【解説】 イギリス経済史上で最大のUターン、生活への影響も
ファイサル・イスラム経済編集長

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おそらくイギリス経済史上最大の「Uターン」が、まったくもって異常な「予算の定まらない状況」をもたらした。「ミニ・バジェット」(小さな予算)として発表された450億ポンドの減税計画が、3週間と3日の間に320億ポンド分も覆されたのだ。
実際問題として、私たちには新しい用語が必要だ。「Uターン」と言えば制御された動きを想像する。しかしこれは、連結式のトレーラーがサイドターンを決めようとしているような印象だ。
今回の転換には、来年4月以降にエネルギー支援策の対象を絞る決定も含まれており、生活への影響がある。英経済がリセッション(景気後退)に突入した今、増税と支援の縮小については、相応の疑問が出てきている。
減税を強く望んでいる首相が、前政権から引き継いだ計画よりも高い基本税率を受け入れることになったのは、極めて重大な事実だ。基本税率におけるUターンは単なる「ミニ・バジェット」の撤回にとどまらず、この数週間より前に発表されていた将来の減税措置にもおよんだ。
国債市場や為替市場の反応を見れば、これが奏功したことがわかる。イギリス経済への信頼は再び上昇し始めた。
本当に怖いのは、イングランド銀行(中央銀行)の市場介入という緊急用パラシュートが閉じられた結果、長期借入コストが大幅に上昇することだった。
政策撤回に伴い、30年物住宅ローンは17日に0.5ポイントの大きな下落を示した。2年債と5年債でも同様に下がったため、これも最終的には固定金利の住宅ローンに直接反映されるだろう。
しかし、こうした実効借入金利や利回りはなお、「ミニ・バジェット」発表前に比べてかなり高い。また、こうした状況は他国よりもイギリスでより顕著に見られる。
患者の容体は安定しているが、これからもっとつらい治療が待っている。給付金や税控除の実質的な価値が下げられる可能性がある。また、新型コロナウイルスのパンデミックの後始末に追われている政府省庁の支出も圧迫されるかもしれない。
来年4月からのエネルギー支援の制限によって、年間3500ポンド(約60万円)という請求を抱える世帯も出てくる。ジェレミー・ハント新財務相はまた、エネルギー効率化を奨励するメカニズムの導入を示唆した。たとえばドイツでは、使用されたエネルギーの最初の5分の4にのみ補助金が与えられる。それ以降は市場価格が適用されるため、効率化を図る大きな動機となる。
さらに、安い法人税やフリーランスの給与体系の変化などを理由に投資をしてきた企業は、今回の発表に突然突き放された気持ちになっている。こうしたことを含めても、さらなる増税は必要になるだろう。
増税は、リズ・トラス政権が追究する政策とは正反対のものだ。ハント財務相が週末に「トラスノミクス」を葬り、その棺(ひつぎ)が今、封印された。
その多くは、「ミニ・バジェット」が発表された翌週から避けられなかったもので、経済の信頼性を回復するのに役立つはずだ。しかしや内閣や政府、保守党の全員がこれを支持するのかどうかと疑問に思うほど、政治的な転換点でもある。
これに対するハント新財務相のメッセージはきっと、「他に選択肢はない」だろう。










