トラス英首相の発言をファクトチェック BBC番組で減税政策を擁護

イギリスのリズ・トラス首相は2日、BBC番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」に出演し、先週発表した減税政策を含む「ミニ・バジェット(小さな予算)」を擁護した。
ミニ・バジェットをめぐっては、9月23日の発表直後から市場に懸念が広がり、英ポンドが下落。さらに、政府の借り入れコストが上昇し、住宅ローンなどにも影響が出ている。トラス政権の減税政策については、与党・保守党内からも異論が相次いでいる。
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トラス首相は番組で、「ミニ・バジェット」を維持すると述べた。その一方で、政策を発表する前に、「地ならし」するべきだったと話した。これには、減税に伴う数十億ポンドの借り入れも含まれる。
2日のインタビューでのトラス氏の発言を、ファクトチェック(事実確認)する。

「これはグローバルな問題だ。ウクライナでプーチンが戦争を行い、新型コロナウイルスの余波があり、世界中で金利が上がっている」
これは、住宅ローンや家賃の支払いなどを心配する人々に対して、首相が責任を感じているかという質問に対する回答だ。
ウクライナでの戦争によってインフレが悪化しており、その対策としてイングランド銀行をはじめとする各国の中央銀行が金利を挙げていることは事実だ。
しかし、イギリス政府の借り入れコスト(国債の利回り)は、政府が「ミニ・バジェット」を発表した9月23日以降、一気に4%を超えた。


BBCのファイサル・イスラム経済編集長はツイッターで、イギリスの借り入れコストは現在、ギリシャよりも高くなっていると指摘している。
借り入れコストはイングランド銀行が上げているわけではなく、債券市場がミニ・バジェットに反応した結果、急騰した。借り入れコストが上がれば住宅ローン市場から多くの金融商品が姿を消し、住宅ローン金利も上昇することになる。
このことは、イギリスの30年国債を保有するさまざまな年金基金にも影響する。このためイングランド銀行は年金を守るため、650億ポンドに上る長期国債の一時買い入れを発表して、介入せざるを得なくなった。
同行のチーフ・エコノミストを務めるヒュー・ピル氏は9月29日、この1週間の出来事について以下のようにまとめている。
「金融資産の価格が著しく改定されている。その一部は(中略)より広範な世界情勢を反映しているが(中略)イギリス固有の要素も間違いなく存在する」

画像提供, PA Media

「イギリスは過去20年間、比較的低成長で推移してきた」
イギリス経済は過去10年間低成長にとどまり、新型コロナウイルスのパンデミック前から縮小に転じた。
1982~1992年の国内総生産(GDP)成長率の平均は2.3%、続く1993~2002年は2.6%だった。
その後の20年は、平均で前年比1.4%の成長が続いた。しかし2008年の金融危機と、2020年に始まったパンデミックという2つの世界的な危機に見舞われた。
こうした要素を除外したとしても、この10年間の成長はそれ以前とは釣り合わない。
(2008~2009年の)金融危機前の2002~2007年の平均成長率は2.5%、金融危機後からパンデミック前までの2010~2019年は平均成長率は2%だった。
トラス首相とクワジ・クワーテング財務相は、年率2.5%の成長を維持することが目標だとしている。


「予算責任局との問題は、見通しの作成に時間がかかることだ(中略)単にそのプロセスを行う時間がなかった」
クワーテング氏は、「ミニ・バジェット」を発表した際、予算責任局(OBR)の経済見通しを同時に公表しなかった。OBRは政府から独立した組織で、政府の経済面での課題を指摘する役割を担っている。
市場関係者からは、OBRの見通し発表がなかったことが、その後数日にわたる混乱を招いたとの指摘が出ている。
しかしOBRは、見通しの発表を間に合わせることはできたはずだと主張している。
同局のリチャード・ヒューズ局長は9月29日に発表した書簡の中で、経済見通しの草案は、政権発足から1日後の9月6日の時点でクワーテング氏に送付されていると述べた。
OBRはその後、ミニ・バジェットが発表される23日に間に合うよう見通しの改訂版を提出した。ヒューズ氏は、「国会で制定された予算責任憲章の法的要件を満たす水準で、(見通しを発表することは)可能だった」ものの、政府からの要請がなかったと説明してる。
「イギリスは主要7カ国中で債務残高が2番目に少ない」
主要7カ国(G7)政府の債務残高を対GDP比で見た場合、この主張は正しい。
イギリスの国家統計局(ONS)のデータによると、2021年12月の時点で、イギリスの債務残高はカナダとフランス、アメリカ、イタリア、日本よりも低い。


さらに、「ミニ・バジェット」で発表された対策のために今年必要な追加借り入れを加えても、英国を次点の国より高くすることはできない。











