ライオンの毛皮から神聖な玉座まで、各国に残るさまざまな君主即位や戴冠の儀式

ジェイミー・モアランド、BBCニュース

Two elephants painted white with people sitting on top parading down a road

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画像説明, タイのマハ・ワチラロンコン国王の即位式に伴い、バンコクでは白く塗られたゾウが行進した

イギリス国王チャールズ3世の戴冠式が5月6日に行われる。当日が近づく中、式典の古い伝統への関心も高まっている。だが世界には、あまりに神聖すぎて誰も座らない王座など、同じように興味深い即位や戴冠の儀式が現在も残っている。

英ウィンチェスター大学でルネッサンス史を研究するエレナ・ウッデカー准教授は、「君主制は儀式と式典で成り立っている」と話す。

「即位の儀式にはそれぞれ特徴がある(中略)そこには常に何らかの装置や式次第がある。通常はレガリアや祭服、油による聖別といった神聖な要素が含まれる」

「こうした要素は君主の役割を再確認するためにも、また君主と臣民の関係を示すためにも重要だ」

タイ:水での聖別

チャールズ国王は、戴冠式で、秘密の製造法で作られた聖油で聖別される。カンタベリー大主教が国王の頭と胸、両手に油を塗る儀式は、イングランド国教会の長でもあるイギリス国王の精神的な地位を強調するものとして、戴冠式の中でも最も神聖な部分とされる。

タイでも、水によって新たな君主が「浄化」され、聖別される儀式がある。

この水は、タイの占星術で重要とされる午前11時52分から午後12時38分の間に、全国100カ所から集められ、仏式の式典で祝福されたものだという。

King Maha Vajiralongkorn, sat down, pouring holy water over his shoulders

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画像説明, 聖なる水を肩からかぶり、聖別の儀式を行うタイのワチラロンコン国王
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アサンテ:君主も座れない玉座

チャールズ国王は戴冠式の大半を、700年以上前に作られた「聖エドワードの椅子」に座って過ごす。

カシ材で作られたこの戴冠用の椅子は、イギリスで本来の用途のまま使われている最古の家具だ。

椅子には、スコットランド国王の戴冠に使われていた「スクーンの石」がはめ込まれている。

ガーナに存在するアサンテ王国は、18世紀からアシャンティ地域を支配している。

アサンテ文化で最も神聖とされる黄金の椅子「シカ・ドワ・コフィ」は、この地の人々の「魂」を表すもの。

The Asantehene, wearing yellow robes, sitting with his court

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画像説明, アサンテのオセイ・ツツ2世(1999年撮影)
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この椅子はあまりに神聖なため、君主ですら座ることが許されていない。即位の際には、新しい王を椅子の上に持ち上げて下す儀式があるが、ここでも王が座ることはない。

しかし1900年、英領ゴールド・コースト総督のサー・フレデリック・ホジソンがこの椅子に座ろうとして、椅子の捜索を兵に命じた。

これを受けて、王母を中心とする武装蜂起が発生したが、王母は敗北し、アサンテ王国はイギリスに併合された。王国が復活したのは1935年のことだった。

日本:天蓋、カーテン、特別な布地

イギリス国王の戴冠において、聖別はとても神聖で秘密の儀式とされる。そのため、聖別の最中は国王は天蓋とカーテンで覆われ、周りから隠される。

聖別の後、集まった人々が「God Save the King!(神よ国王を救いたまえ)」と合唱する。

日本の天皇陛下が即位を宣言する「即位礼正殿の儀」でも、同様の場面がある。

2019年に行われた儀式では、高御座(たかみくら)の紫色の帳(とばり)が開かれ、玉座の前に立つ天皇陛下が現われる。

Emperor Naruhito stood inside the 6.5m-high Takamikura throne, with people surrounding it

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画像説明, 天皇陛下は即位礼正殿の儀で、高さ6.5メートルの高御座に立ち、即位を宣言した
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重要な儀式で天皇だけが着用できる「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」を身につけた天皇陛下は、その場で正式に即位を宣言する。

その後、天皇陛下の長久を祝い、参列者が万歳三唱のかけ声をあげる。

当時皇太子だったチャールズ国王は、この後に外国要人らを招いて行われた「饗宴の儀(きょうえんのぎ)」に出席していた。

ズ―ルー:羽とライオンの皮

イギリス国王は、戴冠式で特別なローブをまとう。ウェストミンスター寺院に入場した後に着用する赤い裾の長いベルベットのローブは、金のレース刺繍がほどこされ、「アーミン」と呼ばれる高価な白い毛皮で縁取られている。

1953年のエリザベス2世の戴冠式では、女王は7メートルの絹のローブを着用した。このローブには18種類の金糸と銀糸でイギリスと英連邦の紋章が刺繍されていたが、その制作には3500時間がかかったという。

南アフリカの民族集団のうち、ズ―ルーの王は最も影響力が高い1人とされる。ズールーの王も、即位の際に特別な衣服をまとう。

伝統的なズールーの儀式では、君主は神聖な牛の囲いに入って祖先の支援を求め、自分が選ばれた者だと証明するために、狩ったライオンの皮を身につける。

King Misuzulu ka Zwelithini wearing leopard print and feathers

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画像説明, ズールーは南ア人口の2割を占めるため、その王にはなお影響力がある
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2022年に行われたミスズールー・カ・ズウェリティニ王の戴冠式では、ヒョウ柄の衣装と羽を身につけ、南ア大統領から王として承認された。

レソト王国:子牛皮の王冠

王冠はさまざまな即位の儀式で最も重要な要素の一つとされる。君主が統治者であることを示す、視覚的な象徴でもある。

イギリスでは、チャールズ国王は純金製でルビーやサファイアに彩られた「聖エドワード王冠」を被る。国王がこの王冠をかぶるのは、戴冠式だけだ。

戴冠式の終盤には、チャールズ国王は1キロ超の「大英帝国王冠」を着用する。これは、議会の開会式などの公務でも使われる王冠だ。

Two traditional chiefs put a calfskin headband and feather on the new monarch's head

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画像説明, レツィエ3世の即位式(1997年撮影)
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レソト王国の即位式では、カーフスキン(子牛皮)でできたヘッドバンドと羽が、2人の伝統的な首長によって新たな王に被せられる。

また、伝統的な動物の皮や、金色のワニが刺繍された青い衣服をまとい、歌や踊りで新しい君主を祝う。

レツィエ3世の戴冠式は、首都マセルのスタジアムで行われた。当時皇太子だったチャールズ国王と、南ア大統領だったネルソン・マンデラ氏も参列していた。