ナイトクラブやパブ、劇場に「深刻な打撃」 英イングランドのロックダウン延長

イギリス政府は14日、イングランドで21日に予定していた新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン緩和を4週間延期すると発表した。ボリス・ジョンソン首相は、デルタ株による感染が広がっており、今後さらに数千人の死者が出る「現実の可能性」があると説明した。
イングランドの段階的なロックダウン緩和計画は、次回が最終段階。施設やイベントでの法的な人数制限がすべて解除される予定だった。
ロックダウン延長を受け、21日の制限撤廃に向けて準備を進めてきた接客業界やエンターテインメント業界から悲鳴が上がっている。
パブやレストラン、劇場、映画館、ライブハウスなどでは引き続き、人数を制限しての営業が続く。ナイトクラブなど昨年3月以来、休業を強いられている店舗では、営業再開自体が延期されることになった。
また、6月と7月に開催されていた音楽フェスティバルが次々とキャンセルまたは延期されているという。
業界団体からは金銭的な支援を求める声が上がっているが、政府はロックダウン延長に伴う支援を発表していない。
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「全てキャンセル」
BBCの取材に応じたナイトクラブのオーナーは、21日から数週間のスケジュールが埋まっていたものの、全てキャンセルしなければならず、何千ポンドもの収入を失うと語った。
バーミンガムのナイトクラブ「Suki10c」を経営するデイヴィッド・ウィットールさんは、6月の経費を支払う手立てがないという。
「完売していたイベントで売り上げと利益を得て、それで経費を払えるはずだった。それが今は何もなくなってしまった」
ウィットールさんは、政府による支援が必要だと強調。「支援がないとなると、他の選択肢を考えたくない」と話した。

画像提供, Admiral Taverns
イギリス全土に1000店舗以上のパブを展開する「アドミラル・タヴァーンズ」のクリス・ジョウジー最高経営責任者(CEO)も、「新型ウイルスによる制限でパブが収益を上げられない中、多くのフランチャイズにとってこの状況は深刻なものだ」と述べた。
「規制が続くなら、政府が介入してホスピタリティー業界に追加支援を行うべきだ」
英ビール・パブ協会は、4週間のロックダウン延長でパブ業界は4億ポンドの損失をこうむると警告。7月19日は「きちんとした形で」営業再開できることが大事だと協調した。
「数千人の雇用が見通したたず」
音楽業界団体ミュージック・べニューズ・トラストのマーク・デイヴィード会長は、小規模のライブハウスの閉鎖を防ぐため、政府は「迅速かつ大胆な」施策を取ってほしいと訴えた。
「本当に必要としている人に金銭的支援を与え、ローン返済を延長し、事業税をなくし、被雇用者や自営業者の収入支援を延長すべきだ」
演劇の業界団体、ロンドン・シアター協会やUKシアターは、プロデューサーらは上演に向けてリハーサルを始めてよいのか「難しい決断」を迫られており、「数千人の雇用に見通しが立っていない」と述べた。
「特に大規模な商業プロダクションは、文化復興ファンドからほとんど支援を受けておらず、社会的距離を保った状態では収益も上がらないため、危機に直面している」

画像提供, Sean Gleason
6月21日からシアター・ロイヤル・ウィンザーで「ハムレット」の公演を控えているサー・イアン・マケレンは、満員で上演できないのは「とても、とてもいらいらする」と語った。
BBC番組「ザ・ワン・ショウ」に出演したサー・イアンは、「私は幸いプロデューサーではないけれど、プロデューサーたちはどうしたらいいのか当惑しているはずだ。たくさんのチケットを売ってあって、今度はその人たちが日付を変えなければならないかもしれない」と述べた。
「面倒なことが色々あるが、来週には予定通り初日を迎えると確信している。でも思っていたよりも少しだけ長く、社会的距離を維持しなくてはならない」
イギリスでは現在、スポーツ観戦やナイトクラブなどを含む大規模集会、屋内イベントの解禁に向け、換気の改善やイベントの前後の検査実施といった方策が検討されている。
政府は、7月19日までにコンサートや芸術展などを含む15件のイベントで、こうした施策の試験運用を行うとしている。
ジョンソン首相は14日、作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー氏の新作ミュージカル「シンデレラ」も、この試験に参加できるかもしれないと示唆した。ウェバー氏は先に、制限に違反して逮捕されてでも、6月25日に予定通り上演したいと語っていた。
ジョンソン首相の申し出については、「内容を詳しく理解するまではコメントできない」としている。

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結婚式の人数制限は撤廃
こうした中、結婚式の人数制限は撤廃されると発表されている。ウェディング業界はほっと胸をなでおろしているものの、業界の未来に不安を抱く声も上がっている。
ロンドンでウェディング・プラニング企業「Sauveur」を経営するマシュー・ショウ氏は、すでに顧客から何が許可されて何がされていないのか、混乱した電話がかかってきていると話した。
政府の発表では、招待客の人数制限はなくなったものの、社会的距離を取る施策は継続される。そのため、屋内でダンスができなくなったことに怒る顧客が多く、予約していたバンドをキャンセルしたいという申し出もあるという。
「ダンスフロアや、お酒が出るレセプション。みんなが求めているのは、そういうものだ」
「みんなで集まって食事をするのは素晴らしいことだが、結婚式を特別なものにしている要素がないのなら(中略)そこまでお金を払いたいとは思わなくなってしまう」
ショウ氏は、業務提携する業者に、こうした制限が圧力をかけてしまっていると懸念を口にする。
支援の延長はなし
イギリス政府は昨年3月以降、ロックダウン中に従業員の雇用を維持した企業や自営業者に対し、その給与の最大8割を支給している。
この一時帰休の仕組みは今年9月まで施行されるが、7月からは雇用主が一部を負担することになっている。
政府は、ロックダウンを延長してもこの仕組みを含む金銭的な支援は延長しないと述べている。
財務省の報道官は、「我々はパンデミック中に企業や個人を支援してきた。今後数カ月も確実に支援していくつもりだ」と説明した。
「一時帰休制度は9月まで施行されるほか、対象企業は年内一杯、法人税や付加価値税の控除などが受けられる」
BBCのファイサル・イスラム経済編集長は、政府は昨年3月と8月に経済再開を優先した結果、アウトブレイクを招いてしまったため、今回は慎重に行動していると解説。
多少の経済的損失を受けても、死者数を抑え、1カ月後に自信を持ってロックダウンを解除できる方を選んだと指摘した。
一方で、政府の決定は最近の経済回復傾向にも後押しされているが、ナイトクラブのように15カ月間の休業を強いられている企業にとっては、慰めにもなっていないと述べた。











