ハマス、人質6人解放 イスラエルはパレスチナ人釈放を延期 ガザ停戦合意

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パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意に基づき、ハマスは22日、人質にしていた男性6人を新たに解放した。停戦合意が1月19日に発効して以来、ハマスが人質を解放するのはこれで7回目。合意の第1段階はこれで終了する。ハマスは20日と21日にかけては、死亡した人質4人と身元不明の女性の遺体を、赤十字国際委員会経由でイスラエルに返還していた。
一方、イスラエルはこの日、収監していたパレスチナ人602人を釈放する見通しだったが実施されず、23日未明にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が声明で、釈放延期を発表した。
ネタニヤフ首相は、「次の人質解放が保証され、かつ屈辱的な儀式を行わない保証がされる」まで、パレスチナ人収監者の釈放を見送ると表明した。
首相は、ハマスが「人質を冷笑的にプロパガンダ利用」していると非難。「我々の人質たちの尊厳をおとしめる儀式」を批判し、パレスチナ人釈放を延期する理由とした。
このため、ハマスとイスラエルの間の不安定な和平合意が、このまま第2段階に移行できるのかがあらためて不透明になった。1月19日に発効した合意では、第2段階では、残るイスラエル人人質の解放、イスラエル軍の全面撤退、および「持続可能な平穏の回復」を実現することになっている。
2023年10月に拉致されて以来まだハマスに拘束されている人質は62人。イスラエルなどは、この半数が存命だと考えている。残る人質は、3月1日に開始予定の和平合意第2段階で解放される取り決めになっていた。

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パレスチナ収監者協会によると、22日に釈放される予定だった収監者のうち50人は終身刑、60人は長期刑に服していた。47人は2011年の身柄交換合意の後に再逮捕された人たちという。
同協会によると、2023年10月以降にガザ地区で逮捕された445人も釈放される見通しだった。
釈放予定の受刑者の中には、1978年にイスラエル人のバス運転手を殺害した罪で収監されて以来、45年間を刑務所で過ごしてきたナエル・バルグーティ受刑者も含まれることになっていた。

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マルコ・ルビオ米国務長官はソーシャルメディア「X」に、「ビバス家の無残な殺害を含めて、ハマスによる人質の扱いは、これまで以上に彼らがいかに野蛮かを表すものだ。だからこそ我々は、テロリストが直ちに人質を全員解放しなければ、破滅させると言っている」のだと書いた。
ハマスは2023年10月7日の襲撃でイスラエル南部から拉致したビバス家の母シリさんと幼い息子2人の遺体をこのほど返還した。ハマスはかねて、3人がイスラエルの空爆で死亡したと主張しているが、イスラエルはこの説明を受け入れていない。
さらに、ハマスが20日にシリさんの遺体だとして引き渡したのが、別の身元不明の女性のものと判明。ハマスは21日にあらためて、シリさんの遺体を赤十字に引き渡した。
人質は6人解放
22日はまずガザ地区南部ラファで、人質2人がハマスから赤十字に引き渡され、さらに赤十字がイスラエル軍へと身柄を移した。続いて、ガザ地区中部ヌセイラトで3人が解放された。
さらに、これまでの人質解放には毎回大掛かりな式典が伴っていたのと異なり、ハマスはこの日初めて、イスラム教徒の人質1人を解放。イスラエル国防軍(IDF)によると、目立つ式典のないまま、ハマスはガザ市内でヒシャム・アル・サエドさんを赤十字国際委員会に引き渡したという。
IDFは22日午後、この日解放された6人全員がイスラエルに帰還したと発表した。
最初に解放された2人は、エチオピア生まれのイスラエル人男性アヴェラ・メンギストゥさん(39)と、タル・ショハムさん(40)。メンギストゥさんは2014年9月にガザ地区に入り、ハマスに拘束された。ショハムさんは2023年10月7日に、イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリでハマスに拉致された。
続いてガザ地区中部ヌセイラトで、オメル・シェム・トヴさん(22)、エリヤ・コーエンさん(27)、オメル・ウェンケルトさん(23)が同様に赤十字経由で解放され、イスラエル軍に引き渡された。3人はいずれも、ハマスによる2023年10月の奇襲攻撃の際、ガザに近いイスラエル側の砂漠で開かれていた「スーパーノヴァ」音楽フェスティバルの会場から拉致された。

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メンギストゥさんの家族はイスラエルの人質・行方不明者家族団体経由で、コメントを発表。「私たち家族は10年と5カ月の間、想像を超えた苦しみを耐えてきた。私たちはこの間、彼の帰還のため絶えず努力を続けてきた」と述べた。
ショハムさんの家族は、解放の様子について「忘れがたい瞬間で、あらゆる感情が急速に混ざり合った」とコメント。「私たちのタルが戻ってきた」として、「イスラエルのすべての人たちに感謝する」と述べた。さらに「今のこの機会を無駄にせず」存命者だけでなく死者も含めて、残る人質全員の帰還を求めた。
ショハムさんの妻と子供2人と義母も、2023年10月の襲撃で拉致されたものの翌月の一時停戦合意に基づき解放された。義父アヴシャロム・ハランさんは10月の攻撃で殺害された。
1月19日に発効した42日間の停戦合意の第1段階で、ハマスはイスラエルが収監者1900人を釈放するのと引き換えに、人質33人を解放すると同意した。

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さらにこの日は、2015年にガザで拘束されたベドウィン系イスラエル人ヒシャム・アル・サエドさんが解放された。ヌセイラトで、他の3人と一緒に解放されるかと思われていたものの、ハマスは「儀式なしに」アル・サエドさんを解放すると発表。ガザ市内で赤十字に引き渡したという。
これについてIDFは、ハマスが1月から繰り返してきた人質解放の「儀式」を「非人間的でトラウマを与える経験」と呼び、それにアル・サエドさんをさらさないことが「ベドウィン系イスラエル人へのハマスの敬意だそうだが」、そもそもアル・サエドさんを10年以上も人質にしておいた間、アラブ系イスラエル人コミュニティーへの『敬意』はどこにあったのか」と批判した。

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シリ・ビバスさんの遺体返還 家族確認
イスラエル人の人質シリ・ビバスさんの家族は21日、ハマスから同日引き渡された遺体が本人のものだと明らかにした。
「私たちのシリは捕らわれの状態で殺され、いま家に戻ってきました」と家族は声明で述べた。イスラエルの検視当局はまだ遺体の身元確認を行っている。
ビバス家は「16カ月の間、私たちは確かな答えを求めてきた。答えをいま得て、慰めにはならないものの、これを節目に新たに始めたい」と述べた。

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ハマスは前日20日にビバスさんの遺体だとして引き渡したが、イスラエルはそれが身元不明の女性のものであると指摘。検視の結果、別人の遺体だと確認されたことで、ハマスが停戦合意の条件を破ったと非難していた。
ハマス幹部はBBCに対し、21日夕にハマスから赤十字国際委員会へ別の遺体が引き渡されたと明らかにしていた。
ハマスは以前、ビバスさんと子供2人がイスラエルの空爆で殺されたとしていた。
ビバスさんの息子2人、アリエルちゃんとクフィルちゃんの遺体は、別の人質オデッド・リフシッツさんの遺体と共に20日、イスラエルに返還された。
ハマスのイスマイル・アル=タワバタ報道官は21日、ソーシャルメディア「X」に投稿し、ビバスさんの遺体が空爆後の瓦礫の下で他の遺体と一緒になって混ざっていたようだと述べた。
イスラエルは、アリエルちゃんとクフィルちゃんがイスラエルの空爆で殺されたというハマスの主張を受け入れていない。イスラエル国防軍(IDF)のダニエル・ハガリ報道官は20日の記者会見で、検視の結果、ハマスが幼い子供2人を「意図して」殺害した様子がうかがえると述べた。
報道官は、子供2人の死因について検視による証拠を「世界中のパートナーと共有し、検証可能にした」とも話した。
ビバス家のシリさん、アリエルちゃん、クフィルちゃんは、ハマスによる2023年10月7日のイスラエル攻撃時に誘拐された。当時はそれぞれ32歳、4歳、9カ月だった。
3人は子供たちの父親であるヤルデン・ビバスさん(34)と共に人質にされた。ヤルデンさんは今年2月1日に解放された。










