ウクライナめぐりロ仏と米独、それぞれ首脳会談 パイプライン稼働への影響も

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緊迫するウクライナ情勢をめぐり、欧米では7日、外交活動が相次いだ。モスクワではウラジーミル・プーチン大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が会談し、マクロン氏が戦争回避の重要性を訴えた。アメリカではジョー・バイデン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相が会談し、バイデン氏はロシアがウクライナに侵攻した場合はロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」計画は「終わらせる」と述べた。
「戦争回避」の希望伝える
マクロン氏は7日、モスクワでプーチン氏と会談。プーチン氏はマクロン氏がウクライナの「危機解消」のため努力を重ねていることを称賛した。
マクロン氏は「戦争を回避」したいと伝え、こうした高官会談を通じて緊張を緩和し、「全員にとって信頼と安定と透明性の要素」を築き上げていきたいと話した。
ウクライナをめぐる緊張状態が昨年末に悪化し始めて以来、西側主要国の政府首脳がプーチン氏に対面するのは初めて。
両大統領は5時間かけて夕食を共にしながら、会談した。マクロン氏は記者団に、今から数日間が「決定的」なものになるとして、「私たちが一緒になって徹底的に話し合っていくことが必要」だと述べた。
プーチン大統領はマクロン氏の提案の一部が「合同で取り組む今後の措置の基礎になり得る」としつつ、内容に触れるのは「おそらくまだ時期尚早」だと述べた。
プーチン氏はさらに、仮にウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟各国と共にクリミア半島の奪還を図るようなことがあれば、欧州が大規模な紛争に引きずり込まれる危険があると、以前の警告を繰り返した。フランスからモスクワ入りした記者団にプーチン大統領は、「フランスがロシアと戦うことを、君たちは願っているのか?」と問いただし、「そういう展開になってしまう。その場合、勝者などいない」とくぎを刺した。
フランスは現在、欧州連合(EU)の輪番制の議長国。マクロン氏は8日にウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かい、ウロディミル・ゼレンスキー大統領と会談する予定で、さらにその後、プーチン氏と再び会談する方針という。
フランスでは今年4月に大統領選が控えている。
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プーチン大統領との会談に先立ち、マクロン大統領は仏日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュに対して、ロシアの目的は「ウクライナではなく、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)相手のルールの明確化だ」と述べた。
マクロン氏は、ロシアの現在の懸念に理解を示しつつ、欧州同胞の主権と平和を守ることができる「新しい均衡」の提案が必要だとした。その一方で、ウクライナの国家主権は揺るぎなく、議論の対象になるものではないともあらためて述べた。
マクロン氏はこれまでもロシアとの関係再構築を呼びかけ、今年1月にはアメリカに依存するのではなく、EUが独自にロシアと対話するべきだと主張していた。
侵攻ならパイプラインは

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ドイツ首相に就任後、初の訪米となるショルツ氏は、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。ショルツ首相について、ウクライナ情勢への対応が消極的だと批判する声もある。
会談後の記者会見でバイデン氏は、パイプライン「ノルド・ストリーム2」についての質問に答えて、「もしロシアが侵攻するなら、あらためて言うが、ノルド・ストリーム2は実現しない。我々が計画を終わらせる」と述べた。
ただしバイデン氏は詳細には触れなかった。ドイツの管理下にあるパイプライン事業を実際にどうやって終わらせるのかとの質問には、「我々にはそれができる。約束する」と述べるにとどまった。
一方のショルツ首相はパイプラインの実現について言明を避けたものの、もしロシアがウクライナに侵攻するなら対ロ制裁を発動させることについて、米独は「完全に一致」していると強調。「我々は同じ措置をとる。そしてそれはロシアに対して、きわめて厳しいものになる」と述べた。
さらにAP通信によるとショルツ氏は記者団に、「ロシアが計算している以上のことが起こり得るのだと、ロシアが理解する」ことが重要だと話した。
全長1225キロのノルド・ストリーム2は、総工費110億ドル(1兆2700億円)で、着工から5年かかって完成した。バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつなぐ。ロシアからドイツへ送られる天然ガスはこれで倍増する計画。
ただし昨年11月の時点でドイツの規制当局が、パイプラインの運営会社がドイツの法律に準拠する必要があるとして、承認手続きを一時停止したため、まだ操業していない。

欧州では多くの主要企業がノルド・ストリーム2に巨額投資をしてきた。一方で、環境団体などはドイツの化石燃料が続き、気候変動対策に逆行すると批判。エネルギー供給において、欧州諸国のロシア依存が高まることを懸念する声もある。
ウクライナのゼレンスキー大統領はかつて、パイプラインは「地政学的に危険な武器だ」と指摘していた。
「ロシアはいつでもウクライナを侵攻」=米高官
米政府のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は6日、ロシアはいつウクライナを侵攻してもおかしくないとあらためて警告した。
サリヴァン補佐官は米FOXニュースに対して、「今はそういう段階だ。ロシアは一両日中にウクライナに対して軍事行動をとるかもしれないし、それは数週間後になるかもしれない」と話した。
このほかロイター通信によると、米高官2人が匿名を条件に、ロシアはウクライナに対する全面侵攻に必要な軍事力の7割をすでに配備したと話した。高官2人は、地面が凍るなどの気象条件から、2月15日から3月末にかけてロシアにとって軍の装備移動に理想的な条件が整うと話している。
ロイター通信によると高官たちは、ロシアがウクライナを侵攻すれば最大5万人の民間人が死亡する恐れがあるとみている。高官たちは、ロシア軍は攻撃開始から数日中に首都キーウを陥落させられるとし、数百万人が避難する事態になれば欧州で難民危機が発生すると警告した。
これに対してウクライナのドミトロ・クレバ外相は6日、「終末的な予測を信じないように」とツイッターで書いた。「各国の政府はそれぞれが別々のシナリオを描いているが、ウクライナはどのような展開にも対応できる準備がある」として、今すぐ侵攻が始まるかのような言説に対して慎重な姿勢を示した。
ロシアはウクライナ国境に兵10万人以上の部隊や装備を集結させたとされているものの、ウクライナを侵攻するつもりはないとの主張を続けている。
ロシア政府はこの間、NATOの不拡大を求め、ウクライナの加盟を認めないことや東欧からのNATO軍撤収などを、欧米に要求している。
欧米諸国はこうしたロシアの要求を拒否したものの、米政府は代わりに、欧州での軍事演習やミサイル配備の制限、新戦略兵器削減条約(新START)の後継体制に関しては協議の余地があることを伝えた。
ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合し、東部ドンバス地域で活動する親ロ勢力を支援してきた。独仏などの仲介で、ロシアとウクライナ、分離派武装勢力が2014年から2015年にかけて、ドンバスでの紛争解決に向けてミンスク合意を締結。ロシアは、ウクライナがこのミンスク合意を履行していないと主張している。ドンバスでは、ウクライナ軍と親ロ分離独立派による紛争によって、2014年以降1万4000人が死亡したと推定されている。








