イエレン米財務長官が訪中 中国に共感示す「良い警官」は米中関係を修復できるか
ピーター・ホスキンス、ビジネス記者

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アメリカのジャネット・イエレン財務長官が6日午後、中国・北京に到着した。今回の訪中は、世界の2大経済大国であるアメリカと中国の関係を再構築するための、大きな賭けの一環だ。
米政府高官の訪中は、この数カ月で2度目。米中関係は今年、急激に悪化している。
米中間の争点は、台湾やウクライナ侵攻、国家安全保障、現在も続く貿易戦争にまで多岐にわたる。
中国政府は、コンピューターチップの製造に必要な二つの主要材料の輸出を規制すると、数日前に発表したばかり。
イエレン氏は最近、2大経済大国は一丸となって取り組むことができると述べている。この発言は、中国の新副首相の何立峰氏との初会談も予定されている今回の訪問において、非常に重要な意味を持つかもしれない。
アメリカはイエレン氏の訪中に先立ち、米中が「責任を持って関係を管理し、懸念がある分野について直接コミュニケーションをとり、協力して国際的課題に対処する」ことの重要性を強調した。
緊張緩和のための、継続的な取り組みの一環として、イエレン氏は3日に中国の謝峰駐米大使とも会談。米財務省は双方が「率直かつ生産的な議論」を行ったとしている。
しかし、「イエレン氏の訪問への期待は低く抑えておくべきだ」と、アメリカを拠点とするシンクタンク「アジア・ソサエティ政策研究所」のウェンディ・カトラー副所長はBBCに語った。「彼女は関係を修復する立場にないし、輸出規制や関税の撤廃を求める中国の要請に応じる立場にもない」。
米高官の訪中と米中関係
これは、この約半世紀で最も高位の米政府高官による北京訪問だった。
この時の会談は、両国関係のさらなる悪化を食い止められるかどうかの試金石と受け止められていた。
訪中を終える際、ブリンケン氏は米中間にはまだ大きな問題が残っているものの、「今後、私たちがより良いコミュニケーションとより良い取り組みを持てることを望み、期待している」と述べた。
ところがその翌日、ジョー・バイデン米大統領は習氏を「独裁者」と呼び、中国政府が抗議する事態となった。バイデン氏の発言が深刻な悪影響を及ぼす可能性は低いと、複数のアナリストが見る一方で、米中間の問題解決に役立つ発言ではなかったと広く受け止められている。
米中の貿易摩擦の解決は程遠いことを示す出来事はほかにもある。中国は3日、コンピューターチップの製造に必要な2つの主要材料の輸出規制を強化すると発表した。8月1日からは、ガリウムとゲルマニウムを世界最大の生産国の中国から輸出するには、特別なライセンスが必要となる。
これは、米政府が昨年、一部の先端コンピューターチップに中国がアクセスするのを抑制する措置を取ったことを受けてのものだ。アメリカは昨年10月、同国の半導体製造装置を使って世界各地で製造されたチップを、中国に輸出する企業に対し、ライセンスの取得を義務づけると発表した。この措置は製造拠点がどこであっても適用される。
イエレン氏のアプローチ
アメリカと中国は複雑な問題に直面していると、ビジネス・フォーラム「IMAアジア」のプリヤンカ・キショー氏は述べた。「公式のレトリックや、上級外交官による(中国)訪問は、両国間に実務的な政治関係を築きたいという願望を示唆している」としつつ、「しかし、実際の行動からは、報復政策が支配的であることがうかがえる」と付け加えた。
イエレン氏は北京での会談で、人権と自国の国家安全保障上の利益を擁護し続けるというアメリカの立場を明確に伝える見通し。
一方で、気候変動や、重債務国が直面する問題などについては、中国政府と協力する意思があることも強調するものとみられる。

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著名人の中には、中国との経済的結びつきを完全に断ち切るようアメリカに求める人もいるが、イエレン氏はより懐柔的なアプローチを取るだろう。北京の交渉相手に対し、米政府は二つの経済大国を切り離すつもりはないと伝えると予想される。
これは、今年4月の演説でイエレン氏が概説したように、一部の前任者たちよりもグローバリストな同氏の世界観に沿ったアプローチといえる。「両国の経済が完全に分離すれば、双方にとって壊滅的なものとなり、世界のほかの国々にとって不安定な状況を生み出すだろう」と、イエレン氏は当時述べていた。
「ちょっと『良い警官、悪い警官』のようなアプローチだと思う。ブリンケン氏は悪い警官として動いた」と、国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、ケン・ロゴフ氏はBBCに語った。
「そして今度はイエレン氏が良い警官として、私たちには多くの共通点があるのだから、一緒に何ができるか考えてみましょうと、伝えようとしている」
ブリンケン氏は国務長官として、台湾やウクライナ侵攻といった難しい問題を提起しなければならなかったのだと、ロゴフ氏は述べた。
しかし、ロゴフ氏は、イエレン氏が中国政府に対してソフト路線をとっていくと示唆するわけではないと警告。イエレン氏は知的財産権をめぐる法律や市場へのアクセスといった多くの問題について、中国当局に圧力をかける可能性が高いとした。
米中双方の関係者の中には、両国が分断しつつあると話す人がいるが、貿易データには相互依存の現実が表れている。
公式データによると、中国の昨年の対米輸出額は5360億ドル(約77兆円)超と、3年連続で増加した。一方、アメリカからは1540億ドル(約22兆1000億円)相当が輸出された。
米中両国は相違を乗り越えようとしているが、米大統領選をめぐる不安が立ちはだかっている。
「2024年(大統領選)からの第2次バイデン政権が誕生すれば、経済面ではトランプ政権時代の貿易制裁や関税の多くが、とりわけハイテク分野とはあまり関係がないものに関しては、緩和されると予想される」と、ハワイ大学アジア研究学部のエリック・ハーウィット教授は述べた。
「ただ、2024年の選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した場合は、すべてが白紙に戻るだろう」








