トランプ氏、ハマスに人質全員解放を「土曜日12時」までに要求 「でなければ地獄のような事態に」

鉄鋼・アルミ関税の命令書に署名後、記者団の質問に答えるトランプ大統領(10日、ホワイトハウス)

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ドナルド・トランプ米大統領は10日、イスラム組織ハマスに対し、パレスチナ・ガザ地区で拘束している人質全員を「土曜日の12時」までに解放するよう求めた。ハマスが応じなければ、「地獄のようなとんでもない事態」にすると警告した。これに先立ちハマスは、イスラエル側が停戦合意に違反していると反発し、今週土曜日の15日に予定していた人質の解放を延期すると発表していた。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、「自分に言わせるなら、もし人質全員が土曜日の12時までに戻されないなら、それが適切な時間だと思う、(合意を)破棄しろ、なにもかも無効だ、地獄のようなとんでもない事態が始まるに任せろ」と述べた。

トランプ氏が指す「12時」が正午なのか真夜中なのか、またどの時間帯を指しているのかは不明。

トランプ氏は、人質が「少しずつではなく一度に」解放されることを期待するとも述べた。

「地獄のような事態が始まる」というのは、イスラエルがハマスに報復するという意味かとBBCが尋ねると、トランプ氏は「(その時になれば)君たちも、彼らも知ることになる。私が何を意味しているのか、ハマスも知ることになる」と答えた。

アメリカが関与するかどうかについては、「どうなるかはその時次第だ」と述べた。

さらに、「土曜の12時」というのはこれは「ただ単に自分の期限」で、イスラエルの首相にはまだ伝えていないと述べた。

トランプ氏は前日にも米FOXニュースとのインタビューで、アメリカがガザ地区を「引き取り」再建するという計画において、近隣諸国に再定住することになるパレスチナ人200万人は、ガザに戻る権利がないと述べていた。

トランプ氏は、ガザ地区のパレスチナ人が「ずっと良い家に住めることになる」、「恒久的な定住の場所を建設すると、自分はそういう話をしている」のだとFOXに対して述べていた。

トランプ大統領は4日、アメリカがガザを「所有」し、「中東のリヴィエラ」として経済的に再開発すると表明。世界的な非難を浴びているものの、9日にもあらためてガザについては「買い取り、所有することにコミットしている」と述べた。

こうした中でハマスは、パレスチナの土地は「売り物ではない」と再度強調した。

トランプ氏は、ガザ地区のパレスチナ人は近隣のヨルダンやエジプトに再定住するのが良いと提案しているが、ヨルダンをはじめ各国はこれに反発している。

こうした中でヨルダン国王アブドゥラ2世が10日にワシントンを訪れており、11日にもトランプ氏と会談する予定。

それを踏まえてホワイトハウスで記者団が、ガザ住民の受け入れをヨルダン国王にどう説得するのか質問すると、トランプ氏は「(国王は)受け入れると思うし、他の国々も受け入れると思う」と述べ、「善良な心の持ち主だ」と付け加えた。

さらに記者団が、ヨルダンやエジプトがガザのパレスチナ人を受け入れない場合、ヨルダンやエジプトへの援助を停止するかどうか質問。

それに対して大統領は、「そうだな、たぶん、それはそうだ。 受け入れないなら、援助を停止するかもしれない。そうだ」と答えた。

帰還する権利ないと

ガザ住民の多くは戦闘開始以来何度も地区内を避難している

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トランプ氏は9日放送のFOXニュース・インタビューで、スニュースのブレット・ベイヤーとのインタビューで、ガザのパレスチナ人のために「美しいコミュニティ」を建設すると約束した。

「5つ、6つ、あるいは2つかもしれないが、安全なコミュニティを建てる。今いる場所から、危険だらけの場所から少し離れたところに。その間、自分がこれを引き取る」と述べた。

「未来への不動産開発として考えてほしい。美しい土地になるだろう。大金はかからない」とも、トランプ氏はFOXニュースのブレット・ベアー司会者に話した。

トランプ氏はさらに、パレスチナ人がガザに帰還する権利はないと主張。他の場所で「はるかに良い」暮らしを送ることになると述べた。これは、ガザ住民の移住は一時的なものだと主張したマルコ・ルビオ国務長官やホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官の説明と矛盾している。

「今すぐ戻らなくてはならないなら、何年もかかる……住める状態じゃない」ともトランプ氏はFOXに述べ、「自分は建設開始の話をしている。ヨルダンと取引できると思う。エジプトとも取引できると思う。(アメリカは)彼らに毎年何十億ドルも提供しているのだし」と、近隣諸国の協力を得られるはずだと強調した。

イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は9日にFOXニュースに対して、トランプ氏が近くエジプトのアブドゥルファッターハ・エル・シシ大統領やサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とも会談する予定だと述べた。

トランプ氏は9日にも、アメフトNFLのスーパーボウル会場へ向かう機内で記者団に、ガザ引き取り計画を強調。「買い取り、所有することにコミットしている」と述べた。誰からその領土を購入するのか、アメリカがそれをどのように所有するのかについては説明しなかった。

「自分たちの再建については、中東の他の国々にその一部の建設を任せるかもしれない。我々の支援のもとで、他の人たちがやるかもしれない。しかし、私たちは(ガザ地区を)買い取り、所有することにコミットしている。ハマスが絶対に戻ってこないようにする」とトランプ氏は記者団に述べ、世界中の人々がガザに移住できるようになり、パレスチナ人はそこに戻りたくないはずだとも話した。

「彼らが戻るのは、他に選択肢がないからだ」とトランプ氏は主張した。

イスラエルとパレスチナは

停戦合意に基づきガザ地区北部に戻った住民の多くは、自宅が破壊されているため、テントで暮らしている

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日の閣議で、トランプ氏の提案を称賛した。

「この1年というもの、『その翌日』にはパレスチナ解放機構(PLO)やパレスチナ自治政府がガザ地区に入る必要があると言われてきたが(中略)トランプ大統領は、イスラエル国家にとってはるかに良い、革命的で創造的なビジョンを持ってきた。彼は計画実行を強く決意しているし、私たちには多くの可能性が開かれる」と首相は述べた。

これに対しパレスチナ自治政府の外務省は、「我々の人々と土地の権利は売り物でも交換でも交渉の対象でもない」と述べた。

「イスラエル政府とネタニヤフ首相は、我々の民に対して行ったジェノサイド、強制移住、併合の犯罪を隠そうとしている」と付け加えた。

「この目的のため彼らは、政治的現実からかけ離れ、紛争の政治的解決に必要な条件からかけ離れたスローガンや立場を推進し続けている」とも、自治政府外務省は批判した。

ハマス政治局員のイザット・アル・リシュク氏は、トランプ氏の一連の発言は「ばかげている」と一蹴。「いかにパレスチナと地域について、とことん無知かを反映している」と述べた。

「ガザは売買される不動産ではない。占領されたパレスチナの我々の土地にとって、不可分の一部だ」とも、アル・リシュク氏は述べた。

パレスチナ人は、1948年のイスラエル建国前後の戦争で何十万人もの人々が家を追われた「ナクバ(大災害)」の再来を恐れている。

「ナクバ」で家を失った難民の多くが、ガザ地区にたどり着いた。彼らとその子孫が、ガザの人口の3分の2を占めている。さらに90万人の登録難民がヨルダン川西岸地区に住むが、イスラエルは1967年の中東戦争で、ガザと共にこの西岸地区を占領した。さらに国連によると、パレスチナ難民340万人がヨルダン、シリア、レバノンに住んでいる。

パレスチナ人はこれらの難民が故郷に戻る帰還権を主張しているが、イスラエルはこれを拒否している。

イスラエルは2005年にガザから一方的に軍隊と入植者を撤退させたが、国境、空域、海岸線の管理を維持し、人や物の移動を実質的に管理している。国連は依然として、ガザをイスラエル占領地と見なしている。

周辺諸国は

パレスチナ当局者とアラブ諸国も、イスラエルのネタニヤフ首相による先週の発言を非難した。

イスラエル人記者が、サウジアラビアとの外交関係正常化について議論している際に、「サウジ国家」の創設なしには進展がないと誤って発言した。

そこでネタニヤフ首相は「パレスチナ国家だ」と訂正し、「それとも、サウジアラビアにパレスチナ国家を作るのがいいと? (サウジアラビアには)広大な土地がある」と付け加えた。

エジプトはこの提案が「無謀」だと反発。「サウジの主権を直接侵害するもの」と述べた。ヨルダンは「国際法の明白な違反」だと述べた。

サウジアラビア政府は9日、ネタニヤフ首相がパレスチナ人のガザ追放について述べたことに対して、自分たちの「兄弟国がこぞって非難し、容認せず、完全に拒絶した」ことはありがたいことだと評価した。

ドイツのオラフ・ショルツ首相も9日にトランプの計画を「とんでもない話だ」と強く批判した。

「エジプト政府、ヨルダン政府、そして人間の尊厳を信じる人々と共に言う。住民の移転は受け入れられず、国際法に反する」と、選挙討論会で述べた。