ガザでイスラエル人3人解放、イスラエルはパレスチナ人369人釈放 和平継続に懸念の中

イスラム組織ハマスがイスラエル人の人質3人を壇上に上げ、解放の手続きを行った(15日、パレスチナ・ガザ地区南部ハンユニス)

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画像説明, イスラム組織ハマスがイスラエル人の人質3人を壇上に上げ、解放の手続きを行った(15日、パレスチナ・ガザ地区南部ハンユニス)

パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意に基づき、ハマスは15日午前、人質にしていた男性3人を新たに解放した。これを受けてイスラエルはこの日、収監していたパレスチナ人369人を釈放した。停戦合意が1月19日に発効して以来、ハマスが人質を解放するのはこれで6回目。

前回8日の人質と収監者交換の後、ハマスとイスラエルの双方から手続きや待遇について不満が相いだ。さらにハマスはイスラエルによる停戦合意違反があったとして、人質解放を延期すると発表

これを受けて、ガザ地区をアメリカが「所有する」と主張しているドナルド・トランプ米大統領が10日、イスラム組織ハマスに対し、パレスチナ・ガザ地区で拘束している人質全員を「土曜日の12時」までに解放するよう求めた。ハマスが応じなければ、「地獄のようなとんでもない事態」にすると警告。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は11日、ハマスが「15日正午までに人質を返還しない」場合、停戦を終了し、激しい戦闘を再開すると警告した。

こうした状況で、15日の人質と収監者の交換が実施されるのか、そして和平合意が維持されるのか、懸念が高まっていた。

人質解放にあたり赤十字国際委員会の職員と言葉を交わすハマスの戦闘員(15日、パレスチナ・ガザ地区南部ハンユニス)

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画像説明, 人質解放にあたり赤十字国際委員会の職員と言葉を交わすハマスの戦闘員(15日、パレスチナ・ガザ地区南部ハンユニス)

イスラエル国防軍(IDF)によると、アレクサンダー・トルファノフさん(29)、ヤイル・ホルンさん(46)、サグイ・デケル・チェンさん(36)の3人がハマスによって解放され、イスラエルに帰還した。3人はいずれも、2023年10月7日のハマスによる攻撃の際、ガザに近いキブツ(農業共同体)ニル・オズから連れ去られた。

これを受けてイスラエルは15日、収監者計369人を釈放した。イスラエル刑務所局は同日午後、369人全員がイスラエルのオフェル刑務所とケトジオト刑務所を離れたと発表した。

パレスチナ収監者協会によると、369人のうち36人はイスラエル人の命を奪った攻撃に関与した罪で終身刑を受け服役していたものの、それ以外の333人は2023年10月7日以降にガザで拘束され、起訴されず公判も開かれない状態で拘束されていた。

終身刑を受けていた36人は、ヨルダン川西岸地区で拘束された29人と、エルサレムとその郊外で拘束された7人。パレスチナ収監者協会によると、そのうち24人が国外追放される予定。

停戦で合意して以来、ハマスはイスラエル人19人とタイ人5人の人質を解放した。

1月19日に発効した今回の停戦合意の一環で、ハマスが人質33人の解放に同意した。その33人のうち、解放されたのはこれで19人になった。イスラエル人の解放とは別の合意に基づき、タイ人も5人解放されている。

今後解放される予定の人質14人のうち、イスラエルは8人がすでに死亡しているとみている。

存命とみられ解放が予定されている6人を含めて、ガザになお残るイスラエル人の人質は70人。その半数が存命と思われている。

停戦合意の一環で、イスラエルは約1900人のパレスチナ人を釈放すると同意していた。赤十字国際委員会によると、14日までに釈放されたパレスチナ人は766人に上っていた。

動画説明, ガザ南部ハンユニスで赤十字国際委員会の職員に引き渡されるイスラエル人人質

ガザ地区南部ハンユニスで人質解放の手続きが行われる様子を、イスラエル・テルアヴィヴの人質広場に集まった人たちは、歓声を上げながら見つめていた。

イスラエルは、この日解放されたアルゼンチン系イスラエル人のホルンさんが「想像を絶する状況」で拘束されていたと発表した。

イスラエルはソーシャルメディア「X」に、ホルンさんと弟のエイタンさんは2023年10月7日に「暴力的に誘拐されてから約500日間、想像を絶する状況で拘束されていた」と投稿した。

エイタンさんは依然としてハマスに拘束されており、今回の停戦合意の第1段階で解放される予定はない。

釈放されたイスラエル人の人質たち

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画像説明, 15日に新たに釈放されたイスラエル人の人質たち。写真は人質にされる前のもの。左からトルファノフさん、ホルンさん、デケル・チェンさん

「エルサレム以外への移住はない」とハマス

ハマスは声明で、今日の人質解放は「交渉と停戦合意の要件を順守する以外」に人質解放の手段はないと示すものだと述べた。

ハマスはさらに、「全世界に言う。エルサレム以外への移住はない」と強調した。

これはガザのパレスチナ人はガザ地区の外に再定住することになると主張するトランプ大統領への、直接的な反論だとBBCのポール・アダムズ外交担当編集委員は指摘する。

人質解放の手続きが行われた壇上には、昨年10月にイスラエルの銃撃で死亡した元ハマス軍事指導者ヤヒヤ・シンワル氏の最期の瞬間を表現したポスターが掲げられ、その上にも「エルサレム以外への移住はない」というスローガンが掲げられていた。

ポスターに描かれた故シンワル氏は、壁に空いた穴の向こうに立つ、パレスチナの旗を手にした男性を見つめている。男性は、エルサレムにあるイスラム教の聖地「岩のドーム」の前に立っている。

ネタニヤフ首相はトランプ氏に感謝

イスラエル首相府は、今日の3人の帰還を歓迎するネタニヤフ首相の声明をヘブライ語で発表した。

声明では、政府がアメリカと協力してガザに拘束されている人々の解放を確保し続けていると述べている。

また、ハマスが今週「合意を破ろうとした」と批判。ハマスが「偽の危機を偽の主張で引き起こした」と述べた。

ネタニヤフ首相はさらに声明で、人質解放が続いているのはガザ地区内外のイスラエル軍とトランプ大統領の「明確かつ明白な声明」のおかげだと評価した。

釈放されたパレスチナ人5人が病院に

イスラエルの刑務所から釈放されたパレスチナ人の男性と歓迎する人たち(15日、ヨルダン川西岸地区ラマラ)

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イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区ラマラでは、イスラエルの刑務所から釈放されたパレスチナ人が赤十字のバスで次々と到着した。

バスが到着すると歓声が上がり、群衆がバスを取り囲み、窓を叩きながら手を振った。

バスから降りた男性たちは通りを運ばれ、手を振り、人々は「アッラーフ・アクバル」(神は偉大なり)と叫んだ。

出迎えのために集まった人たちは、停戦が続き、今日の釈放が実現したことに安堵の声を上げている。

「停戦合意が破棄されるかもしれないと聞いてから、ずっと緊張して眠れなかった。とても失望していた。停戦が続き、ガザが再建され、すべての収監者が解放されることを願っていた」と、親族の解放を待つ男性は語った。男性の親族は、2000年から2005年にかけての第二次パレスチナ・インティファーダ(蜂起)で拘束されたという。

パレスチナ赤新月社のスタッフはBBCに対して、ラマラに到着したパレスチナ人のうち5人が病院に搬送されたと話した。

「全員が慢性病を患っている」とモハマド・ファキフ氏は言い、さらに1人の男性は足を骨折していたと話した。

ラマラに到着した男性はいずれも、殺人未遂や「不法組織に仕えた」罪などで、長期刑で服役していた。

家族との再会を喜ぶパレスチナ男性(15日、ラマラ)

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画像説明, イスラエルの刑務所から釈放され、家族との再会を喜ぶパレスチナ男性(15日、ラマラ)

15日午後には、300人以上のパレスチナ人が次々とガザ地区に到着した。

パレスチナ人収監者を乗せたバスがガザ地区に到着した(15日)

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画像説明, パレスチナ人収監者を乗せたバスがガザ地区に到着した(15日)

【解説】 ラシュディ・アブアルーフBBCガザ特派員(カイロ)

ハマスによるイスラエルの人質解放は今回が6回目だ。円滑かつ速やかに解放が実現したことは、ガザ停戦合意の第1段階が完了するという可能性を示す、歓迎すべきものだ。

しかし、停戦合意第2段階の重要な部分は不透明なため、多くのパレスチナ人はそのことを懸念している(第1段階は1月19日に始まり、6週間続く予定)。

合意の第2段階の実施が遅れると、ガザとイスラエルおよびエジプトとの境界沿いにある緩衝地帯にイスラエル軍の配備が続くことになる。

さらに重要な点として、第2段階の実施が遅れれば、ガザ再建の努力がさらに遅れ、戦争で家を失ったパレスチナ人100万人以上の苦しみが長引くことになる。

一方、ガザではハマスが毎週毎週、人質解放に際して武力を誇示する行事を繰り返していることの是非をめぐり、議論が続いている。

ハマスの支持者はこれをイスラエルに対する勝利と挑戦の象徴と見なしている。しかし、ハマスに批判的な人たちは、ガザが甚大に破壊されたにもかかわらず、ハマスが権力と政治の場にとどまることに固執すれば、自分たちの苦しみを深めるだけだと受け止めている。