温暖化抑制の取り組みは「今しかない」 IPCCが報告書で危機感
マット・マグラス環境問題担当編集委員

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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は4日、危険な気候変動の根本原因は抑制できるとし、その計画を明らかにした。
IPCCはこの日、新たな報告書を公表。二酸化炭素(CO2)の排出について、「素早く、深く、即時の」削減が必要だとした。
また、最悪の影響を回避するには、CO2の世界的な排出量を3年以内に減少に転じさせる必要があると指摘した一方、それができても、今世紀半ばまでには大気中のCO2を取り除く技術も必要になるだろうとした。
今回の報告書は、科学者や政府が一行ごとに議論し、承認作業を経て公表された。極めて危険な未来を避けるため、世界に何ができるかの指針を示している。
今世紀中に3.2度上昇
まず、悪い知らせを紹介する。各国政府が2020年末までに示した炭素削減の取り組みが完全に実施されても、世界の気温は今世紀中に摂氏3.2度上昇する。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、このことに強い憤りを表明した。

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「政府と企業のリーダーたちは言うこととやることが別だ。率直に言えば、みんなうそをついている。その結果は破滅的なものになる」
また、この種の気温上昇は、地球に「前例のない熱波、恐ろしい嵐、広範囲の水不足」をもたらすだろうとした。
その運命を避けるためには、世界は今世紀の気温上昇を1.5度以下に抑える必要があると、研究者たちは主張する。
対策は可能
一方、いい知らせとしては、グテーレス氏の言う「実行可能で財政的に健全な方法で」対策が取れることを、今回の最新報告書は示していることが挙げられる。
ただ、気温を下げ続けるには、エネルギーの生産、産業、輸送、消費パターン、自然との接し方を大幅に変える必要がある。
IPCCによると、気温上昇を1.5度以下に抑えることは、私たちが行動や購買、使うことや食べることのすべてによって排出される炭素排出のピークを2025年までに迎えるようにし、それ以降は急激に減らして、今世紀半ばまでには差し引きゼロにすることを意味する。
これはつまり、世界が過去10年間に排出したCO2の量は、温度上昇をめぐる重要目標を達成するために、私たちに残されている排出量と同じということだ。
オランダ・アイントホーフェン工科大学で社会技術革新と気候変動を研究し、IPCCの筆頭著者であるヘリーン・デ・コーニンク教授は、「今回の報告書は、温暖化を1.5度に抑えることについて、今やるしかないというところに私たちが来ていることを示していると思う」とBBCニュースに話した。
「温室効果ガスの排出を2025年までにピークにし、それ以降はかなり急速に減らす必要がある」
「2050年を過ぎてすぐの今世紀後半には、温暖化を1.5度に抑えるため、ネガティブ・エミッションか、二酸化炭素の除去をしなければならないだろう」

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研究者らは、今後数年が重要だと話す。2030年までに排出量を抑えなければ、今世紀後半に温暖化を抑制することはほぼ不可能になるからだとしている。
短期的にみたときに鍵を握るのは、エネルギーの生成方法だ。幸いなことに、ソーラーパネルや風力発電のコストはかつてないほど安い。この10年間で価格が約85%下がっている。
IPCCの承認会議にオブザーバーとして参加した環境団体グリーンピースのカイサ・コソネン氏は、「戦争と気候混乱の両方をあおっている化石燃料は、もうおしまいだ」と述べた。
「新たな化石燃料開発の余地はなく、現在の石炭やガスのプラントは早期に閉鎖する必要がある」
報告書の著者たちは、食生活やライフスタイルも変わる必要があると指摘。炭素の大幅削減を目指すべきだとしている。
「適切な政策、インフラ、技術を導入し、ライフスタイルや行動を変えれば、2050年までに温室効果ガスの排出を40~70%削減できる。大きな可能性を秘めている」と、IPCC共同議長のプリヤダルシ・シュクラ氏は話した。
「ライフスタイルの変化で私たちの健康と福祉が向上することは、証拠によって示されている」
このことは現実には、歩くことや健康的な食事を奨励し、電気自動車のインフラを整備することに、政府がもっと力を入れることを意味する。
この報告書の中で最も議論を呼んでいるのは、大気中のCO2の除去についてだ。
これは植林や、農業の手法を変えるなど、さまざまな方法で行うことができるという。

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だが今回の報告書は、温暖化が危険な1.5度を超えないようにするには、新しい森林をつくる以上のことが必要になるとしている。
気温を下げ続けるには、大気中からCO2を直接除去する装置が必要になる。
そうした技術は新しく、現時点では非常に高価であるため、議論が大きく対立している。
IPCCの検討に参加した人の中には、このような方法がうまくいくのか、かなり懐疑的な人もいる。
「素早く排出を削減し、大規模なネガティブ・エミッション技術を開発するという考えは心配だ」と、承認会議にオブザーバー参加した英ユニバーシティ・コレッジ・ロンドンのアーサー・ピーターセン教授は話した。
「この報告書には多くの幻想がある」









