ルールに基づく秩序は「もはや存在しない」 独首相がミュンヘン会議で警告、アメリカとの深まる溝を懸念

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ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は13日、ミュンヘン安全保障会議で、ルールに基づく世界秩序は「もはや存在しない」と警告した。
同会議の開会にあたり、メルツ氏は各国の首脳らに対し、大国同士の政治の時代において「欧州の自由は保証されていない」と指摘。欧州各国は「犠牲」を払う覚悟を持つ必要があると語った。
メルツ氏はまた、「欧州とアメリカの間には深い亀裂が生じている」とも認めた。
アメリカのドナルド・トランプ大統領はかねて、北極圏にあるデンマーク自治領グリーンランドを併合すると主張しデンマークの主権を脅かしてきたほか、欧州諸国からの輸入品に関税を課している。
グリーンランドに対するトランプ氏の意思表示について、欧州の多くの指導者は、最大の同盟国との信頼を損なう分岐点と受け止めている。
さらに、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)への貢献についても、疑問の声が上がっている。
トランプ大統領は13日、ホワイトハウスの外で記者団に対し、「グリーンランドは我々に来て欲しいと思うはずだ(中略)我々は欧州と非常にうまくやっている。どうなるか見ていく。今、グリーンランドについて交渉している最中だ」と述べた。
今年のミュンヘン会議には、各国から首脳約50人が出席する見通しで、欧州の防衛や、大西洋をまたぐ関係の今後が話し合われる予定。
ロシアとウクライナの戦争、西側諸国と中国の緊張関係、さらにイランとアメリカの核合意の可能性も議題に含まれている。
アメリカとの緊張とウクライナでの戦争
メルツ独首相は、ルールに基づく秩序の崩壊を示すさまざまな兆候があると警告。「さらに率直に言わなくてはならないだろう。この秩序は、最高の状態の時でさえ不完全だったが、今やかつての形ではもはや存在しない」と述べた。
また、「欧州とアメリカの間には亀裂、深い溝が生じている。J・D・ヴァンス米副大統領は1年前、ここミュンヘンでこれを非常に率直に述べた」と、メルツ氏は指摘した。
メルツ首相は続けて、「彼は正しかった。MAGA(トランプ政権のスローガン「アメリカを再び偉大にする」)運動による文化戦争は、我々のものではない。欧州では、人間の尊厳と憲法に反する発言に及んだ時点で、表現の自由は終わる。我々は関税や保護主義ではなく、自由貿易を信じている」と述べた。
ヴァンス氏は昨年のミュンヘン会議で、イギリスを含む欧州の言論の自由と、移民に関する政策を非難した。この発言が、その後の1年間の欧州とアメリカの間に、前例のない緊張を引き起こした。
しかし、メルツ氏は数十年にわたるパートナーシップを切り捨てず、「大西洋間の信頼を修復し、再び蘇らせよう」と、アメリカに直接呼びかけた。
メルツ氏はまた、欧州の共同核抑止力の創設に向け、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と「秘密の協議」が進行していると明らかにした。ただ、詳細には踏み込まなかった。
欧州では、フランスとイギリスのみが核保有国だが、ドイツを含む多くの欧州諸国は、伝統的にNATO同盟内のアメリカの核抑止力に依存してきた。
メルツ氏の後に演説したマクロン氏は、新しい世界情勢の中で、欧州が「地政学的な力になることを学ぶ」必要があるとあらためて訴えた。
マクロン氏は、ウクライナでの戦争を欧州の「存立に関わる課題」と表現し、各国に「ロシアの要求に屈してはならない」と求め、公正な和平実現に向けてロシアへの圧力を強めるよう促した。
「新しい地政学の時代」と米国務長官
ミュンヘン会議の開催に先立ち、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、昨年のヴァンス氏より融和的なメッセージを欧州に送るか問われると、「世界は目の前で非常に速く変化している」と警告した。
ルビオ氏は、「我々は新たな地政学の時代に生きており、それがどのような姿になるのか、そして我々の役割がどうあるべきか、すべての人が改めて考え直す必要がある」と述べた。
ルビオ氏はミュンヘンの会場で、メルツ首相の演説を聞いていた。
アメリカと欧州の緊張は、ここ数カ月で高まっている。トランプ氏は、グリーンランドはアメリカの国家安全保障に不可欠だと繰り返し発言し、その根拠を示さないまま「ロシアと中国の船で至るところが覆われている」と主張した。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相はこの日、共にNATO加盟国のデンマークからアメリカがグリーンランドを奪取すると脅している状況について協議するため、ルビオ氏と会談する予定だと述べた。











