ドイツ、ロシア産ガスの供給承認手続きを中断 欧州のガス価格が急上昇

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ドイツ連邦ネットワーク庁は16日、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の承認手続きを一時停止すると発表した。これにより、イギリスと欧州連合(EU)でガスの卸売価格が17%上昇した。パイプラインをめぐっては、欧州のロシアへのエネルギー依存度が高まるのではないかとの懸念が上がっている。
連邦ネットワーク庁は、100億ユーロ(約1兆3000億円)規模のプロジェクトを承認するには、パイプラインの運営会社がドイツの法律に準拠する必要があるとしている。
「ノルド・ストリーム2」は9月に完成したが、その建設にはたびたび遅れが生じていた。
このパイプラインはバルト海底を経由して、ロシア産天然ガスをドイツに直接運び込むもの。モスクワからドイツへの天然ガス輸出量が倍増する一方で、これまで既存のパイプラインの経由地として利益を得ていたウクライナなどを通過しなくなるため、こうした国は大打撃を受けることになる。
ドイツ企業は全長1225キロのノルド・ストリーム2に多額の投資をしており、ゲアハルト・シュレーダー元独首相もその開発に大きな役割を果たしてきた。
ガス価格は、今回このプロジェクトが足止めされるよりも前から高騰していた。昨冬に欧州を襲った厳しい寒さがガス供給をさらに圧迫したことで、ガスの貯蔵量は通常よりもはるかに減っている。
政治的武器
ドイツ連邦ネットワーク庁は、「ノルド・ストリーム2パイプラインの運営者を承認できるのは、その運営者がドイツの法律に基づいて、法的形式で組織されている場合に限られる」と説明した。
今回の決定を受け、このプロジェクトの稼働は数カ月遅れることになりそうだ。また、ドイツの承認以外に欧州委員会の許可も必要となる。
同庁は、スイスにあるノルド・ストリーム2の親会社から、同パイプラインのドイツ区間を所有・運営するドイツの子会社に「主な資産と人材」が移されるまで、承認手続きを中断するとしている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ノルド・ストリーム2は「危険な地政学的武器」だとして反対している。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は今週、「ロシアの炭化水素を新しい巨大パイプラインでこれ以上増やすのか、あるいはウクライナを支持して平和と安定の大義を唱えるのか」、その選択が迫っていると述べた。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相代行は先日、ロシアがパイプラインを利用してウクライナに影響を与えようとすれば、さらなる制裁を科す可能性があると述べた。
ウクライナの国営ガス会社「ナフトガス」は、ドイツがパイプラインの承認手続きを停止したことを歓迎している。ポーランドのガス会社「PGNiG」は、供給の安全性を確保するため、エネルギー問題についてEUが連帯するよう呼びかけた。
ノルド・ストリーム2・コンソーシアム(共同事業体)は、ガス輸出に遅れが生じる可能性についてコメントを避けた。
EUガス指令では、ガス生産者とパイプラインの所有会社は、別でなくてはならない。

ドイツのユニパーやBASF傘下ウィンターシャルのほか、英蘭石油大手シェル、オーストリアのOMV、仏エンジーなど複数の欧州企業がノルド・ストリーム2に出資している。
独政府は「天然ガスは今後数十年にわたってドイツのエネルギー供給に大きく貢献し続けるだろう」と予想し、「他の化石燃料に比べてCO2排出量が少なく、気候問題にもやさしい」としている。
しかし、独環境保護団体「Deutsche Umwelthilfe」などは、人為的な気候変動との戦いにおけるドイツの排出量削減目標とは相いれないとして、ノルド・ストリーム2に反対している。







