クワーテング英財務相が解任 減税策で経済混乱、史上2番目に短い在任38日

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イギリスのリズ・トラス首相は14日午前、クワジ・クワーテング財務相を解任した。後任には、ジェレミー・ハント元外相が決まった。トラス首相が党首選から公約した減税策などを含む「ミニ・バジェット」を財務相が発表して以来、ポンドが急落するなどイギリス経済は大混乱に陥り、与党・保守党内でも減税策の撤回とクワーテング氏の更迭を求める声が相次いでいた。
トラス首相は同日午後、首相官邸で記者会見し、現在の諸問題を前に経済安定を確保することが重要だと主張。そのために自分が断固として行動したのは正しかったとして、「難しいことだったが、私たちは嵐を乗り越える」と述べた。また、クワーテング財務相が9月23日に発表した減税策「ミニ・バジェット」の一部が市場の予想よりも「大きく速かった」と認めた。

その上でトラス首相は、保守党党首選から公約していた法人税引き上げの中止を撤回すると発表した。これによって国の税収は180億ポンド(約3兆円)増えると、首相は説明した。
首相はクワーテング氏を「素晴らしい友人」と呼び、財務相として失うことは「非常に残念」だと話した。新財務相のハント氏については、複数の閣僚ポストを経験し、広く尊敬されている議員で、「私とビジョンを共有している」と述べた。
記者質問に移り、この日の混乱を経てなぜ留任するのか尋ねられると、トラス氏は自分が党首選で公約してきた「高い成長率と、これまでより豊かなイギリス」を実現するとして、「すでにこの冬、国民が巨額の光熱費に直面しないよう、エネルギー価格の上限保証を実現した」と述べた。
財務相を更迭しながらなぜ自分は留任するのかと別の記者に質問されると、首相は経済の安定確保が自分の任務だと述べるにとどまった。また、BBCのクリス・メイソン政治編集長に、首相として政権運営するための信任がまだあると思うかと問われると、「私は今日、経済安定を確実にするために今日の対策をとった」と答えた。
さらに、ITVのロバート・ペストン記者に、「あなたは保守党をぼろぼろにした。党に謝るつもりはあるか」と聞かれると、トラス氏は保守党党首選で公約したことを実現すると述べて、会見を打ち切った。
トラス氏は記者団からの質問には4問答えたのみだった。8分で終わった記者会見についてBBCのメイソン政治編集長は、「記者会見があまりに短かかったことは、集まった記者たちを驚かせた。首相はたくさんの質問を受けようとしなかった」、「保守党議員の間での首相への信用、そして金融市場の信用という意味でも、首相は安心させる必要があった」と指摘した。
保守党議員の中には、この記者会見を「大惨事」と呼ぶ人もいる。
今年4人目の財務相
トラス氏の会見に先立ち、首相官邸は、新しい財務相にハント元外相が就任すると発表していた。

元保健相でもあるハント氏は今年夏の保守党党首選に出馬したが、党員投票で十分な支持が得られず、早々に退いた。その後は、リシ・スーナク前財務相(当時)を支持していた。
ハント氏は、スーナク氏、ナディム・ザハウィ氏、さらにクワーテング氏に次いで、今年4人目の英財務相となる。
クワーテング氏はワシントンで開かれていた国際通貨基金(IMF)の年次総会出席のため訪米していたが、予定を切り上げて14日朝に急きょ帰国し、首相官邸を訪れていた。
トラス政権は9月6日に発足したばかり。クワーテング氏は在任38日で、イギリスの財務相としては史上2番目に短い。最も短かったのは、1970年に就任30日後に心臓発作で亡くなったイアン・マクラウド財務相。
財務相退任の一報が伝わってから間もなく、クワーテング氏はトラス首相にあてた手紙を公表。その中で、「財務相として退くようあなたに頼まれたので、私はそれを受け入れました」と書き、解任されたことを明らかにした。

その上でクワーテング氏は、イギリス経済を成長させるための首相のビジョンは「正しい」もので、自分は引き続きそれを支持すると書いた。
「この数週間繰り返してきたように、従来の決まったやり方に従うのは、まったくありえないことだった」とクワーテング氏は書き、「この国はもうあまりに長いこと、低い成長率と高い税率に足を引っ張られてきた。この国が成功するためには、それは変わらなくてはならない」と強調した。

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公約の目玉撤回
トラス首相は保守党の党首選で一貫して、大幅な減税を主張し続け、一般党員の支持を得て勝利。トラス氏の盟友で新政権の財務相となったクワーテング氏は9月23日に、首相の公約通り、大規模な借り入れを伴う過去50年で最大の減税政策「ミニ・バジェット」を打ち出した。所得税や住宅購入の際の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止し、経済成長に弾みをつけたいとした。
しかし、これを機にポンドは急落し、IMFはこの減税政策が、生活費危機を加速させる可能性があると異例の批判を展開。英イングランド銀行(中央銀行)は、市場安定化のために国債を購入すると発表したが、その買い支えは14日に終わることになっている。
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保守党内には、トラス首相の辞任を求める声も出ている。トラス氏はすでに「ミニ・バジェット」の目玉の一つだった、45%の所得税率を撤廃する案を撤回した。
トラス氏は、ジョンソン政権のリシ・スーナク財務相が打ち出した法人税の増税計画も廃止すると、スーナク氏と争った党首選から公約していたが、財務相交代後の記者会見でトラス氏は、「ミニ・バジェット」に盛り込んだこれも撤回した。













