オミクロン株の「大きな感染の波」、来年1月にイギリスで起きる可能性=英研究
ジェイムズ・ギャラガー、保健・科学担当編集委員

画像提供, Getty Images
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が各国で確認される中、イギリスの研究チームは11日、感染対策を今以上に強化しなければ、イギリスは来年1月にオミクロン株による大きな感染の波に直面することになるとの見方を示した。
科学者たちによると、新型ウイルスワクチンの効果次第では、来年4月末までに2万5000人~7万5000人がオミクロン株で死亡する可能性がある。
ただ、今回の研究に携わった専門家たちは、このモデリングにはまだ不確実性があるとしている。
研究に関わっていない科学者たちは、同研究の最悪のシナリオが起きる可能性は低いとしている。
今回発表された研究は、英政府への助言も行う、英ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)の有力な疾患モデル研究グループによるもの。同研究は将来を占うものではなく、オミクロン株によってこうなるという断定はしていないが、起こり得る様々な結果を挙げている。
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この研究は、オミクロン株はワクチンを接種していれば重症化しにくいという仮定に基づいて行われた。英政府が現在掲げている新型ウイルス追加対策「プランB」も考慮された。プランBでは公共の場でのマスク着用の義務付けや、在宅勤務の推奨、イベント参加時の接種証明の提示の義務付けなどが含まれる。
研究者たちは、ブースター(追加免疫)接種を受けた人が多ければ、オミクロン株による影響が軽減される可能性が高いとしている。
今回の研究結果に先立ち、イギリスは11日、新たに5万4073人の感染が確認され、その内633人はオミクロン株に感染していたと発表した。実際のオミクロン株への感染はこれよりずっと多いと推定されている。
「大規模な感染の波」の可能性
研究チームのメンバーの1人、ニック・デイヴィス博士は、オミクロン株は「非常に速いスピードで」広がっており、「かなり気がかり」だとし、年末までにイングランドでオミクロン株が主流になる可能性が高いと指摘した。
研究結果によると、イングランドでは現在、2.4日ごとに感染者数が倍増しているという。
つまり、イングランドのワクチン接種率は高いにも関わらず、ウイルスへの防御を誰も獲得していない中で従来株が広まった頃よりも、速いスピードで感染が拡大していることになる。
デイヴィス博士は、「我々がいま直面していることを考慮すると、イギリスでオミクロン株による大規模な感染の波が起きることが予想される」と述べた。
最悪の場合には、病院のひっ迫を阻止するために、現在イギリスで実施されている措置に加えてさらに厳しい制限が必要になるかもしれないという。
研究者たちは今回、オミクロン株に対する新たな制限を導入した場合の影響を調べた。ただ、より厳しい制限は人々の身体的・精神的なウェルビーイング(人が健康で幸せな、良好な状態にあること)にとって「ひどい負担」になるため、慎重に検討する必要があると、デイヴィス博士は指摘した。
最も悲観的なシナリオの場合、英国民保健サービス(NHS)に極度の負荷をかけないよう、私たちが誰に会うのかを制限したり、営業を続ける事業を制限したり、可能な限り自宅に留まるなどの措置が必要になる可能性があると、今回のモデリングは警告している。
イギリスがどのような状況へ向かいつつあるのか、明確に判断するには今以上にデータが必要となる。

考え得るシナリオとは
最も楽観的なシナリオは、オミクロン株の免疫回避能力が低く、ブースター接種に高い効果があると想定。12月1日から来年4月30日までのイングランドの状況を次のように予測した。
- 感染者数:2090万人
- 入院者数:17万5000人
- 死者数:2万4700人
最も悲観的なシナリオは、オミクロン株の免疫回避能力が高く、ブースター接種の効果は低いと想定し、同期間のイングランドの状況を次のように予測した。
- 感染者数:3420万人
- 入院者数:49万2000人
- 死者数:7万4900人

より厳しいルールを?
研究メンバーのロザンナ・バーナード博士は、「私たちの最も楽観的なシナリオでは、2022年初頭のオミクロン株の影響は、在宅勤務など軽度の対策で軽減されるとみられる」とした。
「一方で最も悲観的なシナリオでは、NHSがひっ迫しないよう、私たちはより厳しい制限に耐える必要があるかもしれないと、示唆されている」
「マスクの着用、社会的距離の確保、ブースター接種は重要だが、それだけでは不十分かもしれない」
「またロックダウンを経験したいと思う人などいない。だが、オミクロン株の免疫回避能力や感染力がデルタ株より強いなら、医療サービスを守るための最後の手段が必要になるかもしれない」
一方で感染症が専門の英イーストアングリア大学のポール・ハンター教授は、最も悲観的なシナリオが起きる可能性は低いが、それでも「感染者や入院患者、死者は相当数増える」だろうと述べた。
「イギリスが置かれた状況の中で、オミクロン株の深刻さをどれほど軽減できるのかについては、まだ大きな不確実性が残されている」
最も不確実なのは、ワクチン接種やブースター接種でどれくらい入院を防げるのかという点だ。
英健康安全庁(UKHSA)の初期段階の調査では、2回のワクチン接種ではオミクロン株の症状に対する防御効果は限定的だが、ブースター接種を受けると新型ウイルス感染症COVID-19の症状を防ぐ確率が75%に上がることが示された。
2021年1月の感染のピーク時には、7日間平均の感染者は1日あたり約6万人、死者は1200人以上だった。
英政府の対応は
オンラインで公開された今回の研究は、ほかの科学者による査読を受けるための正式なプロセスはまだ経ていない。
デイヴィス博士は、迅速なウイルス検査「ラテラルフロー検査」の実施「頻度を今よりはるかに上げ」、より多くの人が受けられるよう検査規模を拡大させたいという。
この冬に混雑した場所へ出かけたり、人と交流する予定がある人に事前のラテラルフロー検査を行うよう、すでに呼びかけが始まっている。検査キットはオンラインで無料で注文できるほか、地域の薬局でも受け取れる。
英政府は今回の研究結果を受け、今後も新たなデータを全て注視していくとした。政府は8日に新たな新型ウイルス対策を発表したばかり。
英政府の報道官は、「重要なワクチンとブースター接種が、新型ウイルスに対する最善の防衛策だと、我々は初めから一貫して明確にしてきた。だからこそ、接種対象となった人にはできるだけ速やかに前向きに接種に取り組むよう求めている」と述べた。
「プランBは、いま持ち合わせている情報に基づく適切な対応だ。なので、フェイスカバーを着用し、可能であれば在宅勤務をし、要請があればブースター接種に前向きに取り組むなど、ルールを守ることを全ての人に奨励する」
英エディンバラ大学の免疫学・感染症学教授、エレノア・ライリー氏は、オミクロン株は急速に広まっているため、「隠者のように社会から離れた生活を送っていない限り」今後数週間のうちにオミクロン株に感染した人と接触する可能性は非常に高いとした。
また、南アフリカからの事例報告にあるように、オミクロン株の症状がほかの変異株と比べて軽いとしても、「多くの人がこのウイルスに遭遇すると考えると、例え大勢の中のごく一部だったとしても、大勢が入院することを意味する」とした。










