戦闘休止の1日再延長で合意 新たに16人の人質解放、パレスチナ人も30人釈放

イスラエルのテルアヴィヴにある医療センターに到着した、ハマスの人質から解放された人々(29日)

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画像説明, ハマスから解放された人々がイスラエルのテルアヴィヴにある医療センターに到着した(29日)

イスラエル政府は29日、イスラム組織ハマスの人質にされていた16人が解放され、イスラエル領内に戻ったと発表した。イスラエル刑務所当局は、収監していたパレスチナ人30人を釈放したと明らかにした。双方の仲介役となっているカタールは30日、戦闘休止がさらに1日延長されると発表した。

イスラエルとハマスの戦闘休止は29日が6日目。当初は24日朝から4日間の予定だったが、2日間の延長で双方が合意していた。その延長が終了するのを目前に、さらなる延長で合意に至った。

カタール外務省のマジド・アル・アンサリ報道官は30日、「パレスチナとイスラエルの双方は、現行の条件で、ガザ地区の人道的休止を1日延長することで合意に達した。現行の条件とは、すべての軍事活動の停止と、ガザへの人道支援物資の搬入だ」との声明を発表した。

イスラエル軍は30日、「人質解放の継続を目指す仲介国の努力を考慮して」戦闘休止を続けるとした。期間は明示しなかった。

一方のハマスも、戦闘休止を延長して7日目に入ることで合意したと発表したと、ロイター通信が伝えた。

6回目の人質解放で16人帰還

ガザ地区から出るための車に載せられた人質となっていた人々(29日)

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画像説明, この日はイスラエル人10人、タイ人4人、ロシア系イスラエル人2人が解放された

29日に解放された人質は、イスラエル人10人とタイ人4人、ロシア系イスラエル人2人の計16人。全員がすでにイスラエルに帰還している。

解放されたイスラエル人のうち最年少は13歳、最高齢は57歳だった。また、5人が10代だった。身体検査を受けた後、病院で家族と再会するという。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、アメリカとイスラエルの二重国籍を持つリアト・アツリさん(49)の解放を歓迎。彼女の両親と話したと述べ、「彼女は3人の子供と一緒に家に戻って来る」と話した。

リアトさんはキブツ(農業共同体)・ニル・オズの自宅から、夫のアヴィヴさんと共に連れ去られた。アヴィヴさんはなお、人質として拘束されている。

パレスチナ人30人も釈放

イスラエルの刑務所から釈放され、ヨルダン川西岸地区のラマラに到着したパレスチナ人(30日)

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画像説明, イスラエルの刑務所から釈放され、ヨルダン川西岸地区のラマラに到着したパレスチナ人(30日)

一方、イスラエルの刑務所当局はこの日、収監されていたパレスチナ人30人を釈放したと発表した。活動家のアヘド・タミミさんも含まれている。

アル・アラビヤTVが放送した映像では、30人を乗せたバスが、ヨルダン川西岸地区の主要都市ラマラ近くに到着した様子がうかがえる。バスのフロントガラスには、人質の解放とパレスチナ人の釈放を支援している赤十字のロゴが見える。

一連の交渉を仲介しているカタールは、今回釈放されたのは未成年16人と成人女性14人だとしている。

これらの人々は、投石や扇動、殺人未遂などさまざまな罪に問われたパレスチナ人300人のリスト(イスラエルが作成)から選ばれた。そのうち有罪判決を受けたのは4分の1以下で、大半は裁判を前に勾留されていたとされる。

29日夜の時点で、解放されたハマスの人質は102人。釈放されたパレスチナ人は210人となった。

イスラエルの空爆で人質の乳児死亡とハマス発表

(左から)アリエルちゃん(4)、ヤルダン・ビバスさん(34)とシリ・ビバスさん(32)、生後10カ月のクフィルちゃんのポスター。一家は10月7日にハマスに連れ去られた(28日、テルアヴィヴ)

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画像説明, (左から)アリエルちゃん(4)、ヤルダン・ビバスさん(34)とシリ・ビバスさん(32)、生後10カ月のクフィルちゃんのポスター。一家は10月7日にハマスに連れ去られた(28日、テルアヴィヴ)

ハマスは29日、人質の最年少だった乳児とその家族が、イスラエルの空爆で殺されたと発表した。

死亡したとされるのは、生後10カ月のクフィルちゃんと兄のアリエルちゃん(4)、母親のシリ・ビバスさん。3人はシリさんの夫のヤルデンさんと共に、10月7日に人質としてイスラエル南部のニル・オズから連れ去られた。ヤルデンさんの消息は不明。

イスラエル軍は、この主張を調査するとしている。

同軍は28日、この3人がハマスから別のパレスチナ人組織に引き渡され、ガザ地区の南部ハンユニスで拘束されていたと述べていた。

ハマスは先に、人質の全員をハマスが拘束しているわけではないと述べており、これが人質解放を複雑にしている。

ビバスさんの家族は夕方に声明を発表。イスラエルの人々の温かなサポートに感謝するとともに、この情報がうそであることを願うと述べ、プライバシーの尊重を呼びかけた。

シリさんの両親は、ハマスの襲撃で殺されている。

動画説明, 「明日は私たちの番」と願うも……神経すり減らすハマス人質の親族

10月7日の襲撃で、ハマスは1200人を殺害し、約240人を人質として連れ去った。

ハマスが運営するガザ地区の保健省は、この襲撃後に始まったイスラエルの報復攻撃により、これまでに1万4800人以上が殺されたと発表。うち約6000人が子供だとしている。

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休止延長の協議続く、ネタニヤフ氏は戦闘続行を強調

関係筋によると、戦闘休止を延長する協議はなお続いている。現在の合意では戦闘休止は29日までだが、具体的にいつ期限が切れるかは明らかになっていない。

エルサレムで取材しているBBCのポール・アダムズ外交担当編集委員によると、イスラエルとハマスの双方はさらなる延長に関心を持っている。一方でイスラエル政府関係者は、軍事行動への復帰に向けた準備を進めていると語っているという。

イスラエル政府は人質が解放される限りは、理論的には週末まで続けられるプロセスを承認している。これにより、100人の子どもや母親、高齢の女性の解放が可能になると、アダムス編集委員は説明した。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はこの日、イスラエルを訪問し、戦闘休止の延長とガザ地区への人道支援拡大に向けた協議に参加した。

ブリンケン氏のイスラエル訪問は、10月7日のハマスの襲撃以降で3回目となる。

一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、完全な停戦は模索しておらず、同国軍は「最後まで戦う」つもりだと、自らの立場を強調した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相

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画像説明, イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相

ネタニヤフ氏は声明で、「私は開戦当初から三つの目標を掲げていた。ハマスの排除、人質の全員返還、そしてガザが二度とイスラエルへの脅威とならないようにすることだ。これらの目標は今も変わらない」と説明。人質数十人が帰還したことは「とても大きな成果」だとしながらも、人質の解放が終わったらイスラエルはまた戦闘に戻るのかという疑問について「私の答えは明確にイエスだ」と述べた。

「最後まで戦いに戻らないという状況はない。これが私の方針だ。戦時内閣全体が支持している。政府全体が支持している。兵士たちも支持している。国民も支持している」

ガザ地区で「大規模な人道的惨事」=国連機関

ガザ地区南部ハンユニス(29日)

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こうしたなか、支援機関は戦闘停止を利用し、必要な援助物資をガザ地区に運んでいる。しかし、多くの地域で絶望的な状況が報告されている。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は29日、同機関がガザ地区から撤退すれば、「パレスチナ人が最後に垣間見た希望は消えてしまう」とBBCに語った。

その上で、UNRWAは「ガザ地区を離れるつもりはなく、「対応策を拡大するために可能なことは何でもするつもりだ」述べた。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、「生活環境やヘルスケアの欠如を考えれば、爆撃よりも病気で亡くなる人の方が多いだろう」と警告を発した。

テドロス氏はソーシャルメディアで、ガザ地区で発生している病気とその患者数を発表。呼吸器感染症が11万1000人、下痢の症状がある人が7万5000人いるほか、疥癬(かいせん)やシラミ、肌のかぶれ、とびひ、水ぼうそう、黄だんなどが蔓延(まんえん)していると述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長もこの日、ガザ地区で「大規模な人道的な大惨事」が起きていると警告した。

国連安全保障理事会でガザ地区の状況を警告するアントニオ・グテーレス国連事務総長(29日、ニューヨーク)

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画像説明, 国連安全保障理事会でガザ地区の状況を警告するアントニオ・グテーレス国連事務総長(29日、ニューヨーク)

安全保障理事会での演説でグテーレス氏は、現在の戦闘停止を延長させるための「激しい交渉」が続いているが、国連は「真の人道的な停戦」が必要だと信じていると発言。

また、ガザ地区のパレスチナ人への支援のレベルは、200万人以上が必要としていることからすると「全く不足」していると指摘した。

「ガザで人々が必要としているものに対応し始めるには、さらに多くのことが必要だ。水と電気を完全に復旧させなければならない。食料システムは崩壊し、特に北部では怒りが広がっている」

さらに、子どもや妊婦、高齢者といった免疫が弱い人々が大きなリスクに直面していることや、ガザ地区の住民の80%が家を追われている状況などにも触れた。

ハマスによる性暴力の追及を=国連事務総長

グテーレス事務総長は一方、10月7日の襲撃でハマスが行った性暴力について、徹底的な捜査と司法での追及が必要だと述べた。

「ハマスによる恐ろしいテロ行為」の中で、多くの性暴力があったとの証言が出ていると、グテーレス氏は指摘した。

また、ガザで拘束されている残りの人質については、その全員が「直ちに無条件で解放されなければならない」と述べた。

「それまでの間、彼らは人道的に扱われ、(人道支援組織である)国際赤十字による面会が許可されなければならない」