ジョコヴィッチ選手、豪から出国 ビザ取り消し不服申し立てを裁判所認めず

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テニス界のスター、セルビア出身のノヴァク・ジョコヴィッチ選手(34)は16日、全豪オープン出場のためメルボルンの裁判所に起こしていた訴えを退けられたため、国外退去させられた。選手は同日夜、メルボルン空港からドバイ行きのエミレーツ航空便に搭乗。 EK409便は午後11時(日本時間午後9時)前にメルボルン空港から離陸した。
ジョコヴィッチ選手の査証(ビザ)を取り消した豪政府のアレックス・ホーク移民担当相は16日夜、同選手が出国したと声明を発表。選手の訴えを退けた「オーストラリア連邦裁判所による本日の、全員一致の決定を歓迎する」と述べた。
ホーク移民担当相はさらに、「パンデミックの最中の強い国境保全が私たちを守り、有数の低い死亡率、有数の強い経済回復、世界有数の高いワクチン接種率につながった。強固な国境保全政策は、オーストラリア社会の結束維持にとって基本で、パンデミックにおいてその社会の結束は引き続き強くなっている」とコメント。また「この状態にたどりつくためオーストラリア人が払ってきた多大な犠牲」をたたえた。

スコット・モリソン豪首相は、「この国の国境を強固なまま維持し、オーストラリア人の安全を守るための決定」を歓迎した。
「非常に残念」
ジョコヴィッチ選手は全豪オープンのタイトルを防衛し、四大大会21回優勝の単独最多記録を樹立しようとしていた。しかし、新型コロナウイルスのワクチン未接種でのオーストラリア入国が最終的に認められなかった。
選手は裁判所の決定後、「非常に残念」だとコメントしたものの、「この国からの帰国に関して、関連当局に協力する」として、豪連邦裁判所の判断を尊重すると述べた。
一方、ジョコヴィッチ選手を擁護し続けていたセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、「医療上の免除を提案されたから(ジョコヴィッチ選手は)オーストラリアへ向かったのに、オーストラリアはそれから10日間も彼を粗末に扱った。なぜこんなことをしたのか? 彼に対して魔女裁判を。こんなこと誰にも理解できない」と豪政府を批判した。
全豪オープンは17日に開幕する。ジョコヴィッチ選手は同日、初戦に臨む予定だった。セルビアのミオミル・キツマノヴィッチ選手との試合には代わりに、世界ランキング150位のサルヴァトーレ・カルーソ選手(イタリア)が出場する。
ランキング1位のジョコヴィッチ選手は声明で、全豪オープンの「選手、大会関係者、スタッフ、ボランティア、ファン」に対して、「成功を祈る」とコメントした。
選手の出国に先立ち、男子プロテニス協会(ATP)はこの日の審理結果について、「きわめて残念な一連の出来事」の区切りになったと声明を出した。
ジョコヴィッチ選手とお互い幼いころから知り合い同士のアンディー・マリー選手(イギリス)は、誰にとっても「良くない」状況だとBBCに話した。「何もかもがぎりぎり直前に決まった感じがする。だからこんなにぐちゃぐちゃになったんだ」。
政府決定の合法性認める

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ジョコヴィッチ選手は新型コロナウイルスのワクチン未接種のまま、ヴィクトリア州政府や豪テニス協会が委託した医療パネルから入国を認められ、5日深夜にメルボルンに到着した。しかし6日午前にメルボルンの入管当局によっていったんビザを取り消され、身柄を拘束された。
選手側の訴えを受けたメルボルンの裁判所は10日、入管当局の対応に不備があったとして、政府の決定を覆し、入国を認めていた。しかし、豪連邦政府は14日夕、選手を再び取り消し、身柄を拘束すると決定。選手はこれを不服として、あらためて滞在を認めるよう連邦地裁に訴えていた。
アレックス・ホーク移民担当相は、「ジョコヴィッチ氏が保有するビザを、保健衛生と良好な秩序のために取り消した。そうすることが公共の利益にかなうと判断した」とビザ取り消しの理由を説明していた。ジョコヴィッチ選手の入国を認めれば、国内の反ワクチン派を勢いづけることになるとも主張した。選手の弁護団は政府のこうした主張が「無効で非論理的」だと反論していた。
判事3人による16日の連邦地裁審理は、弁護団の訴えを退けた。ジェイムズ・オルソップ裁判長は、裁判所の判断はホーク移民担当相の決定の合法性に関するもので、政府決定の「正しさや見識について判断したものではない」と説明した。
今回の判決の詳しい理由は後日発表する方針という。
厳しい感染対策が実施されたオーストラリアでは、ワクチン未接種で入国しようとしたジョコヴィッチ選手への反発が高まっていた。政府は感染対策について、誰も特別扱いはしないと繰り返していた。
陽性判定後の行動は
ジョコヴィッチ選手は12日、新型コロナウイルス検査で昨年12月に陽性と判定された後、隔離ルールを破ったと認め、「判断の誤り」だったと表明。先月16日のウイルス検査で陽性と分かり、その2日後にジャーナリストと会っていたと明らかにした。
ジョコヴィッチ選手は6日に拘束されるまで、自分のワクチン接種の有無について公言していなかったが、メルボルン入管当局との面接記録では、自分がワクチンを受けていないと認めている。この時のやりとりで選手は、2020年6月と2021年12月16日に計2回、新型コロナウイルス陽性と検査で確認されたと話している。選手はPCR検査結果の写しを提出。そのうちの1通は2021年12月16日に発行されたものだった。この翌日に選手は、公開イベントに出席し、マスクをつけていない状態で撮影されていた。
ジョコヴィッチ選手はまた、オーストラリア入国の際、代理人が申告書の最近の渡航歴に関する部分で記入ミスをしたと、インスタグラムの投稿で説明した。
「チェック印を付ける場所を間違うという事務的なミスを、代理人は心からわびている」、「うっかりミスであり、決して意図的なものではない」と選手は書いていた。
現地メディアは11日、ジョコヴィッチ選手が入国時、虚偽の申告をした疑いがあると報じていた。同選手は過去14日間の渡航歴はないと申告書に記したが、ソーシャルメディアの投稿から、当該期間にセルビアとスペインの2カ国にいたことがうかがえるという報道内容だった。









