英首相官邸のクリスマスパーティー、問題の日について想定会見で軽口

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イギリスで昨年12月に厳しいパンデミック対策が敷かれていた期間中、首相官邸で多人数のクリスマスパーティーが開かれていたと報道されている問題で、英ITVは7日、昨年12月22日に官邸内で撮影された映像を入手し放送した。映像は、当時の首相顧問と首相報道官が官邸会見室で記者会見の練習している様子のもので、「首相官邸でクリスマスパーティーがあったそうだが」という想定の質問に対して、スタッフが笑いながら答え方を準備している。「パーティーじゃなくて、チーズとワインの夕べだったんですよ」という、「回答」の提案もあった。
官邸でのパーティーをめぐる問題は、英タブロイド紙ミラーの12月1日付の記事をきっかけに浮上した。複数の消息筋の話から、ロンドンで厳しい感染対策が実施され、同居人以外との屋内での集まりが厳しく制限されていた昨年12月18日、首相官邸でスタッフがクリスマスパーティーを開いたとされている。ボリス・ジョンソン首相は参加していなかったという。
ITVが入手した官邸会見室の映像は、問題のパーティーがあったという昨年12月18日から4日後のもの。記者会見のリハーサルをする中、エド・オールドフィールド首相特別顧問がアレグラ・ストラットン首相報道官(当時)に対して、「金曜(18日)夜に首相官邸でクリスマスパーティーがあったという話を、ツイッターで見たのですが」と、記者のまねをして「質問」すると、ストラットン氏は「私は帰宅したので……えーと……」など、軽口で返そうとしている。この場にいたのは官邸スタッフのみで、報道陣はいなかったものの、想定問答は録画されていた。
答えに困った様子のストラットン氏が「どう答えればいいの?」と同僚に尋ねると、別の官邸スタッフが、「パーティーじゃなくて、チーズとワインの夕べだったんですよ」と、冗談めかして提案している。ストラットン氏は「チーズとワインは大丈夫? これ録画されてるのよね」と言い、さらに「この架空のパーティーはビジネスミーティングで、社会的距離は保たれていませんでした」などと、想定される質問への「回答」を準備している。
リークされたこの映像の報道を受けて首相官邸は、「クリスマスパーティーはなかった。感染対策ルールは常に守られている」と、これまでの説明を繰り返した。
昨年12月当時、ロンドンは最も厳しい警戒地域に含まれ、屋内の集まりが制限されていた。政府のガイドラインは、クリスマスパーティーを開いてはならないと明示していた。ロンドンでは、仕事のために「合理的に必要」な場合に限り屋内で2人以上が集まることは認められていたものの、パーティーや宴会など、社交目的の集まりは明確に禁止されていた。
ジョンソン首相がクリスマス期間中の制限緩和を中止し、「クリスマスをキャンセル」したのは、パーティーの翌日の19日だった。これによって国民の多くが年末年始にかけて、家族と会うことができなかった。
ロンドン警視庁は、ITVが放送した映像について、新型コロナウイルス規則の「違反があったとされる」事案に関係するものとして、内容を精査しているとコメントした。警視庁は「COVID-19規則の違反を過去にさかのぼり必ず捜査するのは我々の方針ではないものの、我々の検討にこの映像は含まれることになる」としている。
「笑っている」
最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、「政府はルールを破ってパーティーを開き、そして今では笑っている」と批判。ジョンソン首相について「国民をばかにしている」と非難し、首相は「真実を語り謝罪するべきだ」と述べた。
スコットランド国民党の英下院内代表イアン・ブラックフォード議員は、昨年の時点で本当に首相官邸で社会的距離を保っていないクリスマスパーティーが開かれたのなら、ジョンソン首相は「ただちに自ら辞任しなくてはならない」と述べた。
ブラックフォード議員は、放送された官邸内の映像は「決定的で、首相の責任は大きい」と指摘。「あの当時、国中の全員が国民保健サービス(NHS)を守るために家にいろと言われていた」にもかかわらず、官邸ではパーティーを開いていたのかと批判した。
「正義を求めるCOVID-19犠牲者遺族団体」は、パーティーについて「真実を語る」よう首相に呼びかけた。
団体は声明で、「今年9月、ボリス・ジョンソンは遺族の目を見つめ、愛する人たちの命を救うため自分は全力を尽くしたのだと言った。それだけに、ボリス・ジョンソンのチームが、自分たちで作ったルールを破り、それについて笑うのを聞くのがどれだけつらいことか、どれだけ恥ずべきことか、とても言葉にならない。ほかの人たちはルールを守り、そのせいで、愛する人とはスクリーン越しにさようならを言うしかなかったのに」
「これは通らない」
首相官邸の姿勢について政府筋はBBCに対して、「この言い分は通らない」と述べた。
匿名のベテラン保守党関係者はBBCのローラ・クンスバーグ政治編集長に対して、首相に近い下院議員がロビー活動で倫理規定違反を指摘された際、政府が審査手順を変えようとして大問題になった件をたとえに挙げ、ジョンソン首相は「議会ルールは自分の友達にはあてはまらないと考えていた」と批判。その上で、「今回のビデオで、その姿勢が官邸内の上級政治顧問の間で、広く共通しているというのが見て取れた」と述べた。
「愛する家族が亡くなる時に、政府によって家族に会えなかった人たちは、自分たちはばかにされたのだと結論するはずだ」
保守党のベテラン議員、チャールズ・ウォーカー氏は、「官邸でのパーティーの結果、今後どういうロックダウンを行っても、法律が何と言おうと、その要請は推奨でしかなくなる」と述べた。
保守党のトバイアス・エルウッド議員は、「政府はこの件を重視して、積極的に対応すべきだ」と述べた。「こればかりが話題になる今の状態をこのままだらだら続けるのではなく」、真相解明の担当者を政府が任命すべきだと提案した。
別の保守党議員はBBCに、「我々も正式な詳細を知らされていないので、本当に腹立たしい。選挙区の有権者からは、私もパーティーに出ていただろうと批判されているが(中略)詳しく答えるのがとても難しい。私も詳しいことを知らないし、その場にいなかったので」と話した。
別の保守党議員は、「もうみんなして戸締まりをしてじっと耐え抜く覚悟だ。(官邸のパーティーは)まったく弁護しようがない」と述べた。
さらに別の議員によると、保守党幹事長は官邸に対して「激高」したという。
「ルール違反はない」と首相

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官邸のクリスマスパーティーについて12月1日に最初に伝えた英タブロイド紙デイリー・ミラーによると、昨年12月の官邸の公式なクリスマスパーティーは感染対策のため中止されたものの、スタッフが非公式のパーティーを開いたのだという。
出席した消息筋はBBCに対して、「数十人」が参加したそのパーティーでは食べ物やアルコールが出され、様々なパーティーゲームも催され、真夜中を過ぎても続いたと話した。
ジョンソン首相はこのパーティーについて質問されると、感染対策ルールの違反はなかったと承知していると答えている。
しかし当時の規則では、こうしたパーティーそのものが禁止されていた。報道陣は1週間以上にわたり、どのようにルールを守ったのか官邸に再三質問しているものの、官邸からの説明はない。
さらに官邸のパーティーとは別に、ミラー紙は7日、昨年12月に当時のギャヴィン・ウィリアムソン教育相がスタッフのためにパーティーを開いたと報じた。
教育省報道官は、その「集まり」は、自宅勤務ができずにすでに出勤していたスタッフのためのものだったと説明。
「参加者がそれぞれ飲み物やスナックを持ち込み、外部の客は招いていないし、外部のスタッフはその場にいなかった。これは仕事関連のものだったが、振り返ってみればあの時点でこのように集まらない方が良かっただろうと、今では認める」と報道官は述べた。

<解説>職場でのパーティーについて2020年12月のルールはどうなっていた?――BBCリアリティー・チェック

昨年12月18日当時、どのような形だったにせよ首相官邸でパーティーを開いたなら、それは当時の政府ガイドラインに違反するものだった。
クリスマスに向けての政府指針はとりわけ明確に、「仕事目的の例外はあるものの、社交が一義的な目的の場合、そして自分がいる地区の警戒レベルがそれを認めていない限り、職場でクリスマスのランチやパーティーを開いてはならない」と定めていた。
これが違法かどうかという問題もある。
ロンドンは当時、最高警戒レベルの「ティア3」区域に含まれていた。仕事のために「合理的に必要」な場合を除き、同居人や「支援バブル」以外の人が屋内で2人以上が集まることは、法律で禁止されていた。
さらに、屋内で30人以上が集まる集会の開催は、特に厳しく禁止されていた。
ただし、感染対策規制に詳しい法廷弁護士のアダム・ワグナー氏によると、警戒レベルを決める「ティア制度」の導入に使われた1984年の法律には、首相官邸のような政府庁舎を例外扱いにする抜け穴が、論理上はあるかもしれないという。
別の法廷弁護士のチャールズ・ホランド氏はツイッターで、感染規制を官邸にも適用するには、地元行政区との取り決めが必要だったはずだと書いている。

<解説>ローラ・クンスバーグBBC政治編集長

とんでもないことだと、現職閣僚が私に言った。ベテラン議員は、これは政府にとって壊滅的な事態になるかもしれないと話した。
首相官邸はこの1週間というもの、12カ月前に実際に何があったのか、詳細の公表を拒んできた。
そして当時がどういう状況だったかも忘れてはならない。
このパーティーが開かれた昨年12月18日には、COVID-19はまたしても拡大していた。市民はまたしても首相から、今まで以上に注意するよう指示されていた。
イングランドはまたロックダウンに入ろうとしていたし、多くの人がまたしても親類に会えなくなろうとしていた。
その当時、官邸内で何が起きていたのか、今回のビデオは見せてくれた。実際にあった集まりについて話し合うだけではなく、その場で何があったのかについて笑っている様子だ。そして、このことが万が一明るみに出たら、どうやって世間に説明しようか、相談していたのだ。












