イギリスで全成人にワクチン追加接種を提供へ 2回目からの間隔も短縮

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新型コロナウイルスの新しい変異株オミクロン株への予防策として、イギリス政府の諮問機関「ワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)」は29日、国内のすべての18歳以上にワクチンのブースター(追加接種)を提供するよう提言した。
JCVIは政府への提言で、18歳以上の追加接種については、2回目の接種と追加接種の間隔を最短6カ月から3カ月に短縮するべきだとした。さらに、12~15歳の子供には、2度目の接種を提唱すべきだと提言した。
11月中旬に南アフリカで検知されて間もないオミクロン変異株は、従来株やこれまでの変異株より感染力が強いとされているものの、ワクチンの効果が分かるまでには約3週間はかかると専門家たちは見ている。
イングランド副主任医務官のジョナサン・ヴァン・タム教授は首相官邸で記者会見し、オミクロン株を「新顔」と呼び、「心配が増す変異株がいつか登場するのは、ずっと分かっていた」と述べた。
「ワクチンの効果がある程度下がる可能性はかなり高いし、もしそうなった場合は、感染そのものを防ぐ効果への影響にとどまってもらいたい。できれば重症化を防ぐワクチンの効果は、下がらないでほしいと願っている」
その上で教授は、「科学がまだ曖昧(あいまい)な状態の間、私たちが何より簡単にできるのは、ワクチンの追加接種だ」と呼びかけた。
JCVIのウェイ・シェン・リム委員長は、オミクロン変異株がイギリスで主流となると予測しているわけではないとしながらも、感染者が増えた場合の最善の備えを整えたいというのが専門家の意見だと話した。
「パンデミックの最中はどのワクチンもそうだが、感染の波が始まる前にワクチンを接種しておく方が、個人と社会にとって最大のメリットが得られる。感染の波が起きるのだとしたら、それが始まる前にブースターを提供したい」と述べた。

JCVIはさらに、免疫力がきわめて低下してすでに3回目の接種を受けている人には、4回目の接種を提供すべきだと提言した。
委員会はさらに、追加接種の順番は重症化リスクを考慮し、高齢者や重症化リスクの高い人を優先すべきだとした。
JCVIの提言は、イギリス全土が対象。英政府、スコットランド自治政府、ウェールズ自治政府はいずれも、提言を受け入れる姿勢。北アイルランド自治政府も同様に、受け入れると見られている。
JCVIはさらに、5~11歳の児童に新型コロナワクチンを提供するメリットとリスクについて、データの検討を続けると述べた。
国民保健サービス(NHS)イングランドは、近く追加接種事業の展開方法を検討し、対象者への連絡を開始すると述べた。
追加接種は当初、50歳以上の人、医療現場の人、重症化リスクの高い持病のある人などから提供が始まっていた。11月初めから、40歳以上の人に対象を拡大していた。
イギリスでは11月28日までに、12歳以上の89%が1回目の接種を、81%が2回目の接種を終えている。12歳以上で、ブースターか3回目の接種を受けた人は31%。
BBCのニック・トリグル健康担当編集委員によると、NHSは現在毎週平均250万回の追加接種を行っている。そのペースでは、対象者全員に追加接種を終えるには3カ月かかる。
今年春以降、全国50カ所で大規模接種センターが閉鎖しており、多くの一般医はインフルエンザ・ワクチンの接種や通常業務に戻っているため、ブースター接種のペースを速めるのは簡単なことではないと、トリグル記者は指摘。対策としては、現在稼働しているワクチンセンターが開いている時間を延長したり、スタッフやボランティアを増やしたりする必要があるという。
スコットランドでは市中感染の疑いも
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は同日、「オミクロン株の出現は、多くの人がCOVID-19は終わったと考えていても、実際には終わっていないことを示している」と述べ、「私たちの状況がいかに危険で不安定なものか、オミクロン株の出現が強調した」と話した。
イギリス政府はオミクロン株の出現を受けて、イングランドでの感染対策を強化。現地時間30日午前4時(日本時間同日午後1時)から、店舗や公共交通機関でのマスク着用が義務化されたほか、外国から帰国・入国した人は入国2日後以内にPCR検査を受け、陰性結果が出るまでは自主隔離しなくてはならない。また、オミクロン株感染が疑われる人と接触した人は、ワクチン接種していても、10日間自主隔離しなくてはならない。
イギリスでは29日までに、ロンドンの2人を含めイングランドで5人、スコットランドで6人のオミクロン株感染が確認されている。イングランドでの感染者はいずれも、アフリカ南部への渡航歴があるという。一方、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相によると、スコットランド感染者の中には、外国渡航歴のない人も含まれているため、地元で市中感染した可能性があるという。
「良いクリスマス」
サジド・ジャヴィド英保健相は英下院で、オミクロン株がクリスマスにどのような影響を与えるか質問された。
それに対してジャヴィド氏は、「対策を強化した理由は、これまで進めてきた成果を確保するためだ。それができれば、良いクリスマスを楽しみにできるはずだ」と答えた。
保健相はさらに、マスク義務化や自主隔離の強化などについて、下院議員に審議と採決の機会を提供すると説明。
「この変異株がデルタ株より特に危険なものではないと判明すれば、新しい規制はただちに中止する」とも保健相は述べた。
「このウイルスと闘いを通じて、脅威になりそうなものが見えたら速やかに果断に行動するのが、何よりの対策だとすでに分かっている。だからこそ私たちは守りを固めて、遅滞なく対策を実施している」と、ジャヴィド氏は強調した。
スコットランドのスタージョン自治政府首相も、感染対策の強化は住民を「守るためのもので、制限するためのものではない」ので、年末年始の予定を中止にするよう呼びかけているわけではないと話した。
ウェールズ自治政府のマーク・ドレイクフォード首相は、「これまでずっと提言してきたように」昨年よりは良いクリスマスを期待してもらいたいとしつつ、「自分や周りの人を守るために、誰もが日常の中でできる簡単な対策を無視してよいというわけではない」と述べた。
イギリスでは、1日の感染者数が11月初めから再び増加傾向に戻った。29日には、4万2583人の感染が新たに確認された。











