%上昇した。

ロシア側は、より厳しい制裁が科されると予想していたため、今回の内容がそれより穏やかだったことにほっとしたとみられる。

ロシアの大衆紙「モスコフスキー・コムソモーレツ」は同日付の紙面で、「ロシアとアメリカはウクライナをめぐって新たな対立局面に突入しつつある」と警鐘を鳴らし、「トランプの『月曜のサプライズ』は、我が国にとって好ましいものではない」と報じた。

実際、今回の発表はロシアにとって「好ましいもの」ではなかったが、安堵(あんど)するものではあっただろう。たとえば、ロシアの貿易相手国に対する2次関税が発動されるのは50日後なので、ロシアには対抗措置を講じたり、制裁の実施を遅らせたりする余地が残されている。

それでもなお、トランプ氏の発表は、ロシアに対するより強硬な姿勢を示すものとなった。また、ウラジーミル・プーチン大統領が和平合意に応じないことへのいらだちも反映しているとみられる。

トランプ大統領は、今年1月にホワイトハウスへ復帰した際、ロシアによるウクライナ侵攻の終結を外交政策の最優先課題の一つに掲げていた。

これに対し、ロシアはここ数カ月、「分かった、でも……」という反応を取り続けてきた。

ロシアは今年3月、トランプ大統領が提案した包括的な停戦案を歓迎し、「分かった」と応じた。しかしその一方で、西側諸国によるウクライナへの軍事支援や情報提供の停止、さらにウクライナ軍の動員解除を前提条件として求めた

ロシアは平和を望んでいると主張し続けているが、戦争の「根本原因」が解決されなければならないとしている。ロシア大統領府(クレムリン)はこの「根本原因」について、ウクライナや西側諸国とは大きく異なる見解を持っている。つまり、この戦争はウクライナやNATOといった「集団としての西側」からロシアへの外的脅威によって引き起こされたという主張だ。

しかし、2022年2月に侵攻を開始したのは、ウクライナでもNATOでも西側諸国でもなく、ロシアだ。ロシアは全面的な軍事侵攻を開始し、第2次世界大戦以降で最大規模の地上戦をヨーロッパにもたらした。

迷彩服に迷彩柄の目出し帽、黒いヘルメットをかぶった男性が、戦車から上半身を出し、右腕を戦車の主砲にかけている

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画像説明, ロシア南部クラスノダール地方で行われた射撃訓練で、戦車から外を眺めるロシア兵(2024年12月2日撮影)

「分かった、でも……」というロシアの姿勢は、しばらくの間、アメリカによる追加制裁を回避しつつ、戦争を継続するための時間稼ぎとして機能していた。

トランプ政権は、ロシアとの二国間関係の改善とウクライナ和平交渉の実現を重視し、ロシア政府との対話において「ムチ」よりも「アメ」を優先してきた。

しかし、クレムリンに批判的な声は、「分かった、でも……」という対応は、ロシアが時間を稼ぐための戦術だと警告していた。それでもトランプ大統領は、プーチン大統領を説得し、合意に導けると信じていた。

だが、プーチン氏は急いで合意に至る様子を見せていない。クレムリンは戦場で主導権を握っていると考えている。平和を望んでいると主張しているが、それは自分たちの条件下での話だ。

その条件には、西側諸国によるウクライナへの武器供与の停止が含まれている。しかし、トランプ氏の今回の発表で、それが実現する見込みはないことが明らかとなった。

トランプ氏は、プーチン氏に「不満がある」と述べている。

だが、その失望は一方通行ではない。ロシア側もまた、アメリカ大統領への期待を失いつつある。モスコフスキー・コムソモーレツは、14日の紙面で次のように記している。

「(トランプ氏は)明らかに誇大妄想に取りつかれている。そして、とても大きな口をたたく」