メルツ独首相が初の訪中、中国との貿易不均衡は「健全ではない」と警告

ドイツと中国の国旗が2つずつ、交互に並んでいる前で、フリードリヒ・メルツ首相と李強首相が横並びで立ち、笑顔で握手を交わしている

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画像説明, ドイツのフリードリヒ・メルツ首相(左)と中国の李強首相(25日、北京)
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ジェシカ・パーカー・ベルリン特派員

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は25日、就任後初めて中国を公式訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。メルツ氏は会談後、中国との大きな貿易不均衡について「健全ではない」と記者団に述べた。

ドイツ連邦統計局によると、同国の中国からの輸入額は昨年、中国への輸出額の2倍以上に達した。

メルツ氏は、この5年間で「4倍」に膨らんだ「貿易赤字を縮小する」方法を模索したいと述べた。

また、ウクライナでの戦争終結に向けて、中国政府がその影響力をロシア政府に対して行使するよう求めたことも明らかにした。

しかし、今回の会談の大きな焦点は、中国との巨大な貿易不均衡だった。

中国は昨年、ドイツにとって最大の貿易相手国の地位を、アメリカから奪い返した。

しかしこれには、欧州連合(EU)最大の経済大国ドイツにとって深刻かつ憂慮すべき貿易不均衡が伴っている。

昨年のドイツの中国からの輸入額は、前年比8.8%増の1706億ユーロ(約31兆4000億円)。一方で、ドイツの対中輸出額は、前年比9.7%減の813億ユーロ(約14兆9000億円)だった。

ドイツ経済研究所(IW)の国際経済政策責任者ユルゲン・マテス氏は、現在の状況について、「ドイツ産業の中核、特に自動車、機械、化学分野をむしばんでいる」と警告する。

こうしたゆがみの要因は主に、中国の「巨額の」補助金や、人民元の過小評価にあると、マテス氏はみている。

中国の価格優位性は、「技術革新や効率化が進んでいるということだけで生まれているわけではない」と、同氏はBBCに語った。

中国政府はこれまで、自国の補助金政策は透明性があり、国際ルールに完全に沿っていると説明している。

また過去に、通貨価値を不当に操作しているとの疑惑が浮上した際には、市場需給に基づく変動相場制を採用しているが、必要に応じて管理しているとしていた。

新たな「チャイナ・ショック」

EU全体を襲っている貿易赤字の膨張は、新たな「チャイナ・ショック」と呼ばれている。

ベルギー・ブリュッセルに拠点を置く経済シンクタンク「ブリューゲル」によると、貿易赤字拡大の要因の一つには、新型コロナウイルスのパンデミックや、ロシアによるウクライナ全面侵攻による、ヨーロッパでの生産コストの上昇があるという。

「同時期に、中国は製造業への過剰投資により長期のデフレ局面に入り、今日の過剰生産能力を生み出した」と、同シンクタンクは説明する。

これにより、各国首脳は、安価な中国製品による影響をどのように相殺すべきか、最善策を模索している。

欧州各国はすでに、アメリカのドナルド・トランプ大統領の関税政策による影響も受けている。

「ヨーロッパで、米中という2大超大国との2面貿易戦争を望む国は一つもない」と、独マーシャル基金のノア・バーキン氏は言う。

コンサルタント会社ロジウム・グループの上級顧問でもあるバーキン氏は、それでもヨーロッパには確かに、影響力はあると指摘する。「中国は製品を売り込む市場を必要としている。中国にとって過剰生産能力は大きな問題だ」。

しかし、こうした安価な製品の流入は、ドイツに深刻な不安を与えている。歴史的にヨーロッパのけん引役を担ってきたドイツは、ここ数年間、経済的な低迷期を迎えている。

特筆すべきは、かつて強大だった自動車産業が、雇用を縮小している点だ。中国メーカーが支配的な電気自動車分野への移行に、独業界は苦慮している。

ドイツの複数の経済団体は、メルツ首相が初の訪中で、明確なシグナルを発信することを求めていた。

ドイツ産業連盟は、中国との競争における「ゆがみ」や、製品の製造に不可欠なレアアース(希土類)の輸出規制といった問題に、メルツ氏が対処しなければならないとしている。

一方で、ドイツ機械工業連盟は、必要であれば、ヨーロッパは「公正な競争条件を回復」するために行動べきだと主張している。

メルツ氏によると、中国は欧州エアバスに最大120機に上る航空機を発注する見込みだという。

しかし、自由貿易を重視する大西洋主義者としてのメルツ氏の直感は、国際的な現状と相反しているといえる。

「フランスは保護主義的な政策を推進しているが、ドイツはより懐疑的だ」と、前出のバーキン氏は指摘する。

EUは中国に対し、多数の反ダンピング(不当廉売)調査を行う一方で、域内生産の強化や、国外への依存度低減も提案している。

バーキン氏は、「欧州委員会の悩みは、関税のような伝統的な貿易防衛手段だと思う」と指摘する。「アメリカのように、関税措置をあれほど柔軟に活用できない」。

中国やロシアといった国々との「貿易を通じた変革」という従来の戦略的アプローチが、またしても敗北を喫したことは、独政府をまた悩ませるだろう。

独首相を長年務めたアンゲラ・メルケル氏はかつて、中国との経済関係を優先し、人権問題を軽視していると非難されていた。

こうした深い結びつき、そして依存関係は、いまや簡単に断ち切れるものではない。

メルツ氏は、中国との関係は機会をもたらすが、「リスクも伴う」と記者団に述べた。

そして、中国からの切り離しを試みるのは誤りだとしていたメルツ氏は、「我々はこのパートナーシップをさらに強化したいと考えている。(中略)しかし、当然ながら、自国の利益も守っていく」と述べた。