英財務相、減税政策で「Uターン」 45%の所得税率の撤廃案を撤回

ニック・アードリー、BBC政治担当編集委員

Kwasi Kwarteng

画像提供, PA

画像説明, BBC番組「ブレックファスト」に出演し、撤回について説明するクワジ・クワーテング財務相

イギリスのクワジ・クワーテング財務相は3日、45%の所得税率を撤廃する案を撤回すると発表した。クワーテング氏は、10日前に発表した一連の減税政策が「障害になっている」と述べ、「人々と話し、人々の声に耳を傾け、理解した」と説明した。

クワーテング氏は9月23日、大幅な政府借り入れを前提とした450億ポンド規模の減税政策「ミニ・バジェット(小さな予算)」を発表。所得税や住宅購入の際の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止するとした。これにより、経済成長に弾みをつけたいとしていた。

しかし、発表直後から市場で反対と懸念の声があがり、英ポンド下落や政府の借り入れコスト上昇を招いている。

今回撤回されたのは、年収15万ポンド以上の人に課されている45%の所得税率を撤廃し、一律40%にする案。生活費が高騰する中で不公平を生むものだと非難を浴びていた。

撤回の意向は、英タブロイド紙サンが最初に報じた。英ポンドは「ミニ・バジェット」発表後に対ドルで史上最安値を更新したが、この一報で1セント以上上がり、1.1263ドルとなった。ただその後、再び下落に転じた。

一方で、9月に政権を発足したばかりのリズ・トラス首相にとって、このUターンは大きな痛手となった。

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BBC番組「ブレックファスト」に出演したクワーテング氏は、所得税率の撤廃案は、エネルギー法案や他の減税への支援を含む「強力なパッケージをかき消す」ものだったと話した。

「トラス首相は税率撤廃を進めないことを決定した」

これが首相にとってUターンになるかという質問には、「そうではない。我々は一緒に話し合い、私は自分の方針を話し、一緒に決定した。所得税率の廃止は進めないということで意見が一致した」と述べた。

また、辞任の意向は「全くない」と語った。

トラス首相は2日、BBC番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」に出演した際、所得税率の撤廃案は「クワーテング財務相の決定」だったと話していた。

一方で、税制を「よりシンプルに」し、成長を促進する政策の一部として、絶対的にこの案を支持すると話していた。

与党内からも撤回の声

しかし所得税率の撤廃案をめぐっては、市場や野党のみならず、与党・保守党内からも批判の声があがっていた。

グラント・シャップス前運輸相は、下院の採決を通らないと警告。トラス氏が有権者の生活費危機への懸念に耳を傾けていないとして、所得税率の撤廃案をやめるよう求めていた。

また2日には、閣僚経験者のマイケル・ゴーヴ議員も、トラス氏の決定は「間違った価値観を並べ立てている」として、議会で支持しないと示唆していた。

こうしたなかで、トラス氏は政策決定に必要な支持を集められなくなったもようだ。

「恥ずかしい思いをし、傷つけられ、弱くなった」

最大野党・労働党は政府に対し、「信用のないトリクルダウン戦略をすべて覆す」よう求めた。

レイチェル・リーヴス影の財務相は、今回のUターンは「これから何年も、より高い住宅ローンや価格を支払わなければならない家庭には遅すぎる決定だ」と批判した。

BBCのクリス・メイソン政治編集長は、このUターンによってトラス首相とクワーテング財務相は、「恥ずかしい思いをし、傷つけられ、弱くなった」と分析。「しかしトラス首相はこの決定が、政治的現実との接触で崩壊した減税政策の政治的泥沼から抜け出し、前進するための余地を生み出してくれると望んでいる」と指摘した。