ガザ和平、トランプ氏の案にネタニヤフ氏が合意 中東や欧州の指導者ら歓迎

米ホワイトハウスでトランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が握手を交わしながら、記者団の方を向いている。両首脳は口を閉じ、ネタニヤフ氏は笑みを浮かべている。背後にはアメリカとイスラエルの国旗が立っている

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画像説明, 米ホワイトハウスでの記者会見後に握手を交わすアメリカのドナルド・トランプ大統領(右)とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(29日)

アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は29日、米ホワイトハウスで会談し、パレスチナ・ガザ地区をめぐる新たな和平計画で合意したと発表した。両首脳はこの和平計画を受け入れるようハマスに迫った。一方、ヨーロッパや中東の国々の指導者らは、アメリカの和平計画を歓迎している。

この計画には、軍事作戦を即時停止することや、生存している20人のイスラエル人人質とすでに死亡しているとみられる人質20人以上の遺体をハマスが引き渡すこと、その見返りとしてイスラエルが拘束しているガザ住民数百人を解放することなどが含まれる。

停戦交渉に詳しいパレスチナ関係筋がBBCに語ったところによると、イスラム組織ハマスの当局者にはすでに、20項目からなるホワイトハウスの提案内容が伝えられているという。

米国案は、ハマスが戦後のガザ統治に関与しないことを求めており、将来的なパレスチナ国家樹立の可能性も残されている。

動画説明, 「和平のための歴史的な日」 ガザ戦争終結に向けた計画、トランプ氏とネタニヤフ氏が概要を発表

ホワイトハウスでの会談後の記者会見で、トランプ氏はこの計画を「和平のための歴史的な日」と形容した。

ただし、ハマスが計画に同意しない場合には、ネタニヤフ氏が必要な対応を取れるようアメリカは支援することになるとも述べた。

ネタニヤフ氏は、ハマスがこの計画を拒否あるいは最後まで履行しない場合、イスラエルは「任務を完遂する」と述べた。

同氏はまた、その後に公開したビデオ声明で、パレスチナ国家を認めないとする従前からの立場を強調。「(パレスチナ国家については)合意には書かれていない。私たちはパレスチナ国家に強く反対すると述べた」とした。

ビデオ声明ではさらに、今回の和平案はイスラエル国防軍(IDF)のガザ駐留を認めるものだと述べた。これは、ホワイトハウスが公表した和平案の文言とは一致しない。

イスラエルの攻撃は廃墟と化したガザ市の建物の近くに、パレスチナ人避難者が身を寄せるテントが設置されている

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画像説明, 2023年10月の開戦以来、少なくとも6万6055人がイスラエルのガザ攻撃で殺害されている。画像は破壊された建物の近くに設置された、パレスチナ人避難者が身を寄せるテント(8月8日、ガザ市)

パレスチナ自治政府や各国は前向きに評価

イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の一部を統治するパレスチナ自治政府は、トランプ氏の試みは「誠実かつ断固たるもの」だと述べた。

パレスチナ自治政府はパレスチナの通信社WAFAを通じた声明で、ガザでの戦争が終わり、ガザに十分な人道援助が届けられ、人質と拘束者が解放されるために、「アメリカや周辺地域の国々、パートナー国と、改めて共同で取り組んでいく」とした。

アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタール、エジプト、ヨルダン、トルコ、インドネシア、パキスタンの各国外相は共同声明を発表。トランプ氏の「ガザでの戦争を終わらせるためのリーダーシップと誠実な努力」を歓迎すると述べた。

また、今回の合意は、「ガザが、ヨルダン川西岸と完全に統合されたパレスチナ国家となる2国家解決」につながるものだと評価。これをまとめ、実行するために、アメリカと協力する準備があるとした。

イギリスのキア・スターマー首相もこの計画を歓迎し、「米政府と連携してこの合意をまとめ、実現させるよう、すべての側に求める」と述べた。「ハマスはこの計画に合意し、武器を捨て、残りの人質全員を解放し、この悲惨な状況を終わらせるべきだ」。

欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は、ネタニヤフ氏がアメリカ案に「前向きな反応を示したことに勇気づけられた」とし、「すべての当事者は、真の平和の可能性に向けてこの機会をいかすべきだ」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、アメリカの提案を称賛するとともに、フランスは戦争終結と人質解放に向けた取り組みへの「一助になる用意がある」と述べた。

「これらの要素は、同地域で2国家解決策に基づいた永続的な平和を築くために、すべての関係国との徹底的な議論の道を開くはずだ」と、マクロン氏は述べた。

イタリアのジョルジャ・メローニ首相は声明で、今回の案を「現在のプロセスの転換点となりうる」と評価。「すべての当事者に、この機会を生かし、計画を受け入れるよう強く求める」とした。

米国案の内容

この提案が実行されれば、軍事作戦は即時停止される。現在の「戦線」は、段階的撤退の条件が整うまで維持される。

また、ハマスは武器を放棄し、ガザの地下トンネルや兵器製造施設は破壊されることになる。

イスラエル人1人の遺体につき、ガザ住民15人の遺体をイスラエルは引き渡すという。

イスラエルとハマスがアメリカ案に合意すれば、「ガザ地区への全面的な援助の流入が即時に」実現するという。

アメリカは将来的なガザ統治計画についても提案している。

「専門的かつ政治と無関係なパレスチナ委員会」が暫定的にガザ統治を担い、トランプ氏が率いる「新たな国際移行機関『平和評議会』が監督する」としている。

イギリスのトニー・ブレア元首相や、「後日発表予定の」ほかの指導者たちも、この統治機関に加わる見込み。ブレア氏はこの計画を「大胆かつ賢明」と評した。

計画には、ハマスがガザ統治に「直接的にも間接的にも、いかなるかたちでも」関与してはならないと記されている。

計画の大部分は、アメリカが「経済開発計画」と呼ぶガザ再建に焦点を当てた内容になっている。「イスラエルはガザを占領・併合せず」、イスラエル部隊は段階的に撤退するとの方針も示されている。

計画は、パレスチナ人がガザから強制的に退去させられることはなく、「我々は人々が(ガザに)とどまることを奨励し、より良いガザを築く機会を提供する」としている。これは、パレスチナ人をガザの域外に移住させるとするトランプ氏の従来の発言転換となる。

また、将来的なパレスチナ国家樹立の可能性を残す内容となっている。

停戦交渉に詳しいパレスチナ関係筋は、「ホワイトハウスが提案したガザ戦争終結に向けた計画を、カタールとエジプトの当局者が、カタール・ドーハにいるハマス当局者に手渡した」とBBCに語った。

ハマス幹部は以前、BBCに対し、ガザ戦争を終わらせる可能性のある提案については前向きに検討するつもりだとしつつ、いかなる合意も、パレスチナの利益を守り、イスラエル軍の完全撤退を保証し、戦争を終結させるものでなければならないと強調していた。

ハマスが保有する武器について問われると、この幹部は次のように答えた。「占領が続く限り、抵抗のための武器(の放棄)は越えてはならない一線だ」。

「武装をめぐる問題は、1967年時点の境界線に基づく、独立したパレスチナ国家の樹立を保証する政治的解決の枠組みの中でのみ議論されるべきだ」と、ハマス幹部は述べた。

「パレスチナ国家承認」、イスラエルは反発

和平計画の発表の3日前には、ネタニヤフ氏が国連総会で、複数の西側諸国によるパレスチナ国家の承認を非難していた。

ネタニヤフ氏は国連演説で、パレスチナ国家を承認する動きを「恥の証」と呼び、「ユダヤ人を殺せば報われるというメッセージを送っている」と述べた。

ネタニヤフ氏が演壇に立つと、数十人の政府関係者や外交官が退席し、会場の大部分が空席となった。

動画説明, 大勢が退席、NY市内では抗議デモ……イスラエル首相が国連で演説

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスに復帰してから、ネタニヤフ氏を強力に支持してきた。しかし最近では、ネタニヤフ氏に対する不満を強めている。

今月9日に、イスラエルがアメリカの重要な友好国カタールでハマス幹部を攻撃した際には、トランプ氏は不快感を示した。

29日の記者会見に先立ち、ネタニヤフ氏はホワイトハウスからカタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アル・サニ首相に電話をかけ、イスラエルのミサイル攻撃でカタールの軍人が誤って殺害されたことに深い遺憾の意を表明した。

ハマスは2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質として拘束した。これを受けたイスラエルの攻撃により、ガザではこれまでに少なくとも6万6055人が殺害されていると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。

国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は8月、ガザ市とその周辺地域で飢饉(ききん)が起きているとの報告書を公表。今月初めには、国連人権理事会の調査委員会が、イスラエルがガザのパレスチナ人に対してジェノサイド(集団殺害)を行っていると認定した。イスラエルは事実ではないと強く否定している。