英イングランド銀が市場介入、国債購入へ 現状は英財政の安定に「リスク」

The Bank of England

画像提供, Getty Images

英イングランド銀行(中央銀行)は28日、市場安定化のために国債を購入すると発表した。イギリスでは、リズ・トラス新政権の減税政策発表を受けて英ポンドが下落しているほか、政府の借り入れコストも上がっている。

イングランド銀は今回、「迅速」に国債を購入することで「秩序だった市況」を回復すると説明。現在の不安定な状態が続けば、「英財政の安定に多大なリスク」を及ぼすと述べた。

中銀の発表を受け、ポンドは一時対ドルで1.4%上がり、1ポンドが1.08ドルとなった。しかし、その後また下落傾向にある。

イギリスのクワジ・クワーテング財務相は23日、大幅な政府借り入れを前提とした450億ポンド規模の減税政策「ミニ・バジェット(小さな予算)」を発表。所得税や住宅購入の際の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止する。これにより、経済成長に弾みをつけたいとしている。

一方で財務省は、一連の政策により公的債務が720億ポンド増えることになるとしている。

市場ではすでにこの政策への危機感が高まっており、英ポンドが大幅に下落したほか、英国債や株式にも影響が出ている。27日は国際通貨(IMF)が、異例の警告を発した。

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減税に伴い、政府は国債を発行して予算をまかなう。これを国際市場の年金基金や大手銀行などが買い、政府の提示する金利に応じた利益を受け取る。

英政府の財政計画に不安があるため、国債を保有する投資家らはより高い金利を求めているが、イングランド銀は自らが国債を買うことで、借り入れコストを下げたい考えだ。

介入を受け、政府の長期的な借り入れコストは下がったものの、依然として高水準にある。

イングランド銀は、国債購入の「時間は限られている」が、投資家の懸念を和らげるのに「必要な規模」で行うと述べている。

同行は先に、英ポンドを守り、インフレ上昇を抑えるためなら利上げも「辞さない」との見解を示していた。来春までに金利を現在の2.25%から5.8%まで引き上げる可能性もあるとの憶測も出ていた。

キャピタル・エコノミクスのイギリス担当チーフ・エコノミストのポール・デイルズ氏は、イングランド銀は金融危機の初期段階を避けるために介入せざるを得なかったと指摘。その上で、経済見通しへの懸念が広がっていると警告した。

内外から政策再考を求める声

「ミニ・バジェット」をめぐってはIMFが27日、生活費危機を加速させる可能性があると批判。「現時点では大規模で的を絞らない財政措置は推奨しない」、「イギリスの政策は不平等を加速させる可能性がある」と指摘した。

その上で、11月末に発表される秋季予算では、より的を絞った支援を提供するとともに、高所得者に有利な税制措置について再考を求めた。

イギリスの最大野党・労働党も、閉会中の議会を再開させてこの問題を議論すべきだと述べている。英議会は現在、両党の党会議期間中のため10月11日まで閉会している。

一部の保守党議員からは、クワーテング氏が市場への警告を怠ったことや、政府が予算責任局(OBR)の経済見通しを発表しなかったことが市場の混乱につながったと批判する声も上がっている。BBCは、政府が減税政策発表前にOBRから見通しの草案を受け取りながら、それを発表しなかったとの情報を取材で得ている。

財務省は推進を主張

こうした中、英財務省のアンドリュー・グリフィス財政担当官は、政府の財政案はイギリス経済にとって「正しい計画」だと述べ、「ミニ・バジェット」を取りやめるつもりはないとの見解を示した。

グリフィス氏は、450億ポンドの減税政策が「経済の根本的な問題」を解決すると説明。イギリスの「バランスシートはとても強力」で、主要国の中では公的債務の対GDP比が最低水準にあると安定性を強調した。

また「すべての主要経済国がまったく同じ問題に対処している」と主張。「プーチンのウクライナ戦争による影響は、エネルギーコストやその供給サイドへの影響などを通じて連鎖している」と述べた。

一方で、クリス・フィリップ財務次官は英民放ITVに出演し、政府に節約を促し、「効率化できるところを探す」よう求めていると述べた。

この効率化は、2021年に発表した3カ年の支出計画の「目標に沿うもの」で、節約によって「成長達成のための支出が可能になる」という。

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<分析>ファイサル・イスラム経済編集長

Analysis box by Faisal Islam, economics editor

イングランド銀の国債購入は、借り入れ市場を落ち着かせようとする同行の、非常に大きな力の見せ所だ。しかし、いくつかの疑問も出てくる。

イングランド銀は、これは危機であり、同行が緊急に対応したことを強調している。この危機の明確な原因は、クワーテング財務相が発表した「ミニ・バジェット」だ。これが市場の信頼喪失と国債の借入金利の急騰につながり、「金融の安定に対する重大なリスク」になりかねないとしている。

そのため、イングランド銀は現時点で一時的に、国債を無制限に買い取ることにした。市場でイギリス政府が負担していた実効金利は、20年来の高水準に急騰していたが、現在では下がっている。

しかしこの決定は、政策金利を決める金融政策委員会によるものではなかった。金融政策委員会は、後から同行の金融専門家の決定を知らされたのだという。実は、委員会は全く逆の政策、つまり国債の売却を実施する予定だった。このプロセスは来週開始される予定だったが、延期された。

大規模な介入だが、政策決定の明確性や説明責任の線引きについて市場を混乱させる可能性もある。英ポンドは再び急落し、史上最安値に近づいている。イングランド銀の介入は政府の問題を解決するものではないが、時間を稼ぐことはできるかもしれない。

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