英イングランドで感染対策を強化へ 在宅勤務やマスク着用

画像提供, PA Media
イギリス政府は8日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」の流行を防ぐため、イングランドに新たな制限を設ける方針を発表した。在宅勤務が推奨され、公共の場ではマスクの着用が義務付けられるほか、ナイトクラブや大型施設への入場にはワクチン接種証明が必要となる。
ボリス・ジョンソン首相は記者会見で、政府が追加の新型ウイルス対策に動き出していると説明。「これはロックダウンではない、プランB(二次策)だ」と語った。
オミクロン株については、なお調査中だが全体像が見えてくるだろうと述べた一方、「入院患者、そして残念ながら死者が急増する可能性もある」と話した。
ジョンソン首相によると、オミクロン株はデルタ株よりも「急速に広がっており」、新規感染者が2.5~3日ごとに2倍になる可能性もあると指摘した。
イギリスでは現時点でオミクロン株への感染が568件報告されている。しかし保健当局は、実際の感染者はその20倍に近い1万人に達しているとみている。
8日の新型ウイルス全体の新規感染者は5万1342人、陽性判明から28日以内に亡くなった人は161人だった。
<関連記事>
イングランドでの「プランB」は以下の通り。
- 10日から:劇場や映画館など公共の場でのマスク着用を義務付け
- 13日から:可能な場合は在宅勤務を推奨
- 15日から:ナイトクラブや、座席のない収容人数500人以上の屋内施設、座席のない4000人以上の屋外施設、観客1万人以上のイベントで、国民保健サービス(NHS)が発行するワクチン接種証明アプリの提示を義務付け
なお、結婚式や葬式、宗教的な祈りの場に参加する場合には、ワクチン接種証明は必要ない。
ジョンソン首相は、クリスマスのパーティーやイエス・キリストの生誕を祝う演劇といった行事は、ガイダンスを守りながら開催されるべきだと述べた。
「できるだけ通常通りのクリスマスを迎えるには、プランBが最善の方法だ」
ジョンソン政権の閣僚らは繰り返し、イングランドでロックダウンを行う予定はないと述べている。
「今回は首相もルール守って」
サジド・ジャヴィド保健相は下院で、来週にも新ルールについて審議・投票を行うことになると説明した。
これに対し、与党・保守党の一部議員からは厳しい制限に反対する声が上がった。
一方、最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、プランBを歓迎すると述べた上で、「今回は首相も自分で作ったガイダンスを守ってほしい」と述べた。
ジョンソン政権をめぐっては、厳しいパンデミック対策が敷かれていた昨年12月に、首相官邸で多人数のクリスマスパーティーが開かれていたことが問題となっている。
また、アレグラ・ストラットン首相報道官(当時)が記者会見を想定し、このパーティーに関する冗談を言っている映像が流出。ストラットン氏は発言を後悔しているとして、首相顧問の辞任を表明した。
ジョンソン首相は8日、下院でこの動画について謝罪したものの、パーティーはなかったという主張を繰り返した。ロンドン警視庁は、証拠が不十分なことから、この件については捜査しないとしている。
ジョンソン首相はまた、この一件から世間の目をそらすためにプランBを発表したのではないかという見方を否定。公衆衛生を守るためのルール導入を遅らせたくなかったと述べた。
オミクロン株向けのワクチン開発も
ジャヴィド保健相は、オミクロン株向けワクチンの試験を「数週間以内」に始められるだろうと述べた。しかし世界保健機関(WHO)は、既存のワクチンでもオミクロン株による重症化は防げるとしている。
科学者らは、オミクロン株はデルタ株よりも感染力が高く、デルタ株に代わってイギリスでの主流株になる可能性があるとみている。
しかしこの変異株については詳細がまだ分かっておらず、重症化の度合いや既存のワクチンの効力などが判明するには数週間かかるという。
イギリス政府は先週、イングランド市民に対し、オミクロン株と接触した可能性のある場合にはワクチン接種の有無にかかわらず10日間の自主隔離を義務付けた。
なお、ウェールズとスコットランド、北アイルランドではすでに、プランBと同様の制限が敷かれている。各種施設の利用にも、ワクチン接種証明が必要。
スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン第一首相は、人々にルールを守るよう訴え、「政治家に怒りを感じていたとしても、あなたや愛する人、そしてスコットランドの健康と安全のために、コンプライアンス(法令順守)が重要だということは覚えていてほしい」と述べた。

<分析>ニック・トリグル、BBC保健担当編集委員
今回発表された感染対策は、オミクロン株の流行を阻止するものでも、感染者数を減らすものでもない。
プランBは、ウイルスの広がりを遅らせるものだ。大きな懸念となっているのは、急激な感染拡大によって入院患者が増え、NHSを圧迫することだ。
オミクロン株の症状は比較的、軽いとの説が出ている。再感染やワクチン接種後の感染になるため、重症化する可能性が低いという。
しかし感染が急速に広がれば、入院患者数も増えるリスクはなおある。重症度が半分でも、感染率が2倍以上であれば、より多くの人が病院で治療を受けることになるだろう。
プランBでは、感染のピークをなだらかにし、遅らせることが求められている。その間にワクチンのブースター(追加)接種が増え、オミクロン株に対するワクチンの有効性が明らかになることで、感染拡大に大きな違いを生み出せるかもしれない。













