イスラエルがドーハでハマス幹部を狙い攻撃 カタールは猛反発、トランプ氏も不満表明

イスラエル軍の空爆で被害を受けたカタール・ドーハの建物(2025年9月9日)

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画像説明, イスラエルの攻撃を受けたドーハ市内の建物。カタール当局によると、ハマス政治部門の数人が暮らしていたという(9日)

パレスチナのイスラム武装組織ハマスは9日、カタールの首都ドーハでメンバー5人がイスラエル軍の空爆によって殺害されたと発表した。空爆はガザでの停戦を交渉するチームの暗殺が目的だったとの見方を示し、「失敗に終わった」とした。カタールは強く反発し、アメリカも不満を表明している。

カタール内務省は、同国の治安部隊の1人が殺害され、複数人が負傷したとした。ハマスの死傷者については言及しなかった。カタール当局は、この空爆は「ハマス政治局の数人が暮らす住宅」を直撃したとした。

目撃者らによると、9日午後に爆発音が8回ほどし、ドーハ北部のカタラ地区で煙が上がったという。

ハマスによると、交渉団は停戦に向けたアメリカの最新合意案について話し合うため、ドーハの住居用建物で会合を開いていた。一連の爆発で大きな被害を受けたという。

イスラエルは爆発があった直後、自軍による攻撃だったと発表。イスラエルの国防軍(IDF)と国内保安機関シンベトは声明で、ハマスの「幹部指導者らを標的とした精密攻撃」を実施したとした。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回の攻撃について「完全に正当化される」ものだと主張。2023年10月7日のイスラエル攻撃を組織したハマス幹部らを標的にしたからだと、強調した。

ハマスは声明で、イスラエルの攻撃を、「凶悪な犯罪、露骨な武力攻撃、あらゆる国際規範と法律に対する明白な違反」だと非難。「交渉団の兄弟らの暗殺に敵は失敗した」と、証拠は示さずに述べた。

また、ハマス交渉団トップのハリル・アル・ハイヤ氏の息子フマム氏や、ハイヤ氏の事務所長ジハド・ラバド氏を含む、ハマスのメンバー5人が殺害されたとした。

そして、「ドナルド・トランプ米大統領の最新の提案を協議していた交渉団を標的にしたことは、ネタニヤフとその政府がいかなる合意も望んでおらず、あらゆる機会を意図的に妨げ、国際的な努力を妨害しようとしていることを、疑う余地なく示している」とした。

カタール・ドーハの航空写真で、攻撃された地点と国際空港の位置が示されている

カタールはイスラエルの攻撃を、「卑劣」と非難。「この犯罪的攻撃は、すべての国際法と規範にあからさまに違反するもので、カタール人とカタールに居住する人々の安全と安心に対する深刻な脅威だ」と憤りを示した。

カタールは2012年から、ハマスの政治部門を受け入れている。また、アメリカやエジプトとともに、ハマスとイスラエルとの間接交渉の仲介役を務めている。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルの攻撃について記者団から質問されると、「なんていうか、うれしくない。(中略)ともかく、この状況全体がうれしくない。良い状況ではない」と答えた。

また、「ただ、これは言っておきたい。私たちは人質を取り戻したいと思っている。だが、今日のようなやり方はうれしくない」と述べた。

アメリカにとってカタールは、中東地域における重要な友好国。米軍の航空基地もある。

動画説明, ドーハの攻撃の監視カメラ映像

今回の攻撃のあと、イスラエルのネタニヤフ首相とイスラエル・カッツ国防相は、「エルサレムとガザでの殺人的な攻撃を受けて」、8日に治安部隊に攻撃の準備を命じていたと説明した。エルサレムのバス停で同日、武装したパレスチナ人2人によってイスラエル人6人が殺害されたことと、ガザ市でイスラエル軍の野営地が攻撃され兵士4人が殺害されたことを指しているとみられる。

両者は、「10月7日の大虐殺を引き起こして組織したのが、このハマス指導者らだ。それ以降も、イスラエルとその国民に対する殺害作戦をやめていない。その事実を踏まえると、今回の行動は完全に正当化されると考えた」とした。

イスラエルのメディアは、今回の攻撃には戦闘機15機が参加し、一つの目標に対して数秒間で10発を発射したと報じた。

また、イスラエル当局者の話として、標的にしたのはハマス交渉団トップでガザ指導者のハリル・アル・ハイヤ氏と、ヨルダン川西岸指導者のザヘル・ジャバリン氏らだったと伝えた。両氏はともに外国を拠点にしている。

レバノンのベイルートで記者会見するハマスの指導者ハリル・アル・ハイヤ氏。マスコミ各社のマイクが少なくとも9本、並んでいる(2023年11月21日撮影)。

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画像説明, 今回の攻撃では、ハマスの交渉団トップのハリル・アル・ハイヤ氏(右)らが狙われたとイスラエルで報じられている(2023年11月、レバノン)

ハマスは、トランプ政権がイスラエル軍を支援していることから、今回の攻撃に関しては同政権にも「連帯責任」があるとしている。

一方、ホワイトハウスは、今回の攻撃は米軍によって知らされたと説明。キャロライン・レヴィット報道官は、「カタールは主権国家で、アメリカの緊密な友好国で、和平仲介で私たちと一緒に懸命に、勇敢に危険を冒して働いている。そのカタールの国内を一方的に爆撃することは、イスラエルやアメリカの目標を前進させるものではない」と記者団に述べた。同時に、「しかしながら、ガザで暮らす人々の不幸から利益を得ているハマスを排除することは、価値ある目標だ」とした。

また、「トランプ大統領は直ちにスティーヴ・ウィトコフ(中東担当)特使に、カタールに対して攻撃が迫っていることを伝えるよう指示した。特使はその通りにした」と付け加えた。

レヴィット氏によると、トランプ氏がその後、ネタニヤフ氏と話をした際、ネタニヤフ氏は「和平を早く結びたい」と述べたという。トランプ氏はさらに、カタールの首長と首相とも話し、「(同国内で)このようなことは二度と起こらないと断言した」という。

アラブ各国も、イスラエルの攻撃に対する怒りを表明している。サウジアラビアは「イスラエルの残忍な軍事攻撃」だと非難した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、今回の空爆は「カタールの主権と領土保全に対する明白な侵害」だと非難した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「動機にかかわらず容認できない」と批判。イギリスのキア・スターマー首相も、「(中東)地域全体でエスカレートする」危険性があると警告し、ガザでの停戦と人質の解放を求めた。

ガザで拘束されている人質48人(うち20人は生存しているとみられている)の家族は、今回の攻撃で家族の安否についての激しい不安がいっそう深まった。

息子のマタン氏が拘束されているアイナフ・ザンガウカー氏は、「恐怖で震えている」とソーシャルメディア「X」に投稿。「この瞬間に、首相は私のマタンを暗殺してしまったのかもしれない。なぜ首相は、合意の可能性を吹き飛ばそうとするのか?」と書いた。

カッツ国防相は8日、パレスチナの外で暮らすハマス指導者らに向け、ハマスが人質を解放して武器を置かなければ、「全滅」と「破壊」が待っていると警告していた。

イスラエルは過去2年弱の間に、多くのハマス指導者を殺害してきた。

2023年10月7日のイスラエル攻撃の首謀者とされ、ハニヤ氏の後を継いだヤヒヤ・シンワルは、昨年10月にガザ南部でイスラエル軍によって殺害された