トランプ氏の資産水増し訴訟、2審は巨額罰金を取り消し 詐欺責任を認めつつ

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マデリン・ハルパート、ケイラ・エプスティーン
ドナルド・トランプ米大統領の一族企業による資産水増し疑惑に対する民事訴訟で、米ニューヨーク州の控訴裁判所は21日、同州地裁が昨年2月にトランプ氏に命じた5億ドル(約740億円)の罰金を破棄した。
控訴裁が公開した判決文は、不正があったとする1審の判断を支持し、トランプ氏が資産水増しについて詐欺の責任を負うと認定しつつも、約5億ドルもの罰金は過剰で、過酷な処罰を禁じる憲法の保護に違反する可能性があるとの考えを示した。
ニューヨーク州地裁は2023年9月、トランプ氏が所有資産の価値を過大に申告し、不正利益を得たと認め、2024年2月には約3億5490万ドル(約533億円)の罰金支払いを命じた。
州地裁はさらに、トランプ氏に向こう3年間、ニューヨーク州内で企業経営者になったり、州内の金融機関から融資を得ることを禁止していた。その後、利息を加えると罰金総額は5億ドルを超えていた。
今回の控訴裁判決では、罰金を除く非金銭的制裁は維持された。
1審では、トランプ氏の財務報告書に、ニューヨークにあるトランプ・タワーのペントハウスの広さが実際の3倍近くあると誤って記載されていた事例などが認められていた。
1審判決について控訴裁のピーター・モールトン判事は今回、「確かに損害は発生したが、州に対する約5億ドルの損害賠償を正当化するほどの、壊滅的な損害ではなかった」と判断を示した。
今回の2審判決を受けて、トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「完全勝利だ」と主張した。
「(控訴)裁判所が、この違法でみっともない(1審)判決を破棄するだけの勇気を持ち合わせていたことを、大いに尊敬する。みっともない判決は、ニューヨーク州全体のビジネスを痛めつけていた」とトランプ氏は書いた。
大統領はさらに、「これはビジネスにおける、政治的魔女狩りで、誰も見たことがないたぐいのものだった」とも主張した。
トランプ氏はかねて、民主党所属のレティシア・ジェイムズ州司法長官によるこの訴訟が、政治的動機によるものだと主張していた。
他方、「トランプ・オーガナイゼーション」に対するこの民事訴訟を起こしたニューヨーク州の司法長官事務所も、今回の2審判決を勝利と位置づけた。
同事務所は、トランプ氏に詐欺に対する責任があるという1審の判断が維持されたことと、賠償金以外の罰が破棄されなかったことを強調。さらに今後は、罰金命令を維持するよう、ニューヨーク州の最高裁にあたる上訴裁判所に上訴する方針を示した。
司法長官事務所は声明で、控訴裁の判事たちが「ドナルド・トランプとその企業と子供2人に、詐欺の責任があるという、1審で十分に裏付けられた判断を支持した」と述べた。
さらに、「大統領による違法行為を、また一つの裁判所が認定したこと、そして我々の訴えには正当性があると判断されたこと。これは歴史に残すべきことだ」とも、同事務所は述べた。
訴訟の妥当性めぐり意見割れる
控訴裁の323ページに及ぶ判決文には、裁判官5人の間で意見の相違があったことが記されている。判事たちの意見は主に、トランプ氏とその息子たちによる「継続的かつ反復的な詐欺」を訴えたジェイムズ州司法長官の訴訟そのものの妥当性をめぐって割れていた。
複数の裁判官は、「この訴訟を起こす法的権限」がジェイムズ長官にはあったという意見だった。しかし、1人の判事は、この訴訟は却下すべきだったと主張。判事2人は、より限定的な範囲で新たな裁判を行うべきだと述べた。ただし、その2人も「判決を確定するだけのため」に罰金取り消しに同意したと、モールトン判事は説明した。
モールトン判事はまた、アメリカの有権者はトランプ氏の政治家としてのキャリアについて「明確に評決を下した」のだとして、「本法廷は本日、そのビジネスを破壊しようとする動きを、全会一致で阻止する」と述べた。
この判決は、控訴審が口頭弁論を聞いてからほぼ1年後に下された。複数の裁判官が審理中から、この訴訟の意義に懐疑的な姿勢を示していた。
被告の一人だったトランプ氏の息子エリック・トランプ氏はソーシャルメディアで、「5年間の地獄の末に、正義が勝った!」と投稿し、判決を歓迎した。
他方、ミシガン大学のウィル・トーマス助教授(ビジネス法)は、「今回の判決は司法的な『先送り』に等しい」と述べた。
「控訴裁も認めているように、今回の異例の判断は『判決を確定するだけのために』下されたものであり、本当の法的判断はニューヨーク州上訴裁判所に委ねられた」
「この判決から、はっきりした結論を得るのは難しい。(中略)結局のところ『ジェイムズ対トランプ』の最終的な結果を知るには、さらに待つ必要があるということだ」と、トーマス氏は説明した。
ニューヨーク州の控訴審を専門とするベテラン弁護士のマーク・ザウダラー氏は、異例なほど長文の21日の判決は、現職大統領が関与するとされる大規模な詐欺事件をどう扱うべきかという問題が、いかに歴史的な課題かを反映するものだったと話す。
「裁判にかけられているのがドナルド・トランプではなく、一般のビジネスマンだったら、意見の部分が300ページにもなっただろうか」











