靴下で……英ウェストミンスター寺院、戴冠式の場所公開へ 13世紀のモザイク床 

ショーン・コラン王室担当編集委員

Cosmati pavement

画像提供, PA Media

画像説明, チャールズ国王の戴冠式は今年5月、750年前に作られたモザイクの床の上で行われる

英ロンドンのウェストミンスター寺院で、チャールズ3世が5月に王冠をいただく、まさにその位置が一般公開されることになった。ただし土足厳禁。来訪者は靴下で中世時代の床を歩くことになる。

寺院によると、一般人がこの「コスマテスク装飾の床」を歩くことができるのは、知られている限りで初めてだという。

モザイクの技法で彩られたこの床は、イギリス有数の中世芸術の一つとして知られる。

13世紀に造られたこの床を保護するため、見学者は靴下で歩かなくてはならない。

ウェストミンスター寺院のモザイク床の中央には、磨かれた石でうずまき模様の円が描かれ、その周りをガラスや大理石、色石などが取り囲んでいる。5月6日にはこの場所に、チャールズ国王の戴冠の玉座が置かれることになる。

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画像説明, 中世に敷かれたコスマテスクの床は、1953年の故エリザベス女王の戴冠式ではじゅうたんに覆われていた

この床は装飾が見事なものの損傷が激しく、19世紀以降はじゅうたんで覆われていた。1953年に故エリザベス女王が戴冠した際もそうだった。そして、普段は一般の立ち入りが禁止されている。

しかしイタリア以外では最も重要なコスマテスク作品と言われるこの床が、チャールズ国王の戴冠式ではお披露目される。モザイク床の中央には、700年前に作られた戴冠用の玉座が設置される予定だ。

はだしでは床が「べたつく」ため、一般公開では来訪者は土足を脱ぐだけでなく、靴下の着用が求められる。

靴下だけを履いた状態でここに立てば、会衆席と聖歌隊席を背に主祭壇を臨むことができる。チャールズ国王が戴冠式で実際に目にする光景だ。

寺院によると、観覧は予約制で、少人数制のガイド付きツアーの一環として床の上を歩くことができる。ツアーの料金は15ポンド。

Cosmati pavement
画像説明, 中世にイタリアの職人が作ったモザイクの床は、普段は立ち入りが禁止されている

しかし今週、この場所は反君主制団体に一時占拠された。活動家らはコスマテスク装飾の床を土足で歩き、「彼(チャールズ国王)に投票するか?」と書かれた幕を掲げた。

君主制廃止を求める市民団体「リパブリック」の広報は、戴冠式は「無意味なパレード」で、「選挙で選ばれたわけではない国家元首」を持ち上げるだけのものだと非難した。

Cosmati pavement

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画像説明, 君主制廃止を求める活動家が、土足でモザイクの床に立ち、「彼(チャールズ国王)に投票するか?」と書かれた幕を掲げた

中世に敷かれたこの床には、数世紀にわたってこびりついた汚れを落とすなど、緻密な修復が行われた。同寺院で美術品の管理主任を務めるヴァネッサ・シメオーニ氏は、はめこまれた石の大半はオリジナルだと話す。

シメオーニ氏は、歴史ある床の修復作業を通じて、750年前にモザイクを施した職人たちとの連続性を感じることができたという。

「本当に素晴らしかった。これを作った人々とのつながりを感じられた。彼らは素材やデザインをよく知っていた」と、シメオーニ氏は語った。

また、はめこまれた石を取り扱う上で、撥水(はっすい)加工や湿気対策などについて、さまざまな技術が試されていたことが分かった。こうした技術は、イタリア人職人がロンドンで発展させたものだという。

Vanessa, conservator at Westminster Abbey
画像説明, ヴァネッサ・シメオーニ氏

コスマテスク装飾は、この様式のモザイクを生み出した職人一家「コスマティ家」から名付けられた。ウェストミンスター寺院のコスマテスクの床は、ヘンリー3世の命令で制作が始まり、1268年に完成した。約7.5メートル四方に絡み合うような模様が広がり、紫の斑岩や黄色い石灰岩などが用いられている。

完成当初は、大理石やガラス、色石などがきめ細かく磨かれていたため、ろうそくの明かりで床が輝いていたという。

シメオーニ氏によると、床の素材はイタリアや地元イギリスのものだけでなく、エジプトやギリシャ、トルコ産の石も含まれている。

こうした石や大理石の多くは、古代ローマ時代の遺跡から取り除かれ、イタリアの職人によってイギリスに持ち込まれ、再利用された。

つまり、ウェストミンスター寺院での君主の戴冠式は数百年にわたり、それに輪をかけて古いローマ帝国の断片から作られた床の上で行われてきたというわけだ。