国連の気候変動報告書、生活への影響に言及へ 28日発表
マット・マグラス環境担当編集委員

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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、28日に温暖化が日常生活に与える影響について報告書を発表する。
14日に始まった今回のIPCCは、昨年11月に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の終了後、初めてのもの。
IPCCは各国政府に代わり、6~7年ごとに最新の研究結果を元にした大規模な調査を行っている。基礎科学と影響の規模、問題解決の道筋の3つの部門の作業部会に分かれる。28日に発表される報告書はこのうち、影響の規模を調査したものとなる。
報告書は、多くの大都市と途上国の気候変動対策について、将来的な排出削減やネットゼロ達成ではなく、短期的な脅威への対応が中心になると指摘する見通し。
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世界40都市が気候変動対策のために結成した「C40」グループのマーク・ワッツ会長は、「喫緊の問題が常に優先される。大量の移民や大規模な洪水などへの対応が必要な時は、そこが焦点になる」と話した。
「南半球では現在、都市単位の気候変動対策基金というものがない状態だ。たとえあっても、対応できていない。比較的排出量の低い低所得国に、さらに排出削減を求めている。既に実感している影響について、適応方法を探るのではなく」

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IPCC調査に携わる科学者らは全員有志で、最新の研究結果を要約するために何千もの論文を精査したり執筆したりしている。
その後、政府担当者と内容を一行一行、事細かく精査していく。その作業を経て合意が取れた後に、短い報告書が公表される。
報告書では、温暖化によって今後起こり得る「転換点」についても説明される見通し。その中には、グリーンランドの氷床の瓦解など、元に戻らない事象も含まれる。
さらに、気候変動の技術的解決策にも触れるが、太陽放射の管理や大気中の二酸化炭素排除といった技術については、効果を否定することになると見られている。
全体としては、気候変動について何ができるかという科学的事実以上に、広い範囲をカバーするものになるという。

気候変動への適応策

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2400万人が住むナイジェリア・ラゴスは、アフリカ大陸で最も人口の多い都市だが、同時に洪水と海面上昇に弱い地域にある。運河や河川の廃棄物問題が、状況をさらに悪化させている。
こうした問題を解決することが、気候変動による変化への対応につながるという。
C40のマーク・ワッツ会長は、「ラゴスで洪水の影響を軽減する策の一つに、ごみ処理システムを制御することが挙げられる」と指摘する。
「地域や家庭のごみを適切に収集し、処理するシステムに投資することで、一石二鳥の効果が得られる」
世界自然保護基金(WWF)のスティーヴン・コーネリアス博士は、「(IPCCの)報告書では、社会正義や持続的な開発について紙面が割かれる。西側の科学について述べるだけでなく、先住民族の知恵や伝統的な手法も語られる」と話した。
「これは、人々と自然への影響、彼らが直面するリスクと、順応の限界についての報告書だ」

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言葉をめぐる争い
しかし、科学者や政府関係者が報告書の詳細を詰めている中、文書内のあるキーワードについて論争が起きている。
途上国は長年、国連の気候変動交渉で富裕国に対して、「損失と損害(loss and damage)」と呼ばれる問題への対応を求めてきた。
途上国側は「損失と損害」を、大嵐などの異常気象や、海面上昇や砂漠化といった緩やかに進行する変化など、その国が適応できない気候変動による影響と定義している。
一方で富裕国は、長年の歴史的な二酸化炭素排出による影響について、法的・経済的責任を負うことを恐れ、この定義を認めていない。
その結果、気候変動をめぐる交渉では、この問題が大きな政治的分断につながっている。
28日に発表されるIPCC報告書は、「損失や損害など(losses and damages)」という、微修正した語句を使おうとしている。担当者たちは、この表現にすれば、これまでと意味が変わり、政治性が薄まると話す。
それでも一部の富裕国の政府代表は、報告書の承認作業の中でこの語句の使用を拒否した。この概念が重要な報告書に採用されてしまえば、「喪失と損害」を国際交渉の最重要課題にしたい諸国を後押しすることになると、富裕国は懸念している。

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最終的には、今回の報告書は緊急性を訴えるものになる見込みだ。温室効果ガスを削減する対策を迅速に実施し、気候変動に順応する人々への金銭的支援を拡大すれば、最悪のリスクは避けられると、前向きに呼びかけるものになるという。
しかしこの前向きな希望は、政治の現実と、天秤(てんびん)にかけなくてはならない――。IPCC共同会長を務めるハンス=オットー・ピュルトナー教授はこう言う。
「これまでの報告書の経験から、大事なことがひとつ判明している。気候変動対策については、政治的意志の有無が、持続可能な未来のボトルネックなのだ」










